第29話 次の任務
それから一週間後。
俺たちは再びノルドツァンナ城の会議室に呼ばれていた。
「休暇を終わらせてしまってすまないな」
ジェラルド団長がにやっと笑いながら、俺たちを部屋に迎え入れた。
「いや、むしろ助かった気がするから大丈夫だ」
俺の返事に、ジェラルド団長が首をかしげた。
「何かあったのか?」
「うん、ちょっと修行を……」
「なるほど」
俺の疲れた表情を見て、ジェラルド団長は深くは追求してこなかった。
任務がお休みの期間、リナベルのみっちり絞られコースが再開した。
グラナギアにやられたのが堪えたのか、状態異常系に対応する魔法の練習が多かったな。「異常解除」の魔法は魔法陣から覚えさせられたし(意外と高度な魔法だし、魔力消費量も結構多い)、追加で魔法陣符を20枚も購入したよ。これ、繰り返し使えるから1枚の値段が結構するんだ……俺の財布にまでダメージを与えるリナベルは、かなり鬼畜だと思う。
今回はコーディにも相手をしてもらったんだけど、あのアクセラバードと打ち合えるだけあって強かったな。一度避けそびれて大ケガした時はちょっと焦ったけど。
そんなこんなで少しは強くなれたんじゃないかな。
「では、早速次の任務の説明をしよう。ジェシカ、頼む」
「分かりました。皆さん、こちらへどうぞ」
前回と同じように、壁に貼ってある地図の所に移動し、ジェシカの説明を聞いた。
「砂漠のど真ん中!?」
ジェシカは大陸の西寄りにある、大きな砂漠の真ん中あたりを指し示しながら説明を続けた。
「そうなんです。高エネルギーを有する物質の探索を行っている複数のチームから、その砂漠のど真ん中から反応が出たと報告が上がってきました。悠久の翼の皆さんには、その地点に向かっていただき、高エネルギーを有する物質の回収をお願いしたいのです」
いや、砂漠のど真ん中って……。
俺が口を開きかけた時だった。
「……それ、高貴なる宝玉にやってもらえないかしら?」
リナベルが先に口を開いた。
多分、これから説明があると思うけど、これは危ないやつだ。リナベルもそれを嗅ぎ取ったんだろうな。
「それも考えなくはなかったのだがな……。君たちも察している通り、機神どもの何らかの施設の可能性もある。先に奪われたフロスティウムもしくはフレアタイトかもしれん。それを回収するという重要な任務に、虚偽の報告をするかもしれん高貴なる宝玉を派遣できるか?」
うう、正論でこられた。そうだよな、普通は信頼できる方を選ぶよな。
反論できない俺たちを見て、ジェラルド団長は話を続けた。
「かなりの危険が伴う任務だが、信頼できる君たちになら安心して任せられる。そう思ったからなのだが……どうだろうか?」
リナベルは少しの間、腕を組んで考えていたが、やがてため息を一つついた。
「仕方がないわね。私たちもあまりいい結果を残せていないから、ここらで名誉挽回しとかなきゃね」
リナベルの隣でコーディがうなずいている。
「ありがとう、助かるよ。……ではジェシカ、説明の続きを」
「分かりました。……高エネルギー物質の反応が出た砂漠のど真ん中ですが、飛空機械からの目視では何も見えなかったそうです」
「え?何も……見えない?」
「はい。もしかしたら地下にあるのかもしれません。そして、もし機神の何らかの施設であった場合、施設の破壊をお願いしたいのです」
「なるほど……なかなか大変そうだけど、善処するわ」
リナベルは観念したようにうなずいた。
「よろしくお願いします。あ、それと、ナビゲーションボードをお借りしてもいいですか?」
「ええ、どうぞ」
リナベルは宙に手を突っ込み、ナビゲーションボードを取り出すとジェシカに手渡した。
ジェシカはナビゲーションボードを少し操作すると、リナベルに返した。
「なにせ砂漠のど真ん中なので、座標を登録しました。高エネルギー反応が出た地点を地図で確認できますので、ご活用ください。それと、収納魔法の中の空間にナビゲーションボードを入れていると、通信が出来ませんので、できれば外に持っていてくださると有り難いです」
「そうなのね、分かったわ」
リナベルは再び宙に手を突っ込むと、適当なショルダーバッグを引っ張り出して、それにナビゲーションボードを入れて肩から斜めがけした。
それを見届けると、ジェシカは壁に貼ってある地図上の町を指した。
「ここ、オアシスにあるサフィールの町の近くまでは飛空機械を飛ばせますが、そこから先は徒歩になります。砂漠は昼夜の寒暖差が激しいので、気を付けてください」
俺たち三人はうなずいた。
「説明は以上になります。何か質問はありますか?」
俺は手を挙げた。
「サフィールの町だっけ?そこには通信士はいるのか?」
「はい、帰りもサフィールの町の通信士に頼めば、飛空機械を手配できます」
「そっか、良かった」
帰りは馬車とか……あー、竜車とかだったら、ちょっと大変だからなぁ。
「他にはありませんか?」
「確認なんだけど、向かう場所に機神の何らかの施設があった場合、施設の破壊と高エネルギー物質の回収、どちらを優先したらいい?」
珍しくコーディが口を開いた。
ジェシカは自分では判断できないという様子でジェラルド団長を見た。
「出来れば高エネルギー物質の回収を優先してもらいたいが、回収できそうにない場合は、施設の破壊を頼みたい。もしも命の危険があった場合は、撤退してもらって構わない。精霊竜の剣を生成できた人物とその仲間たちを失いたくはないからな」
「了解しました」
「その他は特にないか?」
俺はもう一度手を挙げた。
「もう一つだけ……、この件には関係ないんだけど、機神に連れ去られた人って見つかった?」
「残念だが、まだ報告は上がってきてないな」
「そっか……ありがとう」
それから再びジェシカの案内で、俺たちはノルドツァンナ城を後にした。




