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幼馴染は半陰陽  作者: 海老野素揚
14/16

第14話 別れ

卒業式を迎えた。


合同スピーチをし、蛍の光を歌い、卒業証書を受け取る。

定番の流れ。

校門前で僕は神崎と語っていた。

「シノ、元気でな」

「うん。神崎もな」

神崎は僕と違う高校に行くため、もう会うことは

ないだろうと思っていた。

神崎と別れ、しばらく経ってから

「早く新しい嫁見つけろよ」

と神崎が大声で叫んだ。

「おまえなぁ」

僕は苦笑いした。

最後の最後で嫁とは神崎らしいなと思った。


「嫁、か・・・」

僕は一人で家に向かっていた。

複雑な気持ちだった。

本当なら、隣には真がいるはずだった。

真と中学時代の思い出を語っているはずだった。

なのに・・・


「ただいま」

家に着くと母さんがカメラを用意して待っていた。

「卒業の記念に写真撮りましょう」

「いいよ。そんなの」

「いいからいいから。卒業証書持って。真君も呼んで一緒に撮りましょうよ」

「真は・・・呼ばなくていいよ」

そうして、家の前で写真を撮った。

二人だけの記念写真。


一段落ついた後、母さんは僕に聞いてきた。

「恭介、真君と喧嘩でもしたの?」

「うん。まぁ、ね・・・」

僕はこれ以上何も話さなかった。

いや、話せなかった。

あの時の事は誰かに話せるようなものではなかった。




3日後。


真が引っ越す日を迎えた。

引っ越し業者の人が忙しく荷物を運び出していた。

僕はその様子を自分の部屋から見ていた。

部屋には、荷物の入った大きな紙袋が2つ置かれていた。


真の家族がお別れの挨拶に来た。

「元気でね」

「ああ」

真と短い会話を交わした。

「ちょっと待ってて。渡したいものがあるんだ」

僕はそう言うと僕の部屋にあった2つの紙袋を持ってきた。

「これあげるよ」

僕は真に紙袋2つを差し出した。

「プレゼント?」

「うん」

真は紙袋を覗き込んだ。

真は驚いた表情で僕を見た。

「これって・・・」

「僕にはもう必要のないものだから。それに、

真は男子の遊び道具を何も持ってないでしょ?

これがあれば友達を作りやすくなるかなって」

僕が真に渡したもの。

それはゲーム機だった。

僕の部屋にあったゲーム機とゲームソフト全部を真にあげたのだ。

「・・・・」

真はじっと袋を見ていた。

「真?」

「え?あぁ、ありがとう。大事に使わせてもらうよ」

そして、車に乗ってこの地を後にする真を見送った。

車が見えなくなった後、父さんが話しかけてきた。

「恭介、本当にいいのか?」

「いいんだよ。これで・・・」


自分の部屋に戻ると僕はテレビの前に座った。

今はもう空いてしまった棚を見ながら僕はため息をついた。

僕が真にゲーム機一式を上げた理由、

それは僕がこのゲーム機で遊べなくなってしまったからだった。

ゲームで遊んでいると隣に真の幻が見えてしまうのだ。

まだ髪を伸ばし、女の子の服を着ていた真。

ゲームの動きに合わせてついつい体が動いていた真。

難しいステージをクリアすると一緒に喜んでくれた真。

対戦ゲームで勝った時は喜び、負けたら悔しがって

もう1回とお願いをする真。

気になって、とてもじゃないけど遊んでなんかいられなかった。




夕方。


夕刊を取りに表に出た。

僕は真の家を見ていた。

雨戸は閉まり、2階の部屋のカーテンは全て外され、

人の気配はなく静まり返っていた。

「これで、よかったのかもしれない」

そんな事を考えていた。

郵便ポストを開け夕刊を取り出した。

すると、郵便ポストに封筒が入っているのを見つけた。

封筒はやや重みがあり底のほうが膨らんでいた。

「何だろう?」

封筒には「恭介君へ」と書かれていた。

「これ、真の字だ」

自分の部屋に戻り封筒を開けた。

中には手紙が入っていた。

封筒を逆さにすると中に入っていたものが出てきた。

「これは!!!」

封筒の底にあったもの。

それはドーナツ状に丸めた紙にセロテープでビー玉を止めたもの。

真の結婚指輪だった。

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