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第10話 深夜の訪問者と、もふもふの正体

翌朝。

俺は昨夜ゲットした限定ゲーム機の発送完了メールを眺めてニヤニヤしていた。


「明後日には届くのか。楽しみだなー」


金色の運を使った甲斐があった。

スマホには田中から『今日は調子いいぜ!』の元気なLINE。


「お、田中も元気そうでよかったわ」


満足げに頷き、バイトへ向かう準備を始めた。



バイト終わり。帰り道で足元に光を感じる。

「ん? なんだ?」


“運が見えるモード”に切り替えると――

青い光の粒が、道端に大量に散らばっていた。


「うおっ!? めっちゃ落ちてんじゃん!」


すぐそこに灯りの消えたオフィスビル。

入り口の「閉鎖のお知らせ」。倒産した会社らしい。

たぶん今日が最終出社日。絶望が運になってこぼれたんだ。


「ラッキー! こんなチャンス、めったにねぇぞ!」


俺は宝探しみたいに次々と青い運を拾い集める。

1個、2個、3個……ポケットはパンパン。


「よっしゃ! これだけあれば、欲しかったもん全部買って、うまいもん食いまくれるな!」


上機嫌で家路についた。

まさか、この大量の運が“訪問者”を呼ぶとは知らずに。



その夜。時刻は深夜2時。

部屋でスマホをいじっていて、「さて寝るか」と伸びをした瞬間――


カタカタ……チリ……。


窓ガラスを引っ掻くような無機質な音。

「……ん? 風か?」


窓を見ると、向こう側にテニスボールくらいの真っ白な球体がふよふよ浮いていた。


「うおっ!? なんだアレ!?」


白い球体は俺の驚きを無視して、

“スゥ……”と音もなく窓ガラスをすり抜け、部屋へ侵入。


「うおおおお!? 今、壁抜けたよな!? 完全にホラーだろ!」


球体はふよふよ漂い、俺には目もくれずテーブルの上へ。

そこには昼間拾った“大量の運のビー玉”。


「く、来んな! 変な玉!」


クッションを投げる――すり抜けて、壁にポスリ。


「マジかよ! 物理法則どこ行った!?」


白い球体はビー玉に近づくと、

表面から掃除機みたいに青い光を吸い込み始めた。


「え、ちょ、待て! 俺の運!!」


押さえようとするが止まらない。

1個、2個、3個……凄まじい勢いで全部吸い尽くす。


「あああああ! 俺の運があああ!」


一瞬で空っぽ。球体は“ぷるん”と満足そうに震え――


部屋の空気が止まった。温度が少し下がる。


次の瞬間、白い球体がビカビカと発光。

「うおっ!? な、なんだ!? 進化イベントか!?」


眩い光。思わず腕で目を覆う。

数秒後、光が収まり――


さっきより一回り大きくなり、真っ白でふわふわの毛に覆われた“子犬みたいな生物”。

黒くて丸い目がちょこん。


「……え?」


そいつは俺を見上げて「くぅ〜ん」と鳴き、

足元にすり寄って膝へポフッ。


「……軽っ! お前、重力どこやった!」


恐る恐る触る。温かい。ふわふわ。気持ち良すぎる。

「……何だコイツ」


白い生物は満足そうに目を細め、膝の上で丸くなった。

小さな寝息。


「……寝てる?」


困惑。だが憎めない。

いや、むしろ永遠になでていたい。


「……まぁ、いっか」


その夜、俺はソファに倒れ込むように眠った。

いつの間にか、謎の生物は腹の上で丸くなって一緒に寝息を立てていた。



翌朝。

俺は慌てて黒木へ電話。腹の上では白い生物がまだ寝ている。


「おい黒木! 昨日の夜、ヤバいもんが部屋に来たんだけど!」

『……何が来た?』


寝起きらしい声。

「白い球体が来て、俺の運を全部食った! そしたら光って、もふもふの子犬みたいになって、今部屋で寝てんだけど!」


電話の向こうで息を呑む音。

『……運を、食う球体だと?』

「ああ! ビー玉状の運を全部!」


数秒の沈黙――からの、黒木の声が興奮で震え始める。

『葛城くん! その球体の特徴は古代文献に残る“運喰い”の伝承と一致する!

だが捕食後に別の生物に変化した記録は一切ない……!』

「運喰い……?」

『ああ! 球体が消え、新たにもふもふした生物が現れただと!?

形態変化――変態したというのか!?』


声がどんどん大きい。

『素晴らしい……! 青色の運(不幸の運)を短時間に大量摂取したことが引き金になった仮説が立てられる! これぞ科学の醍醐味だ!』

「いや、喜んでる場合かよ! で、こいつどうすんだよ!」

『……今、そちらに向かう。絶対に動かすな! 白鳥くんにも声を掛けておいてくれたまえ!』


電話は一方的に切れた。


腹の上で寝ている白い生物を見下ろす。

「……お前、何者なんだよ」


「くぅ〜ん」


無防備すぎる寝顔。ため息――そして、なでる手は止まらない。

「……まぁ、可愛いからいっか」


黒木たちが来るのを待つことにした。


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