表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/30

第5話 科学者と、一目惚れと、厄介な誤解

「貴様……どこの研究機関の人間だ?」


黒木の問いに、俺は反射で「はぁ!?」と素っ頓狂な声を出した。

その横で、美月が冷静にスマホを耳に当てている。


「はい、もしもし警察ですか? キャンパス内で――」

「待て待て待て!」


俺と黒木の声がハモった。

音程までピッタリ。やめろその無駄なシンクロ。


俺は美月のスマホを下げさせ、黒木はゴテゴテのゴーグルを外した。


「待ってくれたまえ! 私は断じて不審者ではない!」

「私は黒木玄! 量子エネルギー力学と超常現象における幸運素ラッキオンを研究している科学者だ!」

「いや、知らねぇ単語多いって」

「説明しよう!」

「頼んでねぇ!」


黒木の視線が美月に突き刺さった瞬間――挙動がおかしくなる。


(……黄金比率……瞳孔開き率、平均の3.2倍……心拍上昇、体温上昇、視覚焦点収束率120%……これは――恋だ!)


「自己分析で告白すんな」


美月の一言で、理系男子の暴走は強制停止した。


「と、とにかく!」

黒木は顔を真っ赤にして咳払い。

「私は怪しい者ではない! 君たちが拾おうとしていた青色等級の幸運素を、観測目的で採取していただけだ!」

「採取とか言うな、生々しいんだよ」

「でもあなた、不審者には違いありません」


美月の声が氷点下。


「……違う! 私は科学者だ!」

「じゃあ質問。彼はどこの所属です?」


黒木が俺を顎で示す。

俺は胸を張った。


「近所のコンビニです」


「……なんだそのカバーストーリーは。あまりにも自然すぎる!」

「ほんとにレジ打ってんだよ!」


話が通じないまま、三人は近くのカフェへ。


フリーターと、お嬢様と、恋するマッドサイエンティスト。

絵面の統一感、ゼロ。



「――つまり、幸運素ラッキオンは人間の絶望エネルギーに反応して空間に放出される!」


黒木がタブレットをバンッ。

スライドに棒グラフ。


「この棒グラフをご覧いただきたい!」

「いやグラフより声がデカい!」俺。

「公共の場です」美月。

「だがグラフは美しい!」黒木。

「うるさい!!!」三人、珍しく一致。


美月が俺へ視線を向ける。


「葛城さん。観測機器なしで、どうやって運を認識しているんです?」


「集中すると見える。キラッと。だいたい不幸なやつの足元に落ちてる」

「科学的要素、ゼロですね」

「芸術肌なんだよ、俺は」


黒木がガタンと立つ。


「やはり……君の組織は生体をラッキオン感応体に――」

「だから組織じゃねぇって!」

「“近所のコンビニ”……完璧な擬態だ……」

「聞け!!」


埒が明かない空気を、美月がスッと切り裂く。


「実証は?」


黒木が即答。タブレットを操作し、スライドを切り替える。


「今夜、駅前の倒産ビル『ミライ・テック』前にて、金色等級ゴールド・クラス発生確率92.4%!」


「金色……!」俺の目がギラつく。


美月が冷静に眉をひそめる。


「社員の絶望は自宅で生じるはず。なぜビルに?」


「それこそ『絶望の震源地理論』!」

黒木の目が輝く。


「感情は“生じた場所”ではなく、向けられた対象――恨みの焦点にラッキオンが集束する!」


「……理屈は通ってます」

「だろう!? 君の理解力、実に――」

「褒めても通報はします」

「うっ……!」


黒木が俺に身を乗り出す。


「ところでデータ提供を。拾った運のエネルギー安定期間は?」

「前に白いのをポケットに入れっぱで、翌日には消えた。多分、一日」

「一日、約24時間! やはり不安定粒子! 貴重な情報だ、近所のコンビニ!」

「名前で呼べ!!」


黒木が人差し指を突きつける。


「勝負だ、葛城陸! 先に金色を手に入れた者が勝者!」

「なんで勝負!?」

「科学とは挑戦でありロマンだ!」

「ただのハイテンション理系!」

「異論は認めん!」

「異論しかないわ!」


俺の脳内では、金色の妄想がスパークしていた。


(宝くじ当選……いや推し声優の公式フォロー……いや冷蔵庫の製氷機がついに復活……!)

「現実的な夢にしなさい」

「全部現実だろ!」


美月は深くため息。


「……もう勝手にしてください。ですが私も同行します。監視対象が二人に増えましたので」

「増えてんじゃねぇか!」


黒木は恋と科学に燃え、

美月は冷静に苛立ち、

俺は巻き込まれていく。


――まあ、退屈はしない。たぶん命の保証もない。



その頃田中は、定時で仕事を終え、家に帰ってテレビを見ていた。

(黒木)実に興味深い!

本日、私は“近所のコンビニ”に勤める未知の観測体を発見した。

さらに白鳥美月――奇跡的な998ptを持つ幸運体!

この2名を同時に観測できるなど、もはや宇宙の祝福と言っていい!

……データ収集のため、★やブクマによる継続支援を要請する。

協力者諸君、研究の進展に力を貸してくれたまえ!


(美月)……この人、まだ喋ってますね。

私の監視対象が二人に増えました。

今後の騒動を“観察”するためにも、記録ブクマを残しておくといいと思います。

……きっと後悔しますけど。


(陸)いやいや、誰がトラブル量産機だよ!?

……でも、読んでくれたならマジで嬉しいっす!

次回、金色の運ゲット作戦――行くぞ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ