相談
魔法塔の中にいると、時間の感覚がかなり悪くなる。
青ザルが食事を運んできた。
「え。もうそんな時間?」
オルディーが窓の外を見る。
真っ暗だった。
「もう、夜なんだね」
青ザルが言う。
ヴァンエールとフィルが食事の準備を始める。
青ザルは黄色のチョッキのどこに入れていたのか、封筒を取り出す。
「オルディーに伝言なんだね」
封筒には『伝言』と、デカデカと書いてあった。うっかり弔辞でも入ってそうな封筒を開くと、蛇腹状の紙が勝手にぱらぱらとめくれる。
げっ、と思わず声の出るオルディーの嫌そうな顔に、ヴァンエールとフィルが怪訝な顔をする。
「…。白ザルいる?」
「何か」
白ザルが静かに紅茶を運んでくる。
「伝書鳩に丁度いいウサ・パウニって何だと思う?」
ウサ・パウニとは、情報を運ぶ魔生のことである。運び屋とも呼ばれる。稀に荷物も運ぶが、基本的には、情報や伝言を運ぶので小柄で鳥の姿をしていることが多い。
白ザルは少し考えて。
「スピードならハチドリ。一般的にはハトやカラス、タカといった所でしょうか」
「個人的には、ト-テンコ-とかいいんじゃない?」
ヴァンエールが口を挟む。
「僕の実家では、コノハズクを使ってましたね」
「へぇ。色々いるもんだね。そう言うのってドコで手に入るもんなの?」
「紅於なら知ってるんじゃないの?」
突然の声に、皆が一斉に注目する。
急に注目を浴びた声の主は。
「え。何。何事?」
水色の髪に、鮮やかな緋色と淡いピンクの色違えの双眸の青年、シオン・ヘシュウアンが目を見開いている。
「何でここにいるの?」
オルディーも驚いて言う。
「いや、ここの定期整備。今から晩メシなら、オレも混ぜて」
「あ。そうだった。食べよっか」
シオンも混じって食事をしながら、オルディーの実家の伝書鳩について相談する。色々な意見が出た結果。
「ハチドリはそのまま置いとくとして。実家でも使えそうなト-テンコ-とカイエンにしようかな」
「かーなり気難しいから頑張って」
このメンバーの中で一番ウサ・パウニの情報を持っていたシオンが気楽に言う。
「そこなんだよね。気に入られなかったら、コノハズクにでもしようかなぁ」
「気性が荒いですよ、アレ」
「ハチドリも激しいけどね」
オルディーが苦笑する。
「まぁ、紅於に直接聞いた方が速いよ」
「シオンは物知りですね」
感心したようにフィルが言う。
「イリスの方が物知りだから。そう言えば、オルディーはウサ・パウニの相談でここに来たわけ?」
「いえ、エバンシアと瘴気について」
ヴァンエールが補足説明すると、シオンが目を丸くした。
「え。それって時間が経ったら治るもんじゃないの?まぁ、早急にどうにかってんなら話は別だろうけど」
「え。そんなもんなの?」
ヴァンエールが驚く。
「そうかも知れないけど、エバンシアって何か特殊だから」
「…まぁ、変わってるわな」
シオンも何か思い当たる節があるらしい。
「…一読したけど、瘴気の勉強になっただけだった気がする」
「そうだね。ただ、こんなに身近なものなのに、知らないコトが結構あってびっくりした」
「確かに。瘴気って遅延性だと思ってたら、濃さとか色々なコトで、あっさり変わっちゃうものなんだね。知らなかったよ」
「本当。まさか、瘴気で魔獣が死ぬこともあるとは思わなかった」
「そうそう」
ヴァンエールとフィルが喋っている横でオルディーは小さく首を傾げた。
「エバンシアって身体弱いのかなぁ」
ぼそりと呟く。
「ちょっと変わってはいるみたいだね」
シオンも呟く。
「へ?」
「オルディーも知ってるだろうけど、エバンシアってブリュメールが苦手なんだよ」
「そうみたいだね」
「体質的に合わないんだってさ」
「体質…?」
「どういう意味かはよく知らないけどね」
「人魔ってそう言うもんなの?」
「うーん。親の魔獣の性質はある程度受け継いじゃうからね。オレは特に不都合を感じたコトないけど。まぁ、魔獣も色々だから」
「人魔も色々?」
「そう言うこと」




