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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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追放された悪役令嬢は、転生知識で王太子を地獄に落とす

作者: まつもと
掲載日:2026/03/14

私は死んだはずだった。

28歳、IT企業のプロジェクトマネージャー。残業代は出ず、手元に残ったのは積み上がった未読メールと、過労で力尽きた冷たい体だけ。


次に目を開けたとき、私は豪奢な天蓋付きのベッドにいた。

鏡の中にいたのは、夜の闇を溶かしたような黒髪と、全てを見透かすような鋭い瞳を持つ絶世の美女。


「……イザベラ・フォン・エルドリア」


記憶が濁流のように流れ込む。ここは乙女ゲーム『王太子の恋人たち』の世界。私は、ヒロインを虐めた末に破滅する悪役令嬢に転生したのだ。


「また、使い捨ての人生? ……ふざけないで」


私は無意識に手を握りしめた。その時、手のひらから透明な衝撃波が走り、部屋の豪華な花瓶が粉々に砕け散った。


「これは……無属性魔法?」


火でも水でもない。対象の持つ「魔力的な性質」を強制的にゼロにする、相殺と中和の力。ゲームには存在しなかった隠し設定だ。試しに指先に力を込めると、内臓を直接焼かれるような激痛が走った。


「ぐっ……あぁ……!」


膝をつき、荒い息を吐く。デメリット付きのチート能力。だが、前世で理不尽な納期と無茶振りに耐え抜いた私にとって、この程度の痛みは「コスト」に過ぎない。


「いいわ。今度は私が、この世界のシナリオを書き換えてやる」


第二章 公爵家の改革と、忍び寄る「聖女」


イザベラは動き出した。

まずは足元を固める。父であるエルドリア公爵に、前世の農業知識と魔法肥料を組み合わせた「輪作システム」を提案した。


「イザベラ、この計算式は……どこで学んだ?」


「古文書ですわ、お父様。我が家を救うのは、伝統ではなく『生産性』です」


さらに、魔法の香りを定着させた高級化粧品ギルドを設立。マーケティング、希少性の演出、流通ルートの確保。OL時代のプロジェクト管理能力をフル活用し、わずか一年で公爵家の財源を王家を凌ぐほどに成長させた。


だが、王宮には不穏な影が差していた。

平民出身の「聖女」マリア・ローズ。彼女の周囲には常に甘い花の香りが漂い、彼女に触れた男たちは一様にうつろな瞳で彼女を崇めるようになる。


王太子アルフレッドもその一人だった。

私は気づいていた。マリアの「光魔法」の正体は、禁忌の薬物で増幅させた強力な「魅了チャーム」であることを。


私は密かに、幼馴染であり騎士団長のレオンを呼び出した。


「レオン、これを持っておいて。私が改良した『中和の魔石』よ」


「イザベラ様……? あなたは、何かを予見しているのですか?」


「嵐が来るわ。でも、私は沈まない。あなただけは、正気でいて」


第三章 断罪の夜、そして戦略的撤退


婚約破棄の夜。王宮の舞踏会は、異様な熱気に包まれていた。

アルフレッドが、マリアの肩を抱き、私を指差す。彼の瞳には、どろりとした薬物特有の光が混じっていた。


「イザベラ! 聖女マリアに毒を盛り、その命を狙った大罪、もはや言い逃れはできぬ!」


マリアは怯えたふりをして、アルフレッドの胸に顔を埋める。

周囲の貴族たちは魅了魔法にかかり、「悪女を殺せ」と声を上げ始めた。


「それは、私が差し上げた菓子に毒が入っていたということでしょうか?」


「証拠は上がっている! マリアの光魔法が毒を感知したのだ!」


笑わせる。毒を仕込んだのはマリア自身だ。

私は無属性魔法で洗脳を解こうとしたが、マリアの背後に潜む「薬物組織」の魔力がそれを押し返した。全身に激痛が走り、私はその場に膝をつく。


「……認めますわ。ですが、これだけは言っておきます。あなたは今日、王国の未来を捨てました」


「黙れ! イザベラ・フォン・エルドリア、貴様を公衆の面前で追放する。二度とこの国の地を踏むな!」


父公爵は、震える手で私を見つめていた。だが、その瞳には諦めではない、静かな怒りがあった。彼は私の意図を察し、あえて王に従うふりをした。


「……生きて、再起なさい」


父がすれ違いざまに握らせた封筒には、隠し資産の鍵と、商談用の連絡先が入っていた。


第四章 経済という名の毒薬


国境の森へ追放されてから、私は死ぬ気で働いた。

レオンは騎士団を脱退し、私の影となって動いた。


私は隣国で新ブランド『IZABELLA』を立ち上げた。

前世の知識を使い、王国の主要産業である「魔石」の流通を水面下で操作。さらに、マリアが魔力増幅のために依存している「薬草」の産地を丸ごと買い占めた。


一年後、王国はガタガタだった。

聖女マリアの「薬切れ」が始まり、彼女の美貌は崩れ、性格は凶暴化。王太子への洗脳も綻びを見せ始める。経済は停滞し、民衆の不満は爆発寸前だった。


「さあ、納期の時間よ。アルフレッド様」


第五章 真実の相殺キャンセル


王都の建国記念パーティー。

変装して潜入した私は、ホールの中央へと歩み出た。


「お久しぶりですわ、皆様。お顔色がよろしくなくて?」


仮面を外した私の姿に、会場が凍りつく。

壇上のアルフレッドは、かつての面影もなく、やつれ果てていた。隣にいるマリアは、魔法が解けかかり、血管が黒く浮き出た醜い肌を晒している。


「イザベラ……! 貴様、なぜ……!」


「マリア様、お薬が切れてお辛そうですわね」


私は右手を高く掲げた。

魔力を練り上げる。全身が焼けるような痛み。だが、この瞬間のために私は耐えてきた。


「無属性魔法、全領域解放フル・キャンセル!!」


透明な波紋が会場全体を飲み込む。

マリアが必死に維持していた「聖女の輝き」が、ガラスが割れるような音を立てて砕け散った。


「あ、あぁぁぁぁ! 私の顔が! 見ないで!!」


悲鳴を上げるマリア。彼女の足元には、本物の毒薬と、洗脳に使っていた触媒が転がり落ちた。

同時に、背後のスクリーンに魔導映像が投影される。マリアが自ら菓子に毒を仕込む場面、そして王太子を薬漬けにする密談の記録。


「これが、あなたの愛した『聖女』の正体ですわ、アルフレッド様」


アルフレッドは、洗脳が解けた衝撃でその場に崩れ落ちた。

「俺は……俺は何を……マリア、お前……!」


「聖女」の化けの皮が剥がれた瞬間、衛兵たちが二人を包囲した。


終章 新しい女王の朝


アルフレッドは王位継承権を剥奪され、北の果ての塔で、死ぬまで己の罪を記録し続ける「贖罪の編纂官」となった。

マリアは魔力回路が完全に破壊され、発狂したまま貧民街へと放り出された。かつて彼女が「汚い」と蔑んだ場所で。


王国は崩壊の危機にあった。

だが、経済を掌握し、聖女の嘘を暴いた私に、民衆と貴族は平伏した。王族に代わり、私は「女王」として推戴されたのだ。


戴冠式の朝。

隣に立つレオンが、私の手を取る。


「女王陛下。本日の予定ですが……」


「わかっているわ、レオン。山積みの書類タスクがあるのでしょう?」


私は窓の外に広がる王都を見つめた。

前世の過労死は無駄じゃなかった。あの日々があったからこそ、私はこの国を、誰一人使い潰されない場所に作り変えることができる。


「ざまぁ……最高に気持ちいいわ」


私は不敵に微笑み、新しい時代の「プロジェクト」を開始した。


(完)

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