第19話 ノルドツァンナにて
ノルドツァンナへ到着後、あのだだっ広い飛空機械の駐機場で、リナベルが損傷した飛空機械を亜空間から取り出した。
皆一様にびっくりしていたが、すぐに立ち直ったジェラルド団長がリナベルに尋ねた。
「それが件の機体か」
「ええ。何か分かるかしら?」
機体の横には一緒に戻って来た操縦士もいた。損傷した部分を見て顔を曇らせている。
「迅速な調査を約束しよう。……これはあってはならないことだ」
団長は厳しい顔で言った。
「結果が分かり次第伝えよう。今回は突然のことで、君たちも疲れたろう、宿でゆっくりするといい。次の任務はナビゲーションボードで伝えよう」
ナビゲーションボードで伝える?どういうことだろう?
「団長、私たちこれの詳しい使い方を習ってないんだけど」
同じく疑問を抱いたとみられるリナベルも、すかさず団長に申し上げていた。
「そうか、こちらに戻って来た冒険者たちには伝えていたのだが、君たちはまだだったな」
団長は隣にいた文官ぽい人に合図した。
「すまないがナビゲーションボードの詳しい使用方法と宿への案内を頼めるか」
「分かりました」
「俺はノルドツァンナ王の所へ報告に行こう。……それではこれで失礼する」
俺たちはそこで団長と別れ、文官ぽい人と一緒に宿へとやってきた。
「え?これ宿なのか?え?」
俺は思わず二度見してしまった。だってお貴族様の屋敷みたいに立派な建物だったから。
「はい。リュベルナー伯爵家が経営する宿を、我々ガーディアンフォースに提供頂いております」
何でも、近頃リュベルナー伯爵お抱えの商隊がよく機神に襲われているらしい。あまりにも頻繁なんで、その腹いせ?というか何というかでガーディアンフォースに良くしてくれるんだってさ。たぶん多少の融通を期待してのこともあるんじゃないかな。
俺たちは文官ぽい人について、宿の中に入っていった。
受付でペンダントを提示するよう求められ、三人でペンダントを受付の人に見せると、部屋の鍵を渡され奥への立ち入りを許された。
「こちらで説明しましょうか」
エントランスホールの脇にテーブルとソファーが置かれているスペースがある。
俺たち三人と文官ぽい人は向かい合って座った。
「では、早速ですが」
文官ぽい人はリナベルからナビゲーションボードを受け取ると、いろいろ説明してくれた。
まぁ要約すると……起動には微量に魔力を消費することと、このボードが置かれている現在地を地図上で示してくれること、一定範囲内なら離れている人と会話できること、目的地を教えてくれること……が主な機能らしい。詳しい操作の方法も教えてくれた。
「分かったわ、ありがとう」
「どういたしまして。また何かお困りごとがありましたら、お声がけください」
そこで文官ぽい人は明らかにほっとした顔をした。
「いや〜、皆さんが理解のある方々で良かった」
「? 何かあったの?」
「ええ、まあ……。これの操作方法を受け付けない冒険者の方々が一定数おりまして。いろいろと悶着がありました。これを壊されそうになった時が一番ヒヤヒヤしましたね」
「繊細そうだもんね」
リナベルはナビゲーションボードをひっくり返したりして眺めている。
「そうなんですよ。一応かなりの衝撃にも耐えられるように作ってあるんですが、さすがに限度がありますからね」
「え? それ、あんたが作ったのか?」
「ええと、私ひとりではなくて、ノルドツァンナ王城にある科学班のみんなで作りました」
「科学班?」
「そうです。科学という学問……あぁすみません、語り出すと長くなるので割愛しますが、研究を行って生活に役立つ物を作り出す所だと思っていただければ」
「へえぇ〜」
「興味がありましたら王城までお越しください。あ、申し遅れました、私、ジェシカといいます。よろしくお願いします」
文官ぽい人、もといジェシカはペコリとお辞儀をした。
「俺はライト、よろしくな。んで、そっちが……」
「リナベルよ、よろしくね」
「コーディだ、よろしく」
お互い紹介が終わったところで、この場は解散となった。
ジェシカに直接言ったら怒られそうだけど、男にしては声が高いなと思ってたら、女だったのな。髪もショートだったから分からなかったぜ。




