第15話 アクシデント
俺は飛空機械の小さな窓から外の景色を眺めていた。
「わははははっ!すげぇなー!岩山があんなに小さく見えるぜ!」
もちろん上機嫌に決まってる。こんな楽しい乗り物があるなんて!
「……はずかしいなぁ、もう……」
リナベルは俺のテンションに困惑ぎみだ。
「いいなぁ、俺もこれを動かしてみたいけど……ちょっと無理そうだな」
操縦席にはいろんなボタンやら計器類がたくさん並んでいる。ちょっとうっかりな俺からすれば、押し間違えそうで怖い。うかつに触っちゃダメなやつだ。
その時、警告灯の明かりが灯り、音が鳴った。
「ん?どうしたんだ?」
「本機に接近してくる機影がありますね。味方のようですが」
「味方ならいいんじゃねーか」
すると今度はもっとけたたましい音がした。
「なに?」
さすがにリナベルも気になったらしい。
「更に異常接近を確認しました!」
「何の用があってそんなことを!?」
「分かりませんが……」
突然、衝撃があって機体が揺れた。
「何だ!?」
すると、飛空機械がふらつきはじめた。
「水平が保てない……!着陸を試みます!」
飛空機械の高度が除々に下がっていく。
俺の人生初飛行は、短時間で終わりを告げた。
「フェルド様……!何ということを……!」
さすがのハンスもオレを非難した。
「しっかり着陸していた様だし、誰も死んでないから問題あるまい」
「問題大ありです!きっと向こうから報告が上がるでしょう。調べられればすぐに分かります!」
「そうですよ!保障等様々な費用も発生するでしょう、結果的に家に負担がかかります!」
ラントも言い募ってきた。
「我が家はそんな端金すら払えない程、財政が傾いているのか?そんなはずはないだろう?」
オレはラントに尋ねた。もしそうであれば父の失政に違いない。早急に兄に家督を譲るべきだろう。
「もちろん大丈夫ですが、私が申し上げたいのは」
「もういい」
オレは怒気を孕んだ声でラントの発言を遮った。
「後の処理はお前たちに任せたぞ」
オレはラントとハンスを睥睨した。
「……畏まりました」
「……仰せのままに」
二人は素直に恭順の意を示した。
何とか無事に着陸できて良かったけど。
「やっぱりもう飛べないのか?」
操縦士は調べていた手を止めて俺の方をふり返った。
「そうですね……。このまま飛ぶのは危険でしょう。通信の方は大丈夫だったので、ノルドツァンナのガーディアンフォース本部には報告していますが……」
「そっか……」
俺も翼の一部が損傷した機体を見上げた。
「しっかし一体誰がこんなひでぇことをしやがるんだ!? これから機神と戦りあおうって時に仲間内で揉めてる場合じゃねーだろ……」
「ほんとにね」
俺の後ろにリナベルが立っていた。
「何か分かったのか?」
「ええ。ナビゲーションボードによると、ここはトランキルという町の近くみたいね。そこから南に行くとクラウストルムの城下町よ」
「でも徒歩だと結構かかるんだろ?」
「そうね……」
リナベルがナビゲーションボードに目を落とした時、遠くから馬の蹄の音が聞こえてきた。と思ったら、あっという間に近づいてきた。
「大丈夫ー!? あなたたちも機神にやられたのー!?」
馬には少女が乗っていた。
「うーん、まぁそんなところ?」
まさか味方にやられたと言う訳にもいかず、俺は適当に答えた。
「ちょっと待って」
珍しくコーディが口を開いた。
「も……ってことは、君も機神に襲われた?」
「ええ。正確に言えばトランキルの町がね。私はそれを知らせに隣町まで行く途中なの」
「トランキルの町には通信士はいないのか?」
「残念ながら、そんなに大きな町じゃないからいないの。あなたたちは……飛空機械でどこへ行く予定だったの?」
「クラウストルムへ」
「! クラウストルムも機神に襲われたらしいわ。クラウストルムから来た騎士さんたちが言ってたの」
「そうか……。わかった、ありがとう」
「どういたしまして。じゃ、そろそろ行くね。あなたたちも気を付けてね」
「君も」
馬に乗った少女は軽くうなずくと、そのまま馬を走らせ去っていった。
「……トランキルに向かいましょう」
唐突にリナベルが言った。
「見過ごせないわ」
「けど、これはどうすんだ?」
俺は飛空機械を指さした。
「こうするのよ。……収納」
リナベルが飛空機械に触れて唱えると、空間に吸い込まれていった。
「ええー!? あんなでかいのを!?」
操縦士も目を真ん丸にして驚いている。
「うふふ。それじゃ 行きましょうか」
「お、おう」
俺たちはトランキルに向かって歩き出した。




