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第22話 就活生の告白と、役立たずの先輩

記念すべき――『開運堂(仮)』の第一号案件。


その作戦会議は、俺たちの溜まり場になりつつある黒木のタワーマンションで行われた。


「ど、どうぞ、お構いなく…!」


ソファの端っこでカチコチに固まっているのは、今回の依頼人・鈴木健太くんだ。


目の前には、完璧な笑みを浮かべる超絶美人(美月)、

SF映画に出てきそうなゴーグル姿の白衣男(黒木)、

そして、フリーターの俺(葛城陸)。


完全にカオス。就活生からしたら地獄の面接に見えてもおかしくない。


頭の上のウンちゃんが、「きゅふん…」と怯えて震えていた。


「鈴木さん、本日はご足労いただきありがとうございます。

まずはリラックスして、あなたのことを教えていただけますか?」


美月が、キャリアカウンセラーのような柔らかい声で語りかける。


その笑顔に、健太くんの緊張がほんの少しほぐれた。


彼の悲劇は――第一志望だった大手広告代理店の最終面接から始まったという。


「あの日、俺は人生で一番緊張してて……。

面接官の質問に頭が真っ白になって、しどろもどろになって……。

帰り道、自分が情けなくて、悔しくて……」


必死に語る健太くん。


だが、俺はというと――最初の10分で完全に飽きて、ウンちゃんの毛づくろいを始めていた。


スマホをいじろうとした瞬間、美月に無言で足を踏まれて「ぐえっ」と変な声が出る。


黒木はゴーグルを光らせながら、じっと健太を凝視していた。


「待った! その面接で、君の心拍数は平常時の何パーセント上昇していた!?

発汗パターンの変化も! 空間の幸運素ラッキオン濃度の揺らぎも!!」


「黒木さん。黙りなさい」


慈愛の笑顔を保ちながらも、裏では黒木と俺を完全に支配する美月。マジで怖ぇ。


涙ぐみながら健太くんは続けた。


「それからなんです。

次の面接から、ありえないような不運ばかりで……。

まるで、あの日に、ずっと大切にしてた“何か”を落としてきたみたいで……。

いや、そんなバカなって思うんですけど、でも本当にツイてなくて……。

何もかもうまくいかなくなって……」


健太の話は一時間近くにも及んだ。


(いや長ぇよ、って心の中でツッコんだのは内緒だ)


「わたしたちはお話を聞くことしかできませんが、少しでも気持ちが楽になっていただけたなら幸いです」


美月が丁寧に締めくくると、健太は頭を下げて帰っていった。


「ありがとうございます……! なんだか、少しだけ胸のつかえが取れた気がします……!」


……そしてドアが閉まった瞬間。


部屋の空気が、一気に現場モードへと変わる。


「あー、長かった……。で? あいつ、なんて言ってた?」


黒木がゴーグルを外し、興奮気味に叫ぶ。


「間違いない! 彼の言う『負の連鎖』は、『運の欠落』をトリガーとした――一種の『幸運素カスケード障害』だ!

欠落した運は、金色の幸運素ゴールド・ラッキオン

エネルギー値はおそらく500ptを超えるぞ!!」


「問題は、その『金色の運』が今どこにあるか、ですわね」


黒木が即座に反応する。


「うむ! 理論上、強い感情の残滓は空間のラッキオン場に歪みを生じさせる!

つまり――観測可能だ! 我々の時代が来た!!」


「来てませんわ。黙りなさい」


「ぐふっ……!(致命傷)」


美月は咳払いし、話を戻す。


「……さて、葛城さん。あなたはどう思いますの?」


「決まってんだろ。あいつが一番やらかした場所だよ。第一志望だったっていう、大手広告代理店のビル。あそこだ」


美月が眉をひそめる。


「……根拠は?」


「運ってのは、感情と繋がってんだよ。

あいつが人生で一番へこんで、一番“もうダメだ”って思った場所。

そんな強烈な感情がこびりついた場所に、デカい“落とし物”があるんだ。

理屈じゃねぇ、俺の勘だ」


俺の“就活失敗あるある”理論に、黒木が目を輝かせて頷く。


「なるほど……! 経験に基づく直感! データにはないが、感情波動の共鳴仮説として実に興味深い!」


美月が、皮肉を込めて微笑んだ。


「あら、葛城さん。あなたのその輝かしい“失敗の経験”が、初めて私たちの役に立ちそうですわね」


「うるせぇ!」


美月はパン!と手を叩いた。


「方針は決まりましたわね。私たちの最初の仕事は――第一志望の企業ビルに潜入し、彼が失った『金色の運』を回収することです!」


「なんとスリリングなデータが取れるんだ!」


黒木が机を叩いて立ち上がる。


「これぞ未知との遭遇! 幸福の重力場に踏み込む科学者たちよ、今、歴史は書き換えられるのだ!!」


「落ち着け、変態白衣!」


美月が完璧な笑顔で言い放つ。


「これは、ただの潜入ではありませんわ。“開運堂(仮)”の、記念すべき最初の“業務”ですのよ」


こうして、俺たちの記念すべき第一号案件――無謀で、最高に面白そうな“仕事”が決定した。


その頃田中は、ATMのタッチパネルを力いっぱい連打していた。


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