第27話 ジェラルド団長との話
それから5日後。
俺は病院の受付前でリナベルとコーディに再会した。
「もう大丈夫なのか?」
「ええ。状態異常の後遺症もないから退院していいって言われたわ」
そこでリナベルがくすりと笑った。
「ライト君、夜に私たちの様子を見に来てたでしょ?」
「バレてた?」
「僕たちを少し確認すると、すぐにどこかに行ってたね」
「表立って面会は出来なさそうだったから……」
「リナベルと笑ってたんだ。ここ3階なのによく来るねって」
「そうそう。……ところでライト君は今までどうしてたの?」
「それなんだけど、実は……」
俺はノルドツァンナ城での出来事を二人に話した。
俺の話を聞いたリナベルは、難しい顔をしていた。
「やけに視線を感じると思ったら、そういうことだったのね。……とりあえず、詳しい話は場所を変えてからにしましょ」
俺とコーディはうなずいて、リナベルに付いて病院の外に出た。
病院から出た時、ジェラルド団長とジェシカにばったり出会った。
「今日あたり退院になるだろうと治癒術士から聞いていたが、良かった、間に合ったか。少し話がしたい、君たちの宿まで一緒にいいか?」
俺たち三人は顔を見合わせた。特に断る理由もないので、リナベルが口を開いた。
「いいわよ」
宿に着くと、俺たちはエントランスホール脇のテーブルとソファーに陣取った。
今回は少し込み入った話になるとかで、ジェラルド団長が遮音障壁の術を展開し、音が外に漏れないようにした。
「それとライト、君にこれを」
ジェラルド団長は青銀色の一対のイヤーカフを俺にくれた。よく見ると、細かく魔法文字が刻まれている。
「これ……魔法銀か?」
「そうだ。認識阻害の術式が彫られている。身につけると他人からは普通の住人にしか見えなくなる」
ジェラルド団長はそこでため息をついた。
「君が少し有名になりすぎてしまってな。……身に覚えはないか?」
それはもう……。
「ええと……、他の冒険者から声をかけられるのはまだ良かったんだけど、貴族の御使いみたいな人に、主に仕える気はないかとか聞かれたり、酷い時は連れ去られそうになったな……。お陰でリナベルとコーディが回復するまで、逃げ回る日々を送ってたよ」
俺は一気に喋ると、遠い目をした。
「苦労をかけたな……。だが、このアイテムで全て解決するだろう。早速つけておけ、つける前に君を認識している者には効果はないから」
「分かった、ありがとう」
俺は両耳にイヤーカフをはめた。
「さて、では本題に入るか。まずは……そうだな、クラウストルムへ行く際の、飛空機械襲撃の犯人がほぼ確定した。Aランクパーティ“高貴なる宝玉”リーダーのフェルド・アヴェルスタールだ。捜索魔法の使い手による気配の探索で、機体に残っている破壊の跡と、フェルドの持つ銃が一致したとのことだ。ただ……」
ジェラルド団長は一瞬思案した後、口を開いた。
「フェルドは貴族だ。ペナルティを課すにしても、素直に聞き入れるとは思えん」
「そりゃあの感じだからな。……だけど、こっちも運が悪けりゃ死んでたかもしれないんだぞ!?」
結果的に不時着で済んだからよかったけど。それとも、それを狙ってやったんだったら逆にびっくりだけどな。
「そこでだ。フェルドたちには優先的に危険が伴う任務についてもらうことになった」
「あー、なるほど……」
あっちにも俺たちと同じ目に遭ってもらうって訳ね。まぁ、ちょっとモヤっとするけど、ペークシスの炭鉱の件もこれで相殺ってとこかな。
「……団長、この件は公表するのかしら?」
リナベルは違うところが気になったみたいだ。
「すまないが、公表はしないことになった。というか、出来ないな。外聞が悪い上に、味方の士気にかかわる」
「そうよね」
リナベルは答えが分かっていたように、ため息をついた。
「公表しない代わりに、彼らにも最低限の情報しか提供しない。現場に行って汗を流してもらおうじゃないか」
ちょっと黒いオーラが出てる気がするから、ジェラルド団長もフェルドたちに思うところがあるようだ。
「それと、フェルド絡みでもう一件。こちらは確認なんだが、フレアタイトは回収失敗で間違いないか?」
「ええ、恐らく機神の手に渡ってると思うわ」
「そうか……。いや、この件もフェルドからの報告で、君たちに邪魔されたとあったが」
「そんな訳ないだろ!? グラナギアにやられそうになってたから助けたのに!」
ジェラルド団長は、憤慨する俺の様子を見てふふっと笑った。
「いや失礼。君が分かりやすいから助かるな。その時の状況を詳しく教えてもらえるか?」
俺はうなずいて、ペークシスの炭鉱での出来事をジェラルド団長に話した。
「そうか……。で、その時遭遇した機神に後をつけられた、と」
「うん、そうだと思う」
「分かった、ありがとう」
ジェラルド団長はジェシカに目配せした。ジェシカは団長にうなずき返し、書類を手渡した。
「……フェルド絡みの件は以上だ。あとはノルドツァンナ王家だが」
ジェラルド団長は、ジェシカから受け取った書類を俺にくれた。
「詳しくはそこに書いてある通りだ」
俺が書類に目を落とすと、横からリナベルが覗いてきた。
「まぁ要約すると、機神との戦いが終わるまでは、君に手を出さないとのことだ」
「よかった……」
俺はほっと胸をなで下ろした。
「ガーディアンフォースとしても、最大戦力になり得る人物を引き抜かれては困るからな。ずいぶん粘ったよ。ただ、戦いが終わったあとは……何とか頑張ってくれ」
「そんなぁ……」
がっくりと項垂れた俺を見て、リナベルとコーディ、それにジェシカも笑っていた。
「ところで……、今ここで精霊竜の剣を生成できるか?」
「……いや、そもそもどうやったのかも分からないんだ」
「そうか……まぁ、そういうものかもしれないな」
そう言ってジェラルド団長は立ち上がった。
「俺からの話は以上だ。……君たちはまだゆっくりするといい、しばらくは任務を入れないでおこう」
「お心遣い、感謝します」
リナベルが頭を下げた。
ジェラルド団長はうなずくと、遮音障壁を解除した。
「では、また」
俺たちはそこでジェラルド団長とジェシカを見送ったあと、部屋へ戻ることにした。




