第25話 機神の追撃
それはノルドツァンナに帰還してすぐのことだった。
俺たちは飛空機械から降りて、テレポーターのある建物へと向かっていたのだが……。
「お帰りなさいませ、皆様。お待ちしていましたよ」
なんと、そこにいたのはペークシスの町の炭鉱で遭遇した機神、グラナギアだった。
しかも殺害した二人のテレポーターの見張りの頭を左右の手で掴み、こちらに見せびらかしている。
「貴様っ……!」
一瞬で頭に血が上ったらしいフェルドが銃撃したが、グラナギアは手に持った二人の見張りを盾にして防いだ。
「くっ……!」
フェルドは一気に頭が冷えたようだった。
「ヒトの雄の鳴き声は汚くていけない。やはり聞くなら雌の鳴き声だな」
そう言ってグラナギアは見張り二人の遺体をぽいっと投げ捨てた。
「……ちょうど一匹雌がいるじゃないか。……と思ったら、キサマ、リナベルか!」
「他人の空似じゃないかしら?」
「そのとぼけた返しがキサマであることの証拠だ!」
グラナギアの持っている杖から、魔力のようなもので出来た鎌状の刃が生えた。
「……“高貴なる宝玉”の三人に頼みたいことがあるわ。私たちが奴の足止めをするから応援を呼んできて欲しいの。……馬鹿な真似はしないことね、私たちがやられたら、次はノルドツァンナの城下町に被害が出るわよ」
「ちっ……、了解した」
グラナギアがリナベルに突っ込んできた隙をついて、“高貴なる宝玉”の三人はテレポーターのある建物に入り、応援を呼びにいった。
「今度は復活できないように、バラバラにしてあげるわ!」
「やれるものならな!」
リナベルとグラナギアは激しく打ち合っている。
いつもは素手なのに、リナベルは今回双剣を使用している。戦っているのに、まるで剣舞を舞っているように美しい。
あまりにも激しく打ち合っているせいで、コーディも手出し出来ないようだ。遠くから隙をうかがっている。
しばらくそうして打ち合っていたが、リナベルの動きが少し鈍くなってきたようで、グラナギアの動きに対応できなくなってきていた。
「……おかしいな」
コーディも何か違和感を感じたようだ。
「しまっ……!」
そしてついに一撃を受けてしまい、俺たちのいる所とは反対の方へ吹き飛ばされていった。屋内じゃないから、勢いが止まるまではそのままだ。
すぐに追撃しようとしたグラナギアをコーディが牽制する。
「ベヒモス!俺をリナベルの所に連れて行ってくれ!」
〝分かった〟
ベヒモスが姿を現し、俺を咥えてリナベルの所へ運んでいく。
グラナギアはコーディが抑えてくれていた。
「リナベル!大丈夫か!?」
急いでリナベルの傷の具合をみる。
ベヒモスはコーディに加勢しにいった。
「……油断した……、状態異常をもらってるわ……」
「まさか、動きが鈍くなってたのも……」
「ええ。あいつ……自分の周りに状態異常効果のある粒子を撒きながら戦ってたのね……。それを吸い込んでしまったから……麻痺とその他……詠唱阻害もあるわね。さっきから呪文が出てこないわ。ライト君“異常解除”の魔法陣符はある?」
「いや、持ってないな……」
その時、コーディがリナベルと俺の名を鋭く呼んだ。
「ううっ!!」
「がっ……!!」
何が起こったか分からなかったが、身体に痛みが走った。
見ると、グラナギアの杖から生えていた鎌状の刃がリナベルに2本、俺に1本刺さっている。
「なん……」
言葉が途中で途切れ、俺はその場に倒れた。まずい、状態異常だ。この刃にも仕込んでいたのか……!
俺は刺さった刃を引き抜き「回復」の魔法陣符を使用した。状態異常は解除できないが、ダメージだけでも回復したい。
魔法陣符のいい所は、魔力を流すだけで魔法を使用できる所だ。魔力阻害……なんて状態異常があるのか分からないが、そんなことにでもならない限り使える。
麻痺を喰らってるからか、動作が鈍くなっているが、リナベルにも同じように刃を抜いてから「回復」を使用した。
「リナベル、大丈夫か?」
あれ?リナベルと視線が合わない。
「今度は暗闇ね……。グラナギアの奴、許さないわよ……」
「ダメだ、リナベル、じっとしてろ!」
立ち上がろうとしたリナベルを、俺はゆっくりと制した。
その時、大きな音が聞こえた。
見ると、グラナギアの左腕が斬り飛ばされていた。
だが、コーディも刃を6本喰らっている。
倒れかけたところをグラナギアに蹴られ、こちらに吹き飛ばされてきた。
「コーディ!」
息はある。だが状態異常を喰らっているのか、ぴくりとも動かない。
「……おのれ、このワタシの腕を斬るとは……万死に値する!」
グラナギアは無数の鎌状の刃を飛ばしてきた。
ベヒモスが爪で弾き飛ばしているが、少し喰らっているようだ。
このままじゃ、ベヒモスまでやられてしまう。
力が……欲しい。
ドクン。
この理不尽な状況を覆す力が。
ドクン。
〝ライト……?〟
ベヒモスが一瞬、俺を振り返った。
俺に刃を……奴に届く刃をこの手に……。
ドクン。
〝待て!お前にはまだ耐えられん……!〟
みんなを守りたい、殺らせはしない……!!
そして光が溢れた。
光が収まったあと、俺の手には黒紫の剣があった。感覚で分かる、これはベヒモスだ。これなら奴に届く……!
俺はそのまま剣を振るった。
黒い斬撃がグラナギアに吸い込まれていく。
「ガッ……!!」
ヒットした瞬間、辺りに歓声が響いた。
どうやら応援が来たようだ。
「バ……バカな……、少し後ろに飛ばなければコアが損傷するところだった……」
グラナギアの杖は斬られ、胸部のアーマーが横にザックリと裂かれていた。
「あの小僧は危険だ……、だがここは分が悪い、引かせてもらいましょう……」
グラナギアは何か喋っていたようだったが、姿をくらました。
「逃げた……な……」
それを見届けたあと、俺もぶっ倒れた。




