第41話 フェルドの選択
ノルドツァンナに機神が襲来している最中、オレ、フェルド・アヴェルスタールはある機神と対峙していた。
ペークシスの炭鉱の最奥部、フレアタイトが見付かった場所で鉢合わせたやつだ。
あの時と同じように、ラントとハンスがオレを庇い地に伏していた。
次はオレの番……そう考えると、何故かここ最近の出来事が思い出された。
ガーディアンフォースの任務で赴く地は、何故か戦闘が多かった。
多くの経験を積むことが出来たが、毎回ギリギリの戦いが多く、一度機神の群に囲まれた時などは死を覚悟したが、なんとか生き残ることができた。
そしてさほど間を空けずに次の任務が言い渡される。
ここしばらくはだいぶ消耗していたのは確かだ。
久し振りに任務が空く日があり、ふと思い出して、あの田舎者が持っていた剣を手に入れようと、ラントとハンスに依頼した。あの威力なら、ずいぶん戦闘が楽になると考えたからだ。
だが、事はそう簡単にいかなかった。
ラントとハンスによれば、あれは精霊竜の剣だったという。
ノルドツァンナ王家の悲願……だからあの時、国王の近衛らしき者たちがあの田舎者を連れて行ったのか。
そのまま王家に囲われるかと思いきや、精霊竜が現れてあの田舎者を連れ去ったというのは公然の秘密だ。
王家は精霊竜の思し召しだとして、あの田舎者に手を出さないようお触れを出したが、一部の貴族は接触していたようだ。
また、事の真偽は不明だが、あの田舎者がアーイディオンポース王家の紋章が入った短剣を持っていたとの噂もある。
オレはラントとハンスに精霊竜の剣の生成方法を尋ねた。
すると、あれは精霊竜の協力があってはじめて生成できる代物らしい。まずは精霊竜を見つけ出さなければいけないが、目撃情報はほとんどない。
ならば、あの田舎者を捕まえて聞き出せばいい。
だが、その頃からあの田舎者の足取りがぷつりと途切れたという。
どうにかして、精霊竜の剣のような圧倒的な力を手に入れたい――。
そんな時、機神共がノルドツァンナに侵攻してきたという情報が入ってきたのだった。
「……これがいわゆる走馬灯とかいうやつか」
オレは目の前の機神を見据えながら、自嘲ぎみに呟いた。
「ククク、あとはあなただけです。……が」
やつは構えを解いた。何の真似だ?
「ワタシは知っていますよ、あなたが今、何を考えているのかを」
オレは沈黙を守った。
「あなたのような目をしたヒトを、ワタシはたくさん見てきました。あなたは今、考えているでしょう?どうにかしてワタシを倒せないかと」
それはそうだろう。倒せなければ、オレは死ぬのだから。
だが、力さえあればこいつを――。
「そう、力さえあれば、ワタシを倒せる」
オレの思考とやつの言葉が重なり、オレの心臓が跳ねた。
「ククク……分かっていますよ、あなたは力を求めている」
そうだ、オレは圧倒的な力を求めている。
「ワタシならあなたの望みを叶えてあげられます。ワタシと共に来なさい、あなたに圧倒的な力を授けてあげましょう」
その言葉は甘美な毒となって、オレに染み渡っていく。
やつはその手をオレに差し出した。
「迷うことはありません、共に来ればあなたは力を手にすることが出来るのです。さあ……来なさい」
気付くと、オレはやつの手を取っていた。
「いい選択です」
やつはそのままオレを抱えると、その場から消えていった。
複数の目撃者がいることにも構わずに――。




