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特区 若き魔法遣い改め  作者: 夏目
4/10

疑問

オルディーは、レティクラタを辞してランバーに戻った。

すっかり夜になっている。

オルディーは、弟子のクラムウェルと住んでいる。クラムウェルは、十代中頃から後半ぐらいの少年である。

「…何かあったんですか?」

「へ?」

「難しい顔してます」

オルディーは苦笑する。

「エバンシアは元気そうだったんだけど。ただの里帰りじゃないみたいでね」

「気になるんですか」

「なる。首突っ込んだらイリスに怒られるかも知れないけど」

「それはないんじゃ…」

クラムウェルが、僅かに首を傾げる。

「その時は釘さすでしょうし。オルディーが動くのはおおよそ、分かりきったことですし」

「え。そうなの?」

オルディーが心外そうな顔をする。

「知りたがりじゃないですか」

「好奇心旺盛とか、言いようがあるでしょ」

クラムウェルは肩をすくめる。

「とりあえず、お茶の用意しますから、オルディーは頭の中でも整理しといて下さい」

オルディーは憮然としながらも、そうすることにする。


ダンフォルディアがエバンシアを迎えに来た。

やたら濃いしょうきが流れ込んで来た。

エバンシアが倒れた。これは、エバンシアだから、なのか、誰であってもそうなのか。

保存食が痛むほどのしょうき。

ダンフォルディアが笑った。…これは関係ないか。

情報が少な過ぎてよく分からない、というのが感想だ。とりあえず、今回の事はしょうきが関係しているようだが。

「しょうき、ねぇ」

イリスに再び聞きに行きたい所だが、あいにく暫く来るな、と言われてしまった手前、もう少し自分で調べてみる必要がありそうだった。

「お茶の用意が出来ました」

クラムウェルが紅茶を運んでくる。

「ありがとう。いつの間にか、僕より上手に淹れるようになったよね」

「修行の賜物ですかね」

「軽口も叩くようになったしね」

「……エバンシアの件ですが」

クラムウェルが矛先を変える。

「元気そうなのに、隷が分からない、というのは…」

「ああ、それは簡単。イリスの家だから」

隷は遠く離れていてもある程度、主の体調やら精神状態やらが分かる。

リンのように、隷の方が強い場合は尚更である。キスリムは主と隷を繋いでいる。

但し。その絆をぶった切るような場所もある。

そう言う場所を『特区』という。

「知ってるだろうけど、特区だからね。あそこ」

「あぁ。なるほど。あの結界はキスリムでも通さない、ということですか」

特区は結界に覆われた場所を指す。

その結界は並みの結界ではない。一体、誰が何の目的で張ったのか、謎が謎呼ぶ場所である。

ちなみに、世界に知られている特区は3つ。

魔法士の聖地『魔法塔』。

魔法士養成所『ベヘシュト・パウニ』、『ヴァントーズ・パウニ』。

それ以外にもあるとは言われているが、確認されてはいない。

当然のことながら、イリスの家は、知られざる特区のうちの1つだった。

「だから、凜慄公はエバンシアが里帰りするのが嫌いなんだよ」

「生死さえも分からないからですね」

「そ。隷にとっては死活問題だからね。発狂するかしないか、生きるか死ぬか」

「魔獣にとってはそんな大問題なんですね」

クラムウェルが感心したように言う。

「らしいよ。僕、人外だし、クラムウェルは魔生(ませい)だしね」

「ですね。魔獣か人魔に分類されると思ってたんですけど。魔法で作られた生物とは」

クラムウェルは大げさに首を振った。

「正直、信じられなかったですけど、今は、魔生だわ、と実感しますよ」

「え。そうなの?どこらへんが?」

オルディーは興味深々。

「それが、魔法遣いたる所以だと思うよ?オルディー」

「自覚はあるよ。イリスにも指摘されたし。で?」

「隷みたいにしょうき吐かないし、主に一生を捧げる気にならないし」

「そこは魔獣によって違うみたいだよ?凜慄公も自分は隷にならない、って思ってたみたいだし」

「そうなんですか」

「ちなみに人魔じゃない実感は?」

「魔力のケタが違いますし。どちらかと言うとおれは魔獣に近い体質な気がします」

「…確かに」

オルディーは、納得して紅茶を飲む。

「明日、魔法塔に行こうと思う。イリスんちは、暫く行けないし」

「そうですか。おれは、フロレアルにでも買い出しに行って来ます」

「……クラムウェルも少しは興味あるんだね」

「他ならぬエバンシアのことですから…と言うことにしときます」

「あれ。本当に用事があるの?」

「ありますよ。ご実家から伝書鳩下さい、って言われてますし」

「あぁ、そうだった」

「何か適当に持って行きますよ」

「宜しく」

クラムウェルは怪訝な顔をした。

「ハチドリしかいませんけど…いいんですね?」

オルディーが、げっとおもわず口にしたものの。

「…とりあえずいいよ。魔法塔で相談してみる」

「お願いします」

クラムウェルが苦笑する。


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