第51話 鍛錬終了
目を開けると、薄明かりの中にリナベルとコーディが入っていった扉が見える。
どうやら元の場所へと戻ってきたようだ。
「来たか」
真祖の言葉通り、扉が開きリナベルとコーディが出てきた。
よほど激しい戦いだったのか、二人ともボロボロだ。
俺は二人の側に駆け寄っていった。
「二人とも大丈夫か?“回復”」
光が二人の傷を癒していく。
「! ライト君、今……声で魔法を……」
俺はうなずいた。二人はすっかり元通りだ。
「あなたも……相当鍛えられたみたいね」
リナベルはそんな俺を見て、はたと動きを止めた。
視線がある一点で固定されている。俺の首のチョーカーだ。
「真祖様、抗議させていただいてもよろしいでしょうか?」
リナベルの雰囲気が一瞬で怒気を孕んだものに変わり、目が据わっている。こ、怖い……。
「一番側にいる私にも手を出すなと申されるのですか!? いくら真祖様でもこれはあんまりでございましょう!?」
真祖はそうだったという風に額に手をやった。
「……よい、リナベルは許そう」
その真祖の言葉に、先程まで鬼の形相だったリナベルが、慈愛の天使のような笑みをうかべた。
「有り難き幸せ」
リナベルの反応を見るに、このチョーカーが他の吸血鬼避けっていうのは本当っぽいな。
だけど、他の吸血鬼って見たことないし、リナベルに許可を出したら結局今まで通りってことじゃないかー!
そのリナベルは満足そうな顔をしている。
「おお、リナベルのせいで忘れるところであった。ライトよ、そなたにこれを」
真祖は宙から一冊の古びたぶ厚い本を取り出し、俺に差し出した。
「そなたが契約した魔法の全ての陣がこれに載っておる」
そう言うと、魔法陣符を一枚懐から取り出した。
「声を封じられた時などは魔法陣符がそなたの助けとなろう。この本にある陣を写し、よく学ぶがよい」
「あ、ありがとうございます……」
俺は真祖から本を受け取った。
「よいか、その本は貸すだけぞ。いつか返しに来い、その時にこれを戻してやろう」
真祖は魔法陣符をひらひらと振った。
うう、それ一枚けっこう高いのに……。
「では、余はそろそろ戻ろう。そなた達の旅路に幸多からんことを」
そう言うと、真祖の姿が消えていった。
同時にその場を支配していたプレッシャーもなくなった。
「はあぁぁ……疲れたぁ……」
俺は盛大にため息をついた。
「よく頑張ったわね。私も四六時中、真祖様と一緒にいろって言われたらちょっときついもの。……じゃ、とりあえず外に出ましょうか」
俺とコーディはうなずいて、リナベルのあとに続いて建物の外に出たのだった。




