第14話 運命の分かれ道
ノルドツァンナは一番北にある国で、屈強な軍を抱えてることで有名だ。
国の中にレベルの高いダンジョンがいくつもあるからってのがその理由らしい。
ダンジョン産のアイテムは質がいいから、それをゲットして売り捌いて生活してる冒険者が、ある程度ダンジョン内の魔物を間引いてくれるんだけど、それでも魔物が外に溢れ出すスタンピード寸前までいくことがあるんだと。
なので屈強な軍が定期的にダンジョンを見回って、魔物を倒してるんだって。
軍はいつでも実戦が経験できるから練度も高くなるってわけ。
……ってリナベルが説明してくれた。
「式典はもうすぐらしいから、少し急いだ方がいいかもね」
船を降りてから、そのまま馬車で城までやってきた俺たちは、ノルドツァンナ城の大広間を目指していた。ガーディアンフォース結団式なるものがそこで行われるらしい。
「了解」
俺が通路の角を曲がろうとした時だった。
向こうから走ってきた誰かとぶつかり、俺は尻もちをついた。
「いたた……」
ぶつかってきた奴も廊下に転がっていた。
「……大丈夫か?」
俺はぶつかってきた奴に声をかけた。
「どこ見て歩いてるんだ!気を付けろ!」
開口一番がそれかよ。ひとが心配してんのに。
「……大丈夫そうだな。それじゃ、急いでるんで」
俺はその場を離れようとしたが、そいつは素早く俺の進路を塞いだ。
「このオレにぶつかっといて、謝りもしないのか?」
そいつは俺の頭のてっぺんから爪先までじろりと見回した。
「これだから田舎者は。貴族に対する礼儀も知らんとみえる」
「なんだと……? 余所見してたのはお前も同じだろ?」
言い返した俺をリナベルが引っ張った。
「私の連れが失礼いたしました。貴族の方とはつゆ知らず」
リナベルはそれは美しい淑女の礼を披露した。
ぶつかってきた奴は、一瞬目を奪われたようだった。
「ふ、ふん、わかればいいんだ、わかれば」
そう言って俺を一瞥したあと、去っていった。
「……何なんだ?あいつ」
俺はぶつかってきた奴が去っていった方を見やった。
「……アヴェルスタール侯爵の四男、フェルド・アヴェルスタールよ。家督を継がなくていいから、結構好き勝手にやってるみたいね。あれでもAランクだから、世の中わからないわよねー」
侯爵の息子!Aランク!ほんと分かんねえ。でもとりあえず、リナベルのおかげで事なきを得たんだよな。
「リナベル、ありがと。助かったよ」
「お礼ならあなたの血で充分よ」
ぐふう、やっぱりそうきたか。
「今はさすがにまずいから、後でな」
「しょうがないわねー」
そんなこんなで、なんとか大広間にたどりついた。
「わ、けっこう来てるな。……もしかしたら師匠も来てる?」
結団式はまだ始まっていなかった。
「そうね、各国のSランク、Aランクは参加ってことだったから、もしかしたらいるかもね」
俺は周りを見回したが、近くにはいないみたいだ。
その時、段上に黒い鎧のいかついおっさんが上がってきた。
「皆そのままで聞いてくれ。俺はノルドツァンナの冒険者ギルド所属のSランク、ジェラルド・オーデュバルだ。このたび対機神合同機関ガーディアンフォースの団長として各国の王より選任された。よろしく頼む。…… まだクラウストルムからの冒険者一団が到着していないとのことで、今しばらく待っていてほしい」
そこに通信士がやってきて、ジェラルド団長に何事かを耳打ちした。
「そうか、わかった」
ジェラルド団長はうなずいて、再びみんなの方に向き直った。
「さっそくだが出動要請だ!たった今、クラウストルムが機神の大軍に襲われているとの情報が入った!」
大広間がざわつき始めた。
「本来なら顔合わせを兼ねた昼食会を開く予定だったが、時間が無い!総員テレポーターにて飛空機械発着場へ行き、順時クラウストルムへ飛び立て!」
もともと血の気が多い冒険者たちは、雄たけびを上げながら大広間を飛び出ていく。
こちらです!と叫ぶ案内係の声も聞こえた。
「私たちも行きましょう!」
俺とコーディはうなずいてリナベルについていった。
テレポーターから飛んだ先はだだっ広い荒野だった。ただ、地面が異常に平らだ。そこにはズラリと飛空機械が並んでおり、端の方から順番に飛び立っていく。
「……すっげえ!」
あまり数が多くないっていう飛空機械があんなに並んでるなんて!
何だかわくわくしてきた!ついにあれに乗れるのか!
そこへ案内係の男の人がやってきた。
「“悠久の翼”の方々ですね?」
「ええ、そうだけど」
「搭乗する飛空機械へご案内します。それと、こちらをどうぞ」
案内係の男の人は、ペンダントを3つと銀色の板を差し出した。
「このペンダントがガーディアンフォース所属の証となりますので大切にお持ちください。そしてこちらはナビゲーションボードと呼ばれるものです。地図が内蔵されており、このボードの現在地、つまり自分たちがいる場所が分かるというものです。これから任務で様々な場所に行くことが予想されますので、どうぞお役立てください」
「わかったわ、ありがとう」
リナベルが受け取り、ペンダントを俺とコーディに渡した。
そして案内係の男の人についていき、搭乗する飛空機械の所に辿りついた。
「どうぞお気を付けて。ご武運を」
俺たちはうなずいて、飛空機械に乗りこんだ。
その様子をオレ、フェルド・アヴェルスタールはじっと見ていた。
「どうかされましたか?フェルド様」
付人の1人、ハンスが尋ねてきた。
「……無礼者をどうやって断罪してやろうかと思ってな」
「その件は不問にされたのでは?」
もう1人の付人、ラントが確認してきた。
「思い出したらムカついてきたんだよ。あの田舎者、オレの顔すら知らないとは……しかもあの態度はどういう事だ!? やはり貴族に対する礼儀をきっちり教えてやらないとな」
飛び立っていく飛空機械を眺めながら、ラントの問いに答えた。
「……フェルド様、準備が整ったそうです」
ハンスがオレに告げた。
「わかった、行こうか」
そしてオレたちもクラウストルムへ向けて飛び立った。
「……ふふっ、いいことを思いついたぞ」
その機内で、オレは思わず呟いてしまった。
「くれぐれも危ないことはされないようにお願いいたします」
ラントが釘を刺してきたが、知ったことか。
「操縦士、頼みがある」
「はい、何でしょうか?」
「あの飛空機械のあとを追ってもらいたい」
オレはあいつが乗りこんだ飛空機械を指さした。
「何かあったんですか?ご伝言がありましたら通信士につなぎますが?」
「ただ追うだけでいいんだ」
オレは有無を言わせない態度で運転手に迫った。
「は、はい、わかりました…… 」
運転手は素直に従い、あいつが乗りこんだ飛空機械を追いはじめた。




