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◇一時限目 遠足


この小説は完全な自己満足(オ○ニー)です。


更新は不定期な上、感想等も特に募集していません。


以上の項目を踏まえてお読みくださいませませ。




彼とその教え子である1年C組のよい子達は楽しい遠足の真っ最中である。


途中で道を間違える事もなく、誰一人迷子にもならず、ほんの少し足を伸ばして遠足に来た筈なのだが、現状あまり楽しめていないようだ。


どうやら彼の教え子達は、木の匂いや小川のせせらぎ、小鳥たちのさえずりがあまり好きでないらしい。


今、彼の周りからするのは獣の匂いと剣戟の音、そしてコボルド(犬小鬼)の断末魔である。


「よいしょっと、これで…最後だな?」


愛用のロンパイア(片刃で1m程の刀身にほぼ同じ長さの柄が付いている)を水平に薙ぎ、最後の2匹の腹部を裂く。唸りとも叫びともつかない声を上げコボルドが崩れ落ちた。付着した血糊を拭いながら周囲を見渡し確認するが、背後に頂上を背負い、丘のふもとまで500m程といった斜面には二十体程の動かないコボルドが倒れているだけで、他に動いているのは彼等だけのようだった。


「九重先生!お怪我はありませんか?」


「クノウセンセー大丈夫?」


学級委員長のヒルダ(♀)とハルト(♂)が駆け寄ってくるのが見えた。


(…心配してくれるのはありがたいが…)


彼=九重クノウ(♂)は軽く苦笑いを浮かべて教え子達に振り向いた。


「こっちは大丈夫だ!それよりそっちは片付いたかな?」


「はい、山犬は全部追っ払いました。言われた通りに班(4人1組)で行動しましたので、怪我人は1人もいません」


「そうか怪我が無くて良かったよ、それでは集合だ。点呼を取った後で全員で素材を回収、その後ちょっと遅いが昼食にしようかな?」


「「「「はーい!」」」」


「よし!みんないい返事だぞ!」










今、九重クノウとよい子達がいるのはこの大陸のど真ん中に位置する「大森林」と呼ばれる森のほぼ中央部。


森の外周部のそれぞれを4つの大国と接しているが、そのどの国もがこの森を領土にしていない。


…いや、「領土にしない」というのが正確な表現だろうか?


何せ森には様々な害獣・妖霊・邪鬼に魔族、果ては龍種までいるのだから「ちみっと」アタマを使えば「さわらぬ神」にナントやらで、

領土拡大の野心に燃える皇帝陛下でも、


異種族根絶の使命感に燃える教主猊下でも、


自由と平等を旗印に人民の解放に燃える議長閣下でも、


獣人族至上を掲げネコ耳に萌える王妃殿下であっても、手は出せない。


せいぜいが外周部近くの村人達による薪拾いや野草摘みで、立木の伐採すら行われていなかった。


だが、70年程前になるだろうか?1組の冒険者パーティーが、この森の最奥部で大きな湖を発見したのだ。


どの国の領土にも属していなかった「大森林」にある湖と、その湖畔に広がる肥沃な草原を目にした彼らは、ここに冒険者の街を作ってしまった。その街にある大陸で唯一となる冒険者の為の学園が「市立冒険者学園」である。


学園に入って半年程経つ1年生のレクリエーションとして、街の北側にある水車小屋を目指して遠足に来ていた筈だったのだが…


(何をどう間違ったらコボルドと遭遇する?)


クノウの苦悩は当然であった。……まあ作者のダジャレはこの程度だ。


遠足の目的地は湖の北西部にのびる川への流入口にある水車小屋、そこに行く途中で冒険者のギルドシティが一望できる丘の上でお弁当を食べる事になっていた。(遠足のしおりより)










1時間程前、丘に登りギルドシティをみんなで眺めながら、「ボクの家が見える~」「あそこが学園だね~」などとキャッキャッしていたらクノウは上着の裾をクイクイと引かれた。


「ん…どうしたセイナ?」


1年C組でも一番おとなしいセイナ(♂)がモジモジしながらそこにいた。


「…先生…あの…えと……」


クノウは一瞬で察した。まだ2年目ではあるが伊達に教師をやっている訳ではない。


「ん。オシッコか?…ここでは恥ずかしいだろうからあそこの木の影でしてきなさい」


「…ん」


セイナは恥ずかしそうに小さく頷くと、丘の中腹にある木立に駆けていった。


クノウが温かい目でセイナを見送っていると、再び上着の裾をクイクイクイクイと引かれた。


「…九重先生あのですね…」


「ボクたちも…」


「その………セイナと同じで…」


「…あー、わかったわかった。それじゃあ男の子は今セイナが向かっている左側の木立に、女の子は右側の背の高い草むらで用を足しておいで。先生はここに立ってみんなを見ているから、安心して行って来なさい」


クノウは困ったような笑みを浮かべ、学級委員の2人を初めモジモジしているクラス全員にそう告げた。


するとクラス1の耳年増であるカオルコ(♀)が、


「クノウ先生やーらしい…ワタシ達を『立って』見てるなんて…オカズにするのね?さすがロリコンの童貞!」

と、とんでもない事をのたまった。


「な、ななな、何を言っているんだ!」

顔を赤らめ思わず口ごもり、


「ど、童貞ちゃうわ!それに、先生そんな特殊な性癖は無いっちゅうねん!」


…何故だか関西弁になり、TPOの全てにおいて間違ったツッコミを入れるクノウだった。


「あははっ、クノウ先生ったら真っ赤よ、かーわいいー」


「『せいへき』ってなにー?」


「『ロリコン』ってなにー?」


「『童貞』はどんなスキルなのー?」


よい子達が口々に無邪気?な質問を投げかけくるなか、ヒルダがカオルコに詰め寄る。(ちなみに作者的に『童貞』は使役のパッシブスキルです。なぜならオ○ペットを使うから…スンマセン)


「カオルコ!貴女また九重先生を馬鹿にしているのね!」


「別に馬鹿にしてないわよ、意味が判らないオコサマは黙ってなさいヒルダ?」


「い、意味ぐらいわかるわよ!オ、オカズってお弁当の事でしょう?」


「…あははははっ、おっかしい……そうそうお弁当の事よ、プフッ」


「キーッなによ、その笑いかたは!今度は私を馬鹿にしているのね!」


自分の発言に軽い自己嫌悪に陥っていたクノウだが、カオルコとヒルダの言い合いをなだめる。


「2人ともそこまでだ。ヒルダ、先生のために注意してくれてありがとうな。カオルコ、もう大人顔負けの知識を持っているんで先生驚いちゃったよ、でも人前ではあんまり言わないようにしてくれないか?大人のカオルコにはわかるだろう?」

クノウがそう諭すように言う。どこか困っているような、それでいて相手に安心感を与えてしまう笑顔。


小さいけれど立派なレディ達は自分より30近くも年上の教師の微笑みに、我知らず「男性」を感じとってしまう。


「ぁふぁ…九重先生のためですもの…(ポッ)」

「…先生は姉さんの言ってた通り…無自覚ジゴ○さんだわ(ポポッ)」


そう言ってクラスメートの方へ駆けだしていった。


(やれやれ…今時の7才ってのは…まあ女の子の方が成長が早いっていうしなぁ…)


そんな事を考えながらクノウは周囲へと注意を飛ばした。


森の外周部までは2kmほどあり、湖まではその半分ぐらいの場所に位置するこの丘は、頂上付近に高さ2m程度の木が数本生えている。

それ以外は疎らに草ムラがあるだけで、危険な生物が住むスポットではないのだが、もとが冒険者であるクノウは「油断」が「死」に直結することを誰より自覚している。


さらに今日は自分の大事な教え子達を引率しているのだ。あの少しばかり変わり者だが愛らしいよい子達にケガなどさせる訳にはいかない。否応なしにクノウは警戒を強めていた。


「キャーッ!」


「イーヤーッ!」


「センセーッ!」


風に僅かな獣の匂いを感じ、クノウが注意を発しようとした瞬間、よい子達が叫び声とともに木陰や草むらから次々飛び出してきた。


「全員集合しろっ!オシッコが途中でもかまわない!お漏らしでズボンが濡れてもいいから先生の後ろに集まれ!」


凄くカッコよく、カッコワルい事を大声で叫びながらクノウはよい子達の方へ走り出す。


「…センセー…」


立木の後ろから弱々しい声が聞こえる。「まさかっ!?」

クノウは焦って駆けた。


「…紙…ちょうだい…」


クノウは頭からコケた。


「ほら、紙だセイナ…ハンカチとティッシュはいつもポケットに入れておきなさいと言ってるだろう?………っ、セイナ!早くオシリ拭いて下がるんだ!」


クノウの視線の先に、丘をワラワラと登ってくるコボルドの群れと数匹の山犬が見えた。


(はぐれの群れか?…否…山犬を連れているしコボルドの狩猟部隊か…)


コボルドは臆病な習性で、森でのヒエラルキーもかなり下に位置している。


通常なら集落の周りで木の実や小動物を捕って食糧にしているのだが、繁殖の季節を迎えると集落のオス全てが飼っている山犬を連れて狩りを行う。


だが、腕力に劣る彼らは余程の事がない限り人族を獲物にしようとはしない。


例え相手が子供であっても1人でなければ襲わないのだが、今回は何故だかやたら興奮しているようだ。


「全員いるか!?班毎に集まって人数を確認!先生はここでコボルドを迎え討つから以後は班行動で山犬に対応……セイナ、パンツを上げなさい……みんなわかったかな?」


「はい!先生、全員の集合を確認しました」


「よし、それでは先生の後ろから頂上までの間で班毎に展開しなさい。山犬は5~6匹だが充分に注意してくれ!コボルドは先生がひきつける……セイナ、ズボンも上げなさい……」


「「「「はーい!」」」」


よい子達が移動したのを確認したクノウはコボルドに向き直る。


半円形に展開したコボルド達は木の盾と粗末な短剣や棍棒を構えているが、真ん中にいるコボルドだけは他の個体よりアタマひとつ大きい。装備もロングソードを持っているのでおそらくコボルドチーフと思われた。


クノウは背中に手を回し、ロンパイアを留めている金具を外し引き抜き構える。


左右のコボルドが同時に襲いかかってくるのを一歩下がり、足元を薙払った。


「悪いな…オマエ達に恨みはないが…」


そういってクノウはコボルドチーフを見定め、一気に距離を詰めていく。


まさか包囲網の中に獲物自身が飛び込んでくるとは思っていないコボルドチーフは慌てて手下をけしかけるが、クノウは取り囲まれるのを気にもせずコボルドチーフの前にたどり着いた。


ロンパイアを一回転させ突っ込んでこようとするコボルド達を牽制し、コボルドチーフに上段から斬りかかるが、コボルドチーフはロングソードをかざし頭上で受け止めようとする。


「カキッ」と澄んだ音が響いた瞬間、コボルドチーフは頭から腹部をまっすぐ裂かれ、前のめりに崩れ落ちた。


周りのコボルド達は何が起こったかわからず、一瞬動きが止まってしまう。


その隙をクノウが見逃す筈もなく、自分に近い位置のコボルドから斬り伏せていく。


下段から上段へ切り上げ一匹、上段から下段へ切り下げ一匹、右から左へ中段を薙ぐように払いまた一匹、コボルド達は自分たちが斬られたことも判らないまま次々と倒れていった。


格下の相手ではあったがクノウが手を抜かなかったのは、自分の教え子を守るためだけではない。


コボルド等の低級邪鬼の繁殖力は凄まじく、その季節を迎えた低級邪鬼討伐は高ランク冒険者のクノウにとって義務でもあったからである。


ともあれ、全てのコボルドを倒したクノウは、冒険者としてでなく教師の顔に戻り、見事に山犬を撃退してみせたよい子達と、遅めの(早起きして自分で作った)お弁当を食べるのだった。




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