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ある冒険者たちが世界を救うまで  作者: 如月つばさ


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30/42

第30話 サフィールの町にて

 次の日の夕方近く。

 俺たちは砂漠のオアシスにあるサフィールの町にやって来た。


 サフィールの町は砂漠を渡る商隊の休息地で、今も複数の商隊が留まっているらしく、沢山の人と走竜が町中にいた。

 走竜は二足歩行の草食の竜種で、皮下脂肪を蓄えられるため、砂漠を渡る際には馬の代わりに用いられてる。

 あいつら、俺の髪の毛を草と間違えてむしるから嫌いなんだよ。

 サフィールに元から住んでる人は獣人系が多く、一番多いのは毛足の長い、ちょっとふっくらとして見える猫系の獣人なんだそうだ。

 今、そこで集まってる感じの……。


「何かあったのかしら?」

 宿に向かおうとしていた俺たちは、たまたまその場を通りかかった。

 耳をそばだてていると、猫系獣人の母親の息子たちが帰って来てないらしく、どうやら町の外に行ってしまったようだ。近くにあるサンドケイブって呼ばれてる所によく遊びに行くらしい。夜になると危険な魔物も出るから早く探しにいった方がいいという声も聞こえる。

「……デジャヴね」

 そう言ってリナベルは俺を見た。

「よくある話なんだろ。……で、探しに行くんだよな?」

「よく分かってるじゃない」

 リナベルは意外とお節介を焼くのが好きみたいだ。見返りを求めるというよりは性分なんだろうな。


 そういう訳で、町の入口の警備員に場所を聞いて、俺たちはサンドケイブへやって来た。

「入口付近にはいないみたいね。気配を感じないわ。少し奥の方へ行ってみましょうか」


 洞窟の中はごつごつとした岩肌が見えているものの、足元は砂が多い。どこからか砂が運ばれてきてるんだろうな。

「あ、ちょっと待って」

 先に行こうとした俺を、リナベルが止めた。

「ん?どうしたんだ?」

「そこ、足跡が残ってるわ」

 見ると少し小さめの足跡が二人分、更に奥の方へと続いている。

「おー、なるほどね」

 俺たちは足跡を追って、更に奥へと進んでいった。


 幸いまだ魔物とは遭遇していない。

 これだけ広いと、一匹ぐらいはいそうなもんだけどな。

「お、何だろ、これ」

 壁の一部から、小さな透き通った結晶が生えていた。

「あら、クリスタルフラワーの芽じゃない」

 リナベルが近づいて結晶を覗き込んだ。

「砂漠なんかにある洞窟で稀に育つ結晶で、時間をかけて花のようになるのよ」

「へぇー。育ったやつを見てみたいな」

「子どもたちが見付かったら探してみましょうか」


 小さめの二人分の足跡は、まだ続いている。

 結構奥まで来てるみたいだな。

「……あの角の辺りにブーツが見えるね」

 コーディが教えてくれたが、さっぱり分からない。コーディはほんと目がいいな。

 俺たちは角の辺りに急いで行った。

「大丈夫か!? ……あ」

 何と獣人の幼子二人は寝息をたてていた。

「もう……びっくりさせるなよ……」

 見たところ、怪我もしてないようだ。

「あ、見て、ライト君。大きな子が持ってるのが、さっき言ったクリスタルフラワーよ」

「わぁ、きれいだな」

 大人の片手を広げたぐらいの大きさで、透き通った結晶が花びらのように重なってくっついている。

「……もしかして、そいつを探しに来たのかな?」

「多分ね。……起こしてみましょうか」

 リナベルは子どもたちのほっぺをペシペシと叩いた。

「う〜ん……わぁっ!」

 大きな子が起きて、リナベルにびっくりしている。小さい子はなかなか起きない。

「お母さんが心配してるわよ。一緒に帰りましょ」

「あっ、そうだった!急いで帰らなきゃ」

 切り替え早いなー。……おっと。

 俺は宙に手を突っ込んで、適当な袋を引っ張り出した。

「そのきれいなの、この中に入れとけ。落とさないようにな」

 俺は大きな子に袋を渡した。

「うん、ありがと!」

 大きな子はクリスタルフラワーを袋に入れて、肩にかけた。

「それは誰かにあげるのか?」

「うん!今日、お母さんの誕生日だから。お母さんにあげるの!」

「そっか。……なら、家に帰ってからその袋から出すんだぞ。町の中で出すと、怖い人に持っていかれちゃうからな」

「えっ!? 怖い人がいるの?……うん、わかった」

 その様子を、リナベルがニヤけながら見ていた。

「お兄ちゃん、優しいわね~」

「うるさいな……」

 もう少し俺を弄りたそうだったけど、リナベルは

目的を思い出したようだ。

「じゃ、帰りましょうか」

 リナベルが大きな子の手を引き、起きない小さい子はコーディが抱えて、俺たちは来た道を戻ることにしたのだった。


 入口付近まで戻って来た時。

 赤い影が俺たちの前を横切った。

「ライト君!」

「分かってる!」

 レッドファントムだ。実体がないから物理攻撃はほぼ無効、だけど魔法ならダメージが入る。特に光属性が有効だ。

 俺は「光線(レーザー)」の魔法陣符(マジックカード)を使用した。

 命中すると、レッドファントムは一瞬にして蒸発した。

「えっ!? 何だ、この威力」

 一撃で片が付いてしまった。

「ふふ~ん、私との修行の成果ね」

 本当にそうなんだろうな。どれだけしごかれてたんだ?俺……。


 それからサフィールの町に戻り、無事に親子を引き合わせることが出来た。外はすでに夜の帳が下りようとしていた。

 母親からはものすごく感謝されて、リナベルも嬉しそうだった。

 きっとあの子たちは母親から少し叱られるんだろうけど、あれをプレゼントしたら喜んで抱きしめられるんだろうな。


 そして俺たちは宿を探してサフィールの町を彷徨うことになったのだった。

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