第21話 新たな任務
そして次の日。
俺たちはノルドツァンナの城下町にある、商業区へ買い物に来ていた。
リナベルはコーディと一緒に服を探しに、俺は回復薬類の購入と、魔法陣符に魔法陣を描いてもらいに、別々に行動することになった。待ち合わせは広場の噴水前だ。
俺はさっさと用事を済ませて、噴水前に戻って来ていた。リナベルとコーディは見当たらない。空いているベンチに腰掛けて二人を待つことにした。
戻って来る途中に買った串焼きを頬張りながら、広場の様子を眺める。
広場を行き交う人々、噴水の周りで追いかけっこしている子どもたち、芸を披露している大道芸人。時折歓声が上がっているところをみると、なかなか好評のようだ。
ここだけ見ると、機神の脅威なんて無いように思える。本当は全部夢で、起きたら平和でした……っていうのが最高なんだけど、現実には機神はいて、今もどこかでこの世界に生けるものの命を奪い続けている。
精霊竜の力もまだ回復してないから、荒野は広がるばかりだ。
このままだと、本当に世界の終わりが来るかもしれない。
〝お前にしては小難しいことを考えているな〟
突然聞こえた声に驚いたが、同時にほっとした。
「ベヒモス!もう大丈夫なのか!?」
〝ああ、おかげさまでな〟
「良かった……」
俺は胸を撫で下ろした。
〝心配をかけたな。……しかし、アクセラバードがあそこまで強かったとは……。さすがは戦闘狂と呼ばれるだけはあるな〟
「戦闘狂?……ああ、確かに」
俺たちと戦っている時……なんというか楽しそうだったもんな。
〝お前も厄介な奴に目を付けられたな〟
「うう……、リナベルはしつこいって言ってたよ。あいつ……最初は俺を殺す気満々だったのに、礼をしたいから一緒に来いだなんて……どんだけ自分勝手なんだよ。振り回されるこっちの身にもなってみろってんだ。俺は絶対あいつらの仲間になんてならないからな」
俺はぐっと拳を握りしめた。
「強くならなきゃな……。あー、どっかに手っ取り早く強くなれる方法が転がってないかな……」
〝そんな方法があるなら、この世界がこれほど蹂躙されることもなかったろう。案外……アクセラバードがお前を鍛えてくれるかもしれんぞ?我には容赦なかったが、お前は手加減されていた様だしな〟
「それは絶対に命がいくつあっても足りないコースだろ!? リナベルのみっちり絞られコースの方が百万倍マシだ!」
ベヒモスは笑っていた。
〝我がお前の刃となれれば良いのだが……まだお前の精神力が圧倒的に足りないからな……〟
「? それはどういう……」
「おーい!待ったー?」
その時、リナベルの声が聞こえた。
見ると、噴水の横を通ってこちらへ歩いて来ている。
〝この話はまたの機会にしよう〟
「分かった」
仕方なく俺はうなずいた。
ほどなくして、リナベルとコーディが俺の前までやってきた。
「ジャーン!どう?いい服が見付かったと思うんだけど」
「お、今度はパンツスタイルにしたんだな」
俺の師匠ほどじゃないけど、リナベルも背が高い方だからいい感じだ。
「うん、似合ってるよ」
「ありがと~」
リナベルはにっこりと笑った。
「それじゃ、宿に戻りましょうか。ん?美味しそうなもの持ってるわね」
リナベルは俺の持ってる串焼きに目を留めた。
「そうね、ちょっと食べ歩きするのも悪くないわね」
「行くならあっちがお勧めだ。美味そうなのがいっぱいあったぞ」
俺たちが歩き出そうとした時。
〝悠久の翼のメンバー、聞こえるか?ガーディアンフォースのジェラルドだ〟
ジェラルド団長の声が聞こえてきた。
「ん?どこから?」
コーディがナビゲーションボードを袋から取り出した。
「これだと思う。……ジェラルド団長、聞こえています」
コーディがナビゲーションボードに向かって話しかけた。
〝良かった。……早速だが、次の任務が決定したので説明したい。すまないが、今から王城まで来てもらえるか?〟
コーディはリナベルを見た。
リナベルはコーディにうなずき返した。
「了解しました。王城のどちらへ向かえば?」
〝城門に案内人を待機させよう、その者と一緒に来てくれ。会議室はちょっと遠いからな〟
「分かりました」
〝それでは〟
それからジェラルド団長の声が聞こえなくなった。
「へえ、面白いな。どんな仕組みなんだろ?」
「私も専門じゃないから分からないわね。……じゃ、早速行きましょうか」
「分かった」
そうして俺たちは王城に向かって歩き出した。




