第24話 炭鉱内部の探索
そしてしばらく経ってから、俺たちも炭鉱へと足を踏み入れた。
「……いやに静かね……。今日は休養日だったかしら?」
「そうかもしれないね」
誰もいない坑道を見て、コーディが答えた。
「事前に炭鉱の案内図をもらってきたけど、どこを探していいか分からないわ。誰かいれば良かったんだけど……」
「よし、ヨルムンガンドに聞いてみよう」
「はい?」
俺は首から下げている透き通った水色の牙に手を当てて念じた。
「ヨルムンガンド、教えて欲しい。この辺りにフレアタイト……すごいエネルギーを持った鉱石はないか?」
少し経ってから、ヨルムンガンドから答えが返ってきた。
〝……あるぞ。その者が持っている地図で言うと、第5坑道の最下層だ〟
「ほんとか!分かった、ありがとう!」
〝礼には及ばん〟
「……それを聞いちゃうんだ……と思ったけど、答えてくれるのね、意外だわ……」
リナベルがぶつぶつと呟いている。
「それじゃ、行きましょうか、第5坑道の最下層を目指して」
「おう」
「了解」
しばらくは何事もなく薄暗い坑道を進んでいたが、下の層に行くにつれてトラブルが増えていく。石炭の魔物の湧きスポットだったり、いきなりトロッコが動き出してぶつかってきたり、地面が崩れたり穴が開いたり。
「ゴブリンでも住んでるのかな?」
「いや、気配が無いのにこれだけ続くのはさすがにおかしいだろ!?」
少し広い場所に出て、小休憩している時だった。
「!」
俺とコーディが立っていた位置の真上から杭が5本降ってきたが、俺たちは難なく躱した。
「……これはもう……あいつらしか思い浮かばねぇんだけど……」
「きっとライト君の想像は正しいわ……」
珍しくリナベルが険しい顔をして、砕けた杭の破片を摘んでいた。
「もうかなり薄くなってて誰のか分からないけど、魔力の跡が残ってる」
やっぱりか。
魔力が残ってるってことは、仕掛けた奴がいるってことで。俺たちの前に坑道に入ったのは、あいつらしかいない。
何でそんな分かりやすいことするかなー。
……あのお貴族様め、後で覚えてろよ。
そろそろ目的の場所という所で突然、戦闘音が聞こえてきた。
「どうやら先客がいたみたいね……」
リナベルが目配せして、俺たちは状況を把握しようと現場にそっと近づいた。
少し広くなっている場所の奥に、朱色の大きな結晶が埋もれている。あれがフレアタイトだろう。
その手前で“高貴なる宝玉”の三人と一体の機神が交戦していた。
機神は人型で、騎士のつける甲冑のような風貌だった。マントのような布を付けており、手には杖のような棒状の物を持っている。
すでに決着はつきつつあった。フェルド以外の二人が地に伏し、フェルドも満身創痍だ。
「グラナギア……。まさか復活してたなんて……」
「知ってる奴なのか?」
「ええ。地のギアスレギアの3の杖、グラナギアよ。性格が最悪だったわ。……それより、どうする?お貴族様を助ける?」
そろそろフェルドも限界だろう。
「仕方ねぇな。見殺しには出来ねぇ、悔しいけどフレアタイトは諦める」
「分かったわ。……“脱出”を使うから、彼らの回収をお願い」
俺とコーディはうなずき、グラナギアの隙をついて三人をリナベルの所へ連れてきた。
「OK、いくわよ“脱出”!」
その場から俺たちの姿が掻き消えた。
リナベルの“脱出”の魔法で炭鉱の入口へ戻って来た俺たちは、気を失った三人の傷の手当てをしたあと、ひとまず宿屋に預け、町の通信士に飛空機械の手配を依頼しに行った。明日の朝にはペークシスの町に到着するらしい。
「……あいつ、追いかけてこないよな?」
「フレアタイトを手に入れたんだから、私たちを追いかけるなんて無意味なことはしない……と思いたいわ」
リナベルのその微妙な言い回しに、言外に追いかけてくるかもしれないと言われたようで、俺は心配になったのだった。
「さ、私たちも宿で休みましょ。何だか疲れたわ」
「そうだな」
俺たちは宿で一泊し、翌日やってきた飛空機械で“高貴なる宝玉”の三人と一緒にノルドツァンナへと帰還したのだった。




