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第4話 花畑での出来事

 俺は冒険者二人を家の裏手へ案内した。

「すごい!こんなに花が咲いてるなんて」

 コーディは目を輝かせている。


 俺の自慢の花畑だ、驚いてくれるとちょっと嬉しい。趣味が花の栽培とか変わってるって言われるけど、珍しい花とかも植わってるから、意外とお金になるというかなんというか。実益も兼ねてるってことで、じいちゃんも黙認だ。


「そうね。……この村、他の所と比べて緑が多いと思ってたんだけど、もしかして君のおかげ?」

 リナベルは「(ウォーター)」の魔法陣符(マジックカード)を発動した俺を振り返った。

「さあな。……そうだといいなとは思ってんだけどな」

 発動した後に少し魔力を加えると、「(ウォーター)」は細かく分かれ、雨のように花畑に降り注ぐ。

 リナベルが少し驚いていた。

「そんな器用なことができるのね。やっぱり精霊竜の力を少なからず使えるってこと?」

「そこは分かんないな。エルフほどじゃないから、魔法陣ちゃんと描かないと魔法を発動できないし。あ、俺は魔法陣描くのいつも間違うから魔法陣符(これ)だけどな」

 俺は再び「(ウォーター)」の魔法陣符(マジックカード)を発動した。


 魔法陣符(マジックカード)はその名の通り、魔法陣の描かれたカードで、触れて魔力を流せばそこに描かれている魔法を発動できる。

 その場で魔法陣を描いて魔法を発動するよりも少し多めに魔力を流さないといけないが、魔物との戦いでは重宝している。

 カードは使用すると魔法陣が消えるだけで、また魔法陣を描き込めば再使用出来る。

 ちなみにエルフは「声」で魔法を発動できるらしいから魔法陣を描かなくてもいいんだと。

 ずるいよな。


 降りそそぐ水を見ながら、リナベルがため息をついた。

「はあ……。君の魔力って、ほんと美味しそうだよね」

 魔力が美味しい? 今変な言葉が聞こえたような。

「!リナベル、だめだよ」

 ふらふらと俺に近寄ってくるリナベルの前に、コーディが立ち塞がった。

「ちょっとぐらい、いいじゃない」

「いや、ライト君やっとケガが治ったところだからね?」

「少し……味見させてほしいな」

「何のこと……あ、ねむ……」

 リナベルと目が合ったと思ったら、急に眠気が襲ってきた。



 腕の中で眠るライト君をそっとのぞきこむ。

「うふふ、2日も我慢してたんだからいいわよね」

「いや、ダメだって。またライト君が寝込んじゃったらどうするの?」

 コーディは心配症ね。

「大丈夫、大丈夫。ちゃんと加減するから。それじゃ、いただきまーす」

 ライト君の首筋に犬歯を当て、少し刺し込むとぷつりと皮が破れ血が滲み出た。

「リナベル……!」

 コーディが咎めるように私の名を呼ぶ。でも本気で止める気はないみたいね。

 私は久し振りの「食事」に舌鼓を打った。



「……あれ?俺どうしたんだっけ?寝てた?」

 空のグラデーションが綺麗だ。……じゃなくて。

「大丈夫? 急に倒れこんだからびっくりしたわ。立てる?」

 どうやらリナベルが膝枕をしてくれてたみたいだ。

「ああ、問題ないよ」

 俺はそのまま立ち上がった。

「ええと、花の水やりは……終わったんだっけ?……じゃ、家に戻ろうかな。2人はどうする?夕食まではもう少し時間があるけど、村の中を見て……あ、2日もいたからもう大丈夫か。他に気になることがあれば……」

 と言いつつ、俺はコーディの腰に下げられた獲物に目がいった。

 コーディもそれに気付いたようだった。

「やっぱり気になる?……はい、どうぞ」

「えっ……!?」

 コーディはその獲物を俺に手渡してきた。

「これ、俺がさわってもいいのか?」

 あんまり見たことないけど、お偉いさんが持ってる銃ってやつに以てると思う。

「うん。普通の人は撃てないと思うから」

「撃てない?」

 俺は手に持っている銃を眺めた。

 多分、ここに指をかけて引けば弾が飛んでくんだと思うけど。

 俺はおもしろ半分で遠くの雲をねらって引き金を引いてみた。


 ドン!!!


 凄まじい音とともにエネルギーのようなものが放たれ、俺は反動で尻もちをついた。

「ご……ごめん!! 悪気はなかったんだ、ほんとごめん!」

 俺は立ち上がってコーディに急いで銃を返した。

 コーディとリナベルは目をまん丸にして驚いていた。

「君は……ネイティブガンナーだったのか」

 俺から銃を受け取ったコーディが知らない単語を呟いた。

「?」

「 いや、僕も君に興味がわいたよ」


 それから音にびっくりした村人の面々が次々に花畑にやってきたが、騒動の原因が俺だとわかると、2、3小言をくれて何事もなかったように戻っていった。

 リナベルがお腹をかかえて笑っている。

「あははははっ、この村での君の立ち位置がわかっておもしろかったよ」

「うるさいな、もう……」


 それから俺は宿屋の隣にある居酒屋に今日の夕食と明日の朝食を買いに行った。

 2人の冒険者もついてきて、あれこれと食べたいものを買いこんでいた。

「ご馳走になってて悪いから、今日は私が払うわよ」

「えっ、いいのか?」

「もちろん。こう見えてもSランクですから」

 リナベルはウインクした。やっぱり稼いでんじゃねーか。

 そして帰る途中に薬屋に寄り、俺の治療に使った回復薬(ポーション)の代金を支払った。それから家に着いて、すこしばかり豪華な夕食にありついたのだった。

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