表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある冒険者たちが世界を救うまで  作者: 如月つばさ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/24

第16話 最悪な再会

 不時着した場所から30分ぐらい歩いただろうか。

「あれがトランキルね。まだ戦ってるみたいね……!行くわよ!」

「了解」

 リナベルとコーディが駆けだしていった。

「あんたはそこの岩かげに隠れてろ。もちろんやばいやつがきたら逃げろよ!」

「わ、わかりました!」

 飛空機械の操縦士が岩陰に隠れたのを確認し、俺も二人を追いかけた。


「ベヒモス、手伝ってもらえるか?」

〝いいだろう〟

 俺の隣に黒紫の竜が現れた。俺を追いこし町へ突っ込んでいく。

 俺は慎重に町へと足を踏み入れた。

 すでに亡くなっている人も少なからずいたが、なかにはケガで済んでる人もいて、「回復(ヒール)」の魔法陣符(マジックカード)で治療しながら進んでいく。

 その時、物陰から小さな何かが俺に襲いかかってきたが、鞘に入れたままの剣で攻撃を防いだ。

「狼型の機神か」

 デザートウルフより少し小さめで金属のボディ、間違いなく機神の一種だ。

 俺は空間から「(サンダー)」の魔法陣符(マジックカード)を取り出し、そのまま使用した。

 雷に打たれた狼型の機神は動きを止め、バタリと倒れた。

「倒した……?」

 しばらく待ってみたが、再び動く気配はない。

「よっしゃ、こいつらなら俺でも何とかできそうだな」

 収納魔法(インベントリ)を覚えたことで、魔法陣符(マジックカード)の所持枚数に制限がなくなったのが嬉しい。カードホルダーがお役御免になっちゃったな。あと、探さなくてよくなったのもナイスだ。おかげでストレスなく使用できるようになった。

「こりゃリナベルに足を向けて寝られないな」


 俺はその後も町の中を回り、住民の治療と避難の手伝い、そして小型の機神の駆除をしていった。

 けれど、まだそこかしこで戦闘音が響いている。

「けっこうな数じゃねーか。……この町に何かあるのか?」

 俺は音のする方へ近づいていった。


 しばらく行くと、広場が見えてきた。馬に乗った騎士がこちらに背を向けている。

 機神と交戦中か?

 助けようと動いたその瞬間 。


 ザンッ!!!


 文字どおり、一刀両断だった。

 馬に乗った騎士だったものが、赤いものを吹き出しながら両側に分かれていく。

 それだけでも充分恐怖だったが、その先に見えたものに背筋が凍りついた。

 その機神は、何かを隣にいた機神に手渡していた。

「アクセラバード……」

 俺は無意識に呟いていた。


 それが聞こえた訳でもないだろうが、向こうも俺に気付いたらしい。

「そなたは……覚えているぞ、ライトよ。こんな所で何をしている?」

「それはこっちのセリフだ!」

 俺は剣を鞘から抜いた。怖いけどやるしかない。

「まぁ待て。まずはお互い無事に生還できたことを喜ぼうではないか。我もあの後中々大変な目にあったが、そなたの傷も気がかりだった」

 お前がやったんだろうが!めちゃくちゃ痛かったしトラウマになったんだぞ!

「すでに死んでいるのではないかと思ったが、そなたは生きていた」

 アクセラバードは俺の方に数歩進み出た。

「あの時、そなたに礼をすると言ったな。忘れてはおらん、今こそ果たそう。そなたを天の座へ迎え入れよう」

 アクセラバードはその大きな手を俺にさし出した。

「我と共に来るがよい」

 機神の仲間になれってことか!? 分からねえ!

「礼って言うんなら、持っていった宝玉を返しやがれ!」

「それはできぬ相談だ。あれはすでに我が主へ捧げられた。いくらそなたの頼みでも返すことはできぬ」

「なら……その主のとこに案内したくなるように、ぶっとばしてやる!!」

 俺は剣を正眼にかまえた。

「ハハハハハッ……!! 実に愉快だ!それこそ我等の行動原理!意に沿わぬ者は力ずくで従える!」

 アクセラバードも獲物を構えた。

「力こそ全て!やってみるがよい!!」

 俺は剣で斬りかかるとみせて、「(サンダー)」の魔法陣符(マジックカード)を使用した。

 海の魔物と同じく、こいつらには「(サンダー)」の魔法陣符(マジックカード)がよく効くみたいだ。

 アクセラバードに会うまでに遭遇したやつらは、他の魔法陣符(マジックカード)の効きは今一つだったが、「(サンダー)」は良く効いた。

 そして魔力を流し、形態変化させる。

 幾筋もの雷がアクセラバードに襲いかかった。

「ほう!やるではないか」

 だが、そのいずれもアクセラバードを捉えることはできなかった。

 それどころか、あっという間に俺に肉薄してきた。あいつの斧をまともに受けると吹き飛ばされるのは経験済みだ。できるかぎり躱してダメな時は受け流す。

「いいぞ、この短期間で鍛錬を積んだな」

 なぜか奴は上機嫌だ。連続で斧を叩きこんでくる。

 こっちも反撃したいところだが、隙が見つからない。船の上でのリナベルのみっちり絞られコースは、魔力の使い方だけじゃなくて物理攻撃の方もやったから、最初に奴と戦った時よりは、幾分マシだと感じてはいるが。

「どうした、反撃しないのか!?」

 焦ってはダメだ、奴の思うツボだ。

 俺は叩きこまれる斧を避け、受け流しながらタイミングをはかる。

 その時、一瞬テンポがずれた。ここだ!

 俺は奴の足元をすれ違いざまに斬りつけた。

 すぐに攻撃がくるハズだ、俺は奴と距離をとった。

 だが、攻撃はなかなかこなかった。見ると奴は肩を震わせている。

「ハハハ……!やるではないか、ライトよ!この我に刃を届かせた者は久方ぶりだ。興が乗ってきたぞ、こちらも少し本気でいこうか」

 笑ってたのか!しかもやっぱり余裕だったのか!


 その時だった。

 突如現れた黒い物体にアクセラバードが吹き飛ばされたのだ。

 一体何が?と思ったら、その黒い物体は俺の側にやってきた。

「ベヒモス……!」

〝すまない、遅くなった。思いのほかザコが多くてな〟

 俺は思わずベヒモスに飛びついた。

「助かったよ、やばいところだったんだ」


 吹き飛ばされた先の建物の瓦礫の中から、アクセラバードが立ち上がり、こちらを睨んでいた。

「精霊竜か。すでに魅入られていたか……」

 アクセラバードの呟きはよく聞こえなかったが、雰囲気が一変した。

「いいだろう。その呪縛、我が断ち切ってやる」

 言うなり斬撃を飛ばしてきた。

「危ねえ……!」

 俺は咄嗟に避けたが、奴はベヒモスに向かっていった。

 奴の斧が唸りを上げるが、ベヒモスはうまく躱していく。

 その合間にベヒモスは黒い火球を見舞っているが、アクセラバードは全くダメージを受けていない。それどころか除々にベヒモスを圧倒しはじめた。

 助けたいが、恐らく俺の攻撃は通らない。やつに刃を届かせて初めて分かった。

 装甲が厚すぎる。斬れる感覚が全くなかったのだ。

「どうすりゃいい……?」

 俺は周りを見回した。少し気が引けるが、いい

案を思いついた。

「器物損壊とかで訴えられそうだけど、やるしかない」

 ベヒモスと奴の距離が離れた。今だ!

 俺は「(ロック)」の魔法陣符(マジックカード)を使用、やつの背後の建物にぶつけ破壊した。

 大量の瓦礫がアクセラバードに襲いかかる。

「!?」

 予期せぬ事態に奴の足が止まった。

 瓦礫に埋もれるアクセラバードにベヒモスが追い討ちをかける。

 特大の黒い雷が降り注いだ。

「どうだ……!?」

 土埃と焦げる臭いが漂う中、アクセラバードの姿を探す。


〝ライト!後ろだ!〟

 ベヒモスの声に後ろを振り返るが、時すでに遅し。

「少し黙っていてもらおう」

 アクセラバードの回し蹴りがヒットし、俺は近くの建物の壁に叩きつけられた。

「がはっ……!!」

 背中を強打し、咄嗟に防いだ両腕はひどい有り様になった。

 動かそうとしたが無理だった。回復薬(ポーション)魔法陣符(マジックカード)が使えない……!

 徐々に痛みに襲われ、意識を手放しそうになる中、俺は必死に奴を睨んだ。

「良い眼だ。我を前にして中々できる眼ではない」

 奴は俺を一瞥し、戦闘不能と見做したようだ。

 すぐにベヒモスに向かっていった。


〝おのれ……!〟

 ベヒモスは爪を繰り出すが、アクセラバードは全て弾き返した。

「何故だろうな……、ライトと戦うのは楽しいが、そなたと戦うのはつまらぬ。そなたの方がライトよりかなり強いのだがな……。やはり伸びしろの差か」

 アクセラバードは何か呟きながら斧を構えた。

 斧に尋常じゃない力が集まっているような気がする。

 ベヒモスもそれに気付き、回避しようとした時、それは放たれた。

「我が道征きを邪魔するものに等しき破壊を与えん!エクスデストラクション!」

 光がその場の全てを飲み込んだ。

 一瞬の静寂の後、そこには何もない荒野が広がっていた。


「ベヒモス……!」

 姿が見当たらない。やられたのか……!?

〝心配するな、少しの間姿を現せないが無事だ〟

「良かった……」

 俺はほっと胸を撫で下ろしかけたが、ピンチは続いている。

「次はそなたの番だ、ライトよ」

 アクセラバードが振り返り、俺の方へ歩いて来る。

 やばい、このままじゃ……!

「……と思ったが」

 アクセラバードは指笛のような音を出した。

 すると、どこからか大きな鳥型の機神が現れた。

「連れて行け」

 その鉤爪が俺を掴もうとした瞬間。


 ドンッ!と音とともに鳥型の魔神が地に落ちた。

「ライト君、大丈夫!? 回復(ヒール)

 俺の両腕の傷があっという間に治った。

「リナベル、ありがとう!コーディも!」

 コーディが鳥型の機神を撃ち落としてくれたのだ。

 その様子をアクセラバードは興味深そうに見ていた。

「そなた、その武器は……」

 アクセラバードはコーディの銃を食い入るように見つめた。

「ふふ、そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。ご想像におまかせするよ」

 コーディは挑発するように微笑んだ。

「おもしろい!見極めてやろう!」

 アクセラバードはコーディに突っ込んでいった。


「すごい音がしたから何事かと思ったけど」

 リナベルは辺りを見回した。町の一部がまるごと無くなっているのに驚いているようだ。

「ほんとによく死ななかったわね」

「ああ。……あいつ、俺にはかなり手加減してるみたいだから」

 そうだ、さっきの回し蹴りを喰らった時だって、ちょっと本気なら俺を絶命させることだってできたハズだ。

「どういうこと?」

「う〜ん、よくわからねえけど、俺に礼をしたいらしいぜ?さっきも一緒に来いって言われたし」

「礼?」

「ほら、神殿にあった宝玉だよ。俺がいたから持って行けたってやつ」

「ああ!……あー、お気の毒に。アクセラバードはしつこいので有名だったから。気の済むまで絡まれるわよ」

 リナベルは可哀想なものを見るような目で俺を見た。

「やめてくれ!俺は機神の仲間になんてなりたくないのに!」

「え? 一緒に来いってそういう意味?……それは聞き捨てならないわね。ライト君の血は私のものよ」

「え!?」

「あ、ゴメン、今のなし!私もライト君が機神の仲間になるのは嫌だからね!」

「ええー……」

 もう聞いちゃったし。俺はジト目でリナベルを見た。

「と、とりあえず住民の避難は完了してるから、頃合を見て私たちも離脱しましょう。今の私たちの手には負えないわ」

 リナベルはもう一度破壊の跡を見た。

「さんせーだ。だけどどうやって……」


 その時、俺たちの方へコーディが吹き飛ばされてきた。

 リナベルがキャッチする。

「助かったよ。……やっぱり強いな」

 コーディはこちらへ向かってくるアクセラバードを見据えた。

「ハハハ、いいぞ!そなたも中々使えるな。あとはそこな吸血鬼(ヴァンパイア)か。そなたの顔は見覚えがないな」

「そうでしょうね。ギアスレギアにはお世話になったけど」

「地の座の主か。なるほど、そなたも楽しめそうだな。……いいだろう、まとめて相手をしてやろう!」


 そこからアクセラバードはまたギアを上げた様だった。

 コーディの銃撃の合間にリナベルに接近、数回打ち合った後、リナベルが吹き飛ばされ建物の壁に激突したが、リナベルは無傷だった。

 いや、おかしいだろ!さっきの飛んできたコーディをキャッチしたのといい、リナベルの力はどうなってんだ!? それとも魔法の技術なのか!?

 アクセラバードはそれを確認もせずに、今度はコーディに向かっていった。

 コーディは背に負っていた大剣をいつの間にか抜いていて、アクセラバードを迎え撃った。

 俺やリナベルと違ってコーディは吹き飛ばされずに奴の斧を受け止めている。

「ほう!」

 アクセラバードは少し驚いたようだ。

「やはり、そなた……」

 コーディは皆まで言わせず、大剣を薙ぎ払った。

 そこから連続で追撃を放ち、アクセラバードに息をつく暇を与えない。

 コーディも大概おかしい。あんな重そうな大剣をまるで片手剣のように振り回している。ほんとSランクの奴らってどうなってんだ?

 だがアクセラバードはちっとも追い詰められた雰囲気じゃない。むしろ楽しんでるんじゃないか?

 やはりというか、コーディを押し返しはじめた。あのおかしなSランク二人の更に上を行くっていうのか?嘘だろ!?

 そして遂にコーディを吹き飛ばし、建物に激突させた。

 追撃するかと思いきや、奴は頭の側面に手を当てていた。

「……ちっ、久し振りに楽しんでいたのだがな。仕方あるまい」

 奴は何事か呟いた。

 コーディが瓦礫の中から出てきた時、斧を振りかぶった。

「突然で悪いが、所用にて失礼する。そなた達はまだ強くなれるだろう、これを生き延び、もっと我を楽しませてみせよ」

 言うなり斧を地面に叩きつけた。

 そこから円形に衝撃波が発生し、アクセラバードの姿が消えた。

「なっ……!」

「ライト君、危ない……!」

 リナベルが俺を建物の陰に押し込んだ。

 だが、衝撃波は容赦なく建物を削り取っていく。

「うそ……!」

「!!」

 リナベルは咄嗟に俺を庇ってくれた。

 そして、衝撃波が通り過ぎた後、トランキルの町は静寂に包まれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ