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幼馴染は半陰陽  作者: 海老野素揚
10/16

第10話 真が消えた夏

夏休み。


僕にとっての中学生最後の夏休みは

一生忘れる事が出来ないものになった。

なぜなら・・・




「恭介君に謝らないといけないことがあるの」

夏休みまであと1週間となった日、

真から突然話を切り出された。

「謝らないといけないこと?」

「私、中学卒業まで女の子でいるって言ったでしょ?

それが出来なくなったの。

夏休み中に手術して男の子になることになったの」

「えっ!?何で!?」

真が男になる事は覚悟していた。

それがこんなに早まるとは思ってもいなかった。

「私が男の子として高校に行けるようになるには

高校受験の前に男の子になっている必要があるんだって」

「それなら冬休みからでも間に合うんじゃ・・・」

「2週間位病院に入院して手術するから

夏休み中にやらないと受験に間に合わなくなるんだって。

それに、これ以上遅らせると男の子としての機能に

問題が残る可能性もあるって」

「そうなんだ・・・

そう言えば、学校の話し合いってどうなったの?」

真は無言だった。

「真?」

「恭介君。落ち着いて聞いてほしいの」

真は何時になく真剣な表情だった。

「私、転校することになったの」


「て、転校!?嘘!?嘘だよね!?」

僕は泣きそうになっていた。

真が男になるだけでなく転校して僕の前からいなくなる。

そんなの何かの間違いだ。

僕は信じたくなかった。

「手術後に女子制服を着て学校に行くことを認めるわけには

いかないんだって」

「そんな・・・」

「じゃあ、男子制服を着て学校に行く。となると

今まで女子だった人が男子になったことで

他の生徒にどんな影響が出るか解らない。

それで出した結論が転校してもらう。

というものだったの」

「そんなの、真が迷惑な存在だからいなくなってほしい

って言われたのと同じじゃないか。酷いよ」

「そうかもしれない。でも、先生たちの言う事も解る。

女の子が男の子になるなんて普通ない事だし

私の病気の事を理解してくれる人がどれだけいるか解らない。

私の事を気持ち悪がる人がいるかもしれない。

恭介君に嫌な思いをさせる事になるかもしれない。

これ以上、恭介君に迷惑をかけたくないの」

「そっか・・・」

真は僕の事も考えて転校を決めたようだった。

そう思うと反対することは出来なかった。

「真ともう会えなくなると思うと寂しいな」

「えっ?そんなことはないよ。男の子になった後も会えるよ」

「えっ?」

「だって、転校はするけど引っ越しはしないよ」

「えっ!?普通、転校って引っ越すからするものじゃ・・・」

「家から遠くない別の中学校に転校するの。

でも、今の学校よりは遠いから朝起きるのが早くなっちゃうけどね」




真は夏休みに入るとすぐに入院した。

僕はお見舞いに行こうとしたけれど

お見舞いは家族以外は断っていると言われ

行くことが出来なかった。


真が入院して1週間位経った頃、真の家に1台のトラックが止まった。

トラックには家具屋のロゴが付いていた。

4人の男の人がトラックから降りると荷台の扉を開け

中から家具を出し始めた。

机と椅子とベッドと本棚。

それらを次々と真の家の中に運び入れていった。

しばらくするとさっきの人たちが家具を外に運び出し始めた。

僕はそれを見て、あっ、と思った。

運び出されていたのは真の部屋の家具だった。

机、椅子、ベッド、本棚、ドレッサー。

それらの家具をトラックに積むとトラックは行ってしまった。

女の子の真が僕の前から消えていく。

真が男に変わっていく。

そう思わずにはいられなかった。

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