表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある冒険者たちが世界を救うまで  作者: 如月つばさ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/42

第37話 ディアの事情

 鳥型の機神に捕まってから、結構遠くまで来ていたようだ。

 メーネラントの町まで歩いて戻る間、ディアは自分の身の上を話してくれた。


 ディアは2人兄妹で、兄がいること。その兄が罪を犯し、兄妹共々エルフの郷を追放されたこと。罰として魔法の使用を禁じられていること。しばらく放浪の旅をしていたが、今はここに落ち着いていること。自分の住んでる所を人が“隠者の庭園”と呼んでいること。


 俺がディアの小屋で目を覚ました時、包帯が巻かれていたのはそういう理由だったのか。

 エルフなら「回復(ヒール)」ぐらい朝飯前だからな。


「……なあ、ディアの兄さんは何をしたんだ?」

 ちょっと不躾だったかなと思いながらも、聞かずにはいられなかった。

 ディアは少し間を置いて話し始めた。

「……兄は鍛冶師で、とある王様から依頼を受けて、精霊竜の剣(ドラゴニックブレード)を作成しようとしていました。それで……ある日、とても良い剣が出来て、威力を試そうとしたのですが……暴走してしまい、同胞や協力者が住んでいた町を消し飛ばしてしまったのです……」


 声が出なかった。

 昨日まで自分と会話していた人たちや自分が住んでいた町が、一瞬で消えてしまう恐怖。

 きっと一番辛かったのは、ディアの兄さんだろうに……。


 リナベルから聞いた話に出てきたエルフの鍛冶師は、ディアの兄さんのことだったのか……。

 町一つを丸ごと消滅させてしまえる力……ノルドツァンナの王様が手に入れたがる訳だ。


「……兄はドワーフたちの住む村で、今でも精霊竜の剣(ドラゴニックブレード)を完成させようと打ち続けていると聞いています。……ライト、お願いです、今すぐにとは言いません、兄に会ってくれませんか……?」

 ディアは俺の手を取って、必死に訴えてきた。

「会って、兄に本物の精霊竜の剣(ドラゴニックブレード)を見せて欲しい……。多分……諦めがつくんじゃないかと……思うから……」

 ディアの目から涙が一滴こぼれた。


 俺に想像できることは限られてるけど、きっとたくさん苦労があったと思うし、兄さんに対しても複雑な思いがあるに違いない。


「……分かった。町に戻ったらリナベルとコーディに話してみるけど、いいか?……多分、ディアの兄さんに会うこと自体は反対しないと思う。ただ、ガーディアンフォースの任務があるから、その合間になりそうだけど」

「はい、大丈夫です。本当にいつでも構いませんから……。ありがとう、ライト」

 ディアからハグされた。


 エルフってドライなイメージがあるけど、ディアはけっこう感情表現が豊かだよな。

 もしかしたら、昔はそうじゃなかったかもしれない。エルフの郷を追放されてから、100年以上こっちで暮らしてる間に感情が豊かになったとしたら……。

 そう考えると、俺は少し複雑な気持ちになったのだった。



 メーネラントの町に辿り着き、下水道の入口まで行くと、人だかりができていた。

「何かあったんでしょうか?」


 二人で人だかりの後ろから覗いてみると、なんと、でかいタコのような魔物が倒れていた。だらんと地面に伸びているそいつは、建物3軒分ぐらいの大きさがある。

「な、なんだ? あれ……」


 その時、後ろから走ってくる音が聞こえてきた。

「ごめん、お待たせー!なかなか臭いが取れなくて……って、ライト君とディアじゃない!良かった、無事だったのね!巨大な鳥型の機神に連れて行かれたって聞いてたから……」

 足音の主はリナベルとコーディだった。リナベルは一気にそこまで言うと、ほっとした表情を見せた。


「良かった、無事だったか。ちょうど捜索に出ようとしていたところだった」

 いつの間にかリーダー格の男と、自警団らしき集団が、俺たちの周りに集まっていた。

「……見ての通り、あの魔物が下水道の奥に棲み着いていたんだ。病気の原因はやっぱりあいつで、お二人が倒してくれて、もう病気になる心配もなくなった」

 リーダー格の男は、1人の男に目配せした。

 うなずいた男は、人だかりの中からあの爺さんを連れてきた。

「さ、ルドガー、言うことがあるんだろ?」

 リーダー格の男に促され、爺さんがディアの前までやってきた。

 爺さんは少し迷っていた様だったが、覚悟を決めたようにうなずくと、ディアを見上げた。

「……今までいろいろと言いがかりをつけてすまんかった。全部儂の勘違いじゃった、申し訳ない。この通りじゃ、どうか許してほしい」

 頭が地面につきそうなほど腰を折って、爺さんが

頭を下げた。

 周りに集まった人々が固唾を飲んで、事の成り行きを見守っている。

 ディアは爺さんに頭を上げさせ、そのシワだらけの手を取った。

「私も疑いが晴れてほっとしています。今までのことは水に流して、これからは仲良くして頂けると嬉しいです」

 そのディアの言葉に、爺さんは目を見開いた。

「儂を……許してくれるのか」

「はい、もちろんです」

 周りに集まった人々から、わっと歓声が上がった。

 ディアと爺さんは抱擁を交わしている。

 俺たちも自然と笑みがこぼれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ