第1話『落ちてたんで、拾っただけっす』
「はぁ……また本部から催促の電話かよ」
深夜0時。コンビニのバックヤードで店長がキレている。
俺はポテチの山と格闘中だ。
「葛城くん! 品出しが遅いんじゃないか! 客が欲しい時に棚が空だとどうするんだ!」
はいはい、ソーッスネー。
心の中だけで相槌を打ちながら、スナック菓子を棚に詰める。
就活全敗。フリーター三ヶ月。
店長の八つ当たりも、もうBGMみたいなもんだ。
「チッ……使えないな、まったく」
舌打ちして事務所に戻ろうとした――その瞬間。
「ん?」
店長の足元から、何かがポロリと落ちた。
ホコリじゃない。
薄暗い床で、小さな光の粒が震えていた。
青い。けど、どこか濁っている。
光のくせに、泥みたいに重たそうだ。
俺は思わずしゃがみ、指先でそっと触れた。
じんわり温かい感触。
光は吸い込まれて、手の中にビー玉みたいな小さな塊を残した。
ちょっと歪で、鈍く光っている。
「葛城くん! 言い忘れたが――」
ドアが開いて怒声。反射でポケットに塊を突っ込む。
「す、すいません! なんでしょうか!」
「まったく、君は……!」
ズカズカ近づいてくる足音。
――うぜぇ。誰か助けてくれ。
「うわっ!?」
店長が、自分で置きっぱなしにしてた段ボールの切れ端で滑った。
背中からビターン。完璧な仰向け着地。
床にカエルみたいに転がる店長。
「て、店長、大丈夫っすかー」
感情ゼロで声を掛けつつ、ポケットに手を入れる。
……さっきの塊、もうない。
――今の、俺のせい?
いや、たまたまか。
考えるのをやめて、仕事に戻った。
◇
バイト終わり。夜風が気持ちいい。
でも、頭の中はさっきの光でいっぱいだ。
足を止め、街灯の下で目を細める。
――“あの光”、もう一度。
アスファルトに、白い光がいくつもチカチカ見えた。
さっきより軽い色。
一番近いのを拾う。
ふわっと温かい。小石みたいな手触り。白い。
目の前の自販機。小銭を入れて、ボタンを押す。
ガコン。ジュースが一本。
まあ、そんな――
ピッ。
『777 アタリ! もう一本!』
「……マジかよ」
夜の住宅街に、笑いが漏れた。
ポケットを探ると、白い塊は消えていた。
“使うと消える”。そういう仕組みらしい。
ブブッ。
スマホが震える。
親友の田中からのLINE。こんな時間に?
『最悪だ…駅の階段でスマホ落として、画面バキバキになった…』
「うわ、田中ツイてねーな。まあ俺は当たり出たしラッキー!」
もう一本の缶を開ける。
炭酸が弾ける音が、夜に混ざった。
「よし、もう一回試してみっか!」
俺はポケットの中を探る。
……あった、さっきとは違う白い光。
「んじゃ、行けぇっ!」
手の中で軽く握って、目の前の信号をにらむ。
ピカッ。
赤信号が――青になった。
「おおおおお!? やっぱ俺、ツイてるううう!!」
ガッツポーズ。夜の住宅街に俺の声が響いた。
もうテンションが止まらない。
「よっしゃ! 明日は宝くじでも買うかぁー!!」
月明かりの下、俺はスキップで青信号を渡った。
本日から投稿開始します。
とりあえず、本日は5話迄
明日以降は第一部完結まで毎日更新予定です。
何も考えず、クスっと笑える作品になっていると思います!




