第12話 城内にて
「やあ、すまないね。また突然の依頼になってしまって」
その夜、なんと女王様が俺たちの泊まる部屋にたった一人でやってきた。
いや、護衛の兵士は部屋の外にいるんだろうけど。
「ほんとですよ。前のご依頼については申し訳なく思っていますが」
リナベルが女王様と普通に会話してる。
「あれの存在を知った時は心が躍ったものだが。君たちがいつか機神から取り返してくれると期待しているよ」
「まあ……善処します。ところで、何ですか?ガーディアンフォースって」
「謁見の間で言った通りだ。対機神の組織で様々な任務にあたってもらうことになっている。主に戦闘関係と推測するが。そういうことで各国のSランク、Aランクは原則参加することになっているから、遅かれ早かれ君たちに依頼することになっていたと思うがね」
そこで言葉をくぎり、女王様は俺を見た。
「君も戸惑っただろうが、ぜひ力を貸してほしい。今や機神の脅威は、無視できないほど高まっている。精霊竜を呼ぶことができる君の力は、なくてはならないものになるだろう。だが、良からぬ考えを持っている者もいるだろうから、今日のことは念のため箝口令を敷いている。それとこれを」
女王様が俺に紋章入りの短剣を手渡してきた。
「君の身分を保障するものだ。何かあった時はこれを見せなさい」
「あ、ありがとうございます」
それはつまり、女王様という後ろ盾を得られたということだ。もしくは鎖に繋がれた、ということかもしれないが。
「それでは今日はゆっくり休んでくれ」
そう言うと、女王様は退室していった。
「ふわーっ……ほんとにびっくりしたな、まさか部屋に来るなんて」
俺はベッドに寝っころがりながら感想を漏らした。
「うふふ、女王様は意外とおちゃめなのよ。気に入った人にはすぐに会いに来るわ。……まぁ君の場合は特別なんでしょうけど。なんたって精霊竜を呼べるからね」
そう言ってリナベルは悪戯っぽくウインクした。
「……やっぱりか。絶対俺を巻き込む気だったな?まぁ『竜の宝玉』?を機神に盗られたのは俺のせいではあるけれど」
「正直……私とコーディが現場に居あわせたとしても、奪われた可能性は高いわね。なんたって相手は天のヴァルドファードの1の斧、アクセラバードだし」
「? 何だ? その天のヴァルなんとかって」
俺は気になって、ベッドの端に腰掛けてリナベルに聞いた。
「ああ、100年も経ってるから分からないか。いい? 機神の親玉はデウス、これは聞いたことあるんじゃない?」
「うん、知ってる」
「で、その下に三巨頭っていって、めちゃくちゃ強い機神が3体いるんだけど、海のザルガディアス、地のギアスレギア、そして天のヴァルドファード。この3体が実質機神たちを束ねていたの。アクセラバードは天のヴァルドファードの1の斧、つまり一番強い部下ってわけ」
「そうなのか!……でもあれより強い機神がいるなんて考えたくもねえな。天のヴァルドファード……か」
俺は部屋の天井を仰ぎ見た。
「三巨頭は機能停止を確認しているから、恐らく戦うことはないと思うけど。アクセラバードがいるのは痛いわね……」
リナベルも俺と同様に天井を見て、それきり黙りこんでしまった。
「……だけど、何で今復活したんだろうな……」
「それはわからない。けれど、これから僕たちが参加するガーディアンフォースにいれば、何か情報が得られるかもしれないね」
俺の呟きに、コーディが答えてくれた。
「そうだな。でもとりあえずは『竜の宝玉』を取り返さなきゃだな」




