第52話 束の間の休息
外の空気を吸うのがずいぶん久しぶりな気がする。
「まぶしっ……」
今までずっと薄暗い所にいたせいで、目を開けるのに少し時間がかかった。
「あっ、出てきたー、お帰りー!」
リントヴルムが俺たちに気付いて、首を持ち上げた。
「ライトー!ご飯ちょーだい!ご飯ー!」
お前、そればっかりだな。ん?そういえば……。
「俺たちが建物に入ってから、どれくらい時間が経ってんだ?」
リントヴルムの喉元から紐?を引っ張り出しながら尋ねた。
「んー、ちょうど1日だね」
え?それだけしか経ってないのか?
ものすごく長い時間、鍛錬してたように感じたけど。
棒を握って魔力を流しながら考えていると、すぐにピンポンと音が鳴った。
「わあ、すごいね〜、あっという間にお腹一杯になっちゃった。鍛錬したら魔力を流せる量も増えたんだね」
そうなのか。……もしかしたら枷が外れた影響もあるかもしれないな。
俺は紐?を片付けようとしたが、うまく入らない。
「コードは円を描くように巻いて片付けるとうまく入るよ」
見かねたコーディが手伝ってくれた。
「コード?」
「ああ、この紐のことだよ。中に魔力導線が入ってて、それが傷つかないようにコーティングしてあるんだ」
「へえ……」
また新しい単語が出てきた。実はコーディって物知りなんじゃないかと思う。
いつもはあまり喋らないけど、聞いたら色々教えてくれそうだよな。
そこで俺のお腹が盛大に鳴った。
「俺もお腹空いたー……」
「あはは、それじゃここで食べましょうか。……そうね、もう今日はここで休んで、明日から動くことにしましょ」
そう言うと、リナベルは宙に手を突っ込んで、ミニチュアハウスのようなものを取り出した。
そして、それを地面に置いて息を吹きかけると、本物の家のように大きくなった。
「おおっ」
「携帯用コテージよ。エルフの道具屋さんから買ったんだけど、なかなかいい品よ」
リントヴルムが興味津々といった風に、後ろから覗き込んできた。
「やっぱりオイラは入れないよね」
「そうね、ごめんなさいね」
リナベルは苦笑いだ。
「さ、どうぞ。中でご飯にしましょ」
「お邪魔しまーす」
リナベルがドアを開けてくれたので、俺はさっそく中に入ってみた。
「おおっ、けっこう広いな」
入って右手に簡易的な調理場、左手にはソファ付きのテーブルセットがあり、奥にベッドが2台あった。
何が食べたいか聞かれ、とりあえず手早く食べたいという俺のリクエストに、リナベルがグレートブルの肉のガーリック炒めと青菜のサラダ、オニオンスープと黒パンを用意してくれた。
リナベルが料理ができるってのが意外だったな。
本人に言うと絶対怒られるから言わないけどな。
「ところで、リナベルとコーディはどんな鍛錬をしたんだ?」
俺は料理を頬張りながら、二人に尋ねた。
うん、この肉美味いな。
「私たちはひたすら敵を倒したわ。最初はそんなに強くなかったけど、だんだん強くなっていくの。しかもノンストップでね」
「ひええ……」
それも中々エグいよな。
「ライト君は何をやったの?……その様子じゃ、結構詰め込まれたんじゃないかしら?」
俺は真祖に連れて行かれた先であった出来事を、二人に話した。
「そうだったのね……。色々大変だったわね」
「まぁね。でも、お陰で強くなれたと思う」
「そう……。ライト君がそう思えるのなら良かったわ」
何故かリナベルから頭を撫でられた。
「さて、あらかた食べ終わったし、片付けてから休みましょうか」
いつの間にか、外は夜の帳が下りようとしていた。
ベッドが2台しかないため、誰が使うかの話になって、結局リナベルと俺が使うことになり、コーディがソファで休むことになった。
あ、でも待って、これって……。
「さて、覚悟はいいかしら?ライト君」
妖しい笑みを浮かべたリナベルが、ベッドサイドに立っていた。
やっぱりこうなるよな!
「い……いいわけないだろっ……!やっと真祖様から解放されたのに……!」
そんな俺の抵抗も虚しく、今日はリナベルの餌食となったのだった。




