第42話 スールブリッサにて
アクセラバードと遭遇した後、俺たちもスールブリッサ王国へとやって来た。
スールブリッサ王国は獣人の王が治める国で、住民の半数以上が獣人だ。
王城は要塞のように堅牢な建物で、その周りに町がいくつもあるような大きな都市になっている。
西側にある町は海に面していて、漁業が盛んなんだそうだ。もちろん海鮮料理を食べさせてくれるお店もたくさんあるんだって。
魚ってどんな味がするんだろうな?食べたことないから気になってるんだけど。
ノルドツァンナから避難してきた人たちのために、町の外側に臨時の家屋が建てられることになって、資材を運ぶ人、建物を作る人、その他色々な人で溢れかえっている。お貴族様は町中のいい宿に泊まってるみたいだけど、着の身着のままで逃げてきた人たちは、こっちの建物で暮らすことになるらしい。
ガーディアンフォースは、西側の町にある冒険者ギルドの建物を臨時の拠点にしていた。
俺たちはそこでジェラルド団長と再会し、これまでの報告をした。
「……そうか、ありがとう。ご苦労だったな。……それにしても元気がないな。どうした?」
「あんなにコテンパンにやられて、いつも通りでいられるかよ……」
「アクセラバードか。……君たちも勧誘されたんだったな」
「もって……どういうこと?」
リナベルがすかさずジェラルド団長に突っ込んだ。
「ノルドツァンナでの戦いの際、あのグラナギアとかいう機神から、幾人もの冒険者が勧誘を受けたと報告が上がってきていてな。……君たちもここに来るまでに噂を聞いていないか?」
「フェルドのことね?」
「そうだ。……やつが機神と共に去ったのは、どうやら本当らしい。その噂のせいで、我々も少々動き辛くなっているのだがな」
そう言ってジェラルド団長は腕を組んだ。
「被害の方はどうなの?」
「……飛空機械の約半数を失って、機動力を削がれた形だ。今の技術で作れる代物ではないから、実はこれが一番痛い。人的被害はまだ全てを把握できていないが、恐らく全体の1割ぐらいの人が亡くなったとみられる。建物の方は君たちが空から見た通りだが、精霊竜が現れなければ、かなりの数が焼失していただろう」
そこでジェラルド団長は俺を見た。
そして何を思ったのか、突然遮音防壁の術を展開した。
「まさか……精霊竜を呼んだのは君か?」
嘘をついてもしょうがないので、俺は素直にうなずいた。
「同じ場所に続けて2体も現れたから、もしかしたらと思っていたが……」
ジェラルド団長は頭痛がするという風に、こめかみを揉んでいる。
「いや、君のお陰で助かった命がたくさんある、そこは礼を言わねばならない。それは分かっているんだ、ありがとう。だが……それを人に知られてしまえば……」
「大丈夫だ、町中とかじゃ威力がありすぎて呼べないから」
「知られなければ……か。それを願うしかないのだろうな……」
ジェラルド団長は諦めたように頭を振った。
「話をもとに戻すと、ガーディアンフォースは今、身動きが取り辛い状況だ。それは今後も続くだろう。しばらくは限られた人数で動くしかないのだろうな。君たちは……色々あっただろうから、少し休息を……と言いたいところだが、一つだけ頼まれてくれないか?」
「それが終われば少しお休みをもらえるのね?」
「ああ、約束しよう」
「分かったわ」
リナベルがうなずいて承諾した。
「ありがとう。では早速説明しよう」
ジェラルド団長の説明によると、スールブリッサから北東にあるイエロチスパという町の近くにある山で、以前から大きな生物?が目撃されているという。この生物の正体を探ってほしいというのが依頼だった。
「今のところイエロチスパに被害は出ていないのだが、どうにも気になってな。君たちなら、いざ戦闘になっても精霊竜がいるから何とかなるだろうと思ってな」
イエロチスパまでは飛空機械を飛ばしてくれるらしい。
出発は3日後の朝とのことで、俺たちは身体を休めるべく、ジェラルド団長に教えてもらった宿屋へ直行したのだった。




