表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

聖女じゃないのに正常じゃない毎日

聖女じゃないのに正常じゃない日常2-聖女じゃない私と消えた麦畑の謎

作者: サッカ9

私はレイラ。

聖女じゃないけど、なんか最近「聖女扱い」されることが増えている。

魔法が少しだけ使えるだけの田舎の平民なのに、なんでだろうね?

私はレイラ。聖女じゃないのに、なぜか最近「聖女様」なんて呼ばれることが増えてきた。困った人を見捨てられない性格と、ちょっとだけ魔法が使えるせいだと思うけど、実際のところ私はただの田舎育ちの17歳だ。

そんな私に、またしても厄介な話が舞い込んできた。それは、村の大事な麦畑が突然「消えた」という奇妙な出来事だった。



「レイラ、また厄介な相談で悪いが……」

領主様は申し訳なさそうな顔で、私を領主館に招き入れた。テーブルには地図が広げられ、赤い印がつけられている。

「今年の麦畑が、丸ごと消えてしまった」

「消えた?どういうことですか?」

「そのままだ。何もかも綺麗さっぱり無くなってしまったんだ。穂も、茎も、根っこさえもな」

領主様の話では、事件が起きたのは昨晩のこと。村人たちが目撃したのは、夜空に浮かぶ青白い光と、不気味な轟音。そして、翌朝には畑が空っぽになっていた。

「自然現象かもしれませんよ?」

「そうであれば良いが、村人たちは怯えている。誰かに何かをしてほしいと言うが、頼れるのは君しかいない」

私は肩をすくめた。聖女扱いされるのは慣れてきたけど、本当に聖女じゃないんだからね。

「分かりました。でも、結果は期待しないでくださいよ?」



翌朝、私は村の麦畑へ向かった。領主様の案内で畑に立つと、目の前には想像を超える光景が広がっていた。まるで巨大な手で刈り取られたかのように、麦が跡形もなく消えている。代わりに地面には奇妙な深い溝がいくつも走っていた。

「これは……」

地面を調べると、何かが引きずられたような跡が続いている。周囲に足跡や車輪の跡はないが、この溝は畑の中央から一直線に森へと続いていた。

「夜空に光があったって話は?」

「確かに、村人たちは見たと言っている。青白い光が畑に降りて、その後、轟音と共に消えたと」

「これだけのことをやるなら、大勢の人手か、何か大きな力が必要ですね……」

私は溝の跡を辿ってみることにした。



畑から続く溝の跡は、村の外れにある森へと繋がっていた。森の入り口は鬱蒼としていて、昼間なのに薄暗い。私は少し身震いしながら中へ足を踏み入れた。

森を進むと、途中で溝の跡が消えていた。その代わり、奇妙なものが見つかった。木の根元に置かれた小さな金属の欠片だ。それは何かの機械の一部のように見えた。

「これ、なんだろう?」

さらに進むと、森の奥に不自然に広がる空き地を見つけた。そこには無数の焦げ跡があり、何かが激しく燃えた痕跡が残されていた。



空き地を調べても確かな手掛かりが見つからず、私は一旦村に戻ることにした。道中、領主様に出会い、森で見つけたものを話すと、彼は「それで思い出した」と古い文献を取り出した。

それは村に伝わる奇妙な伝説だった。

「昔、この地には『空を舞う炎の獣』が現れ、村の作物を奪っていったという記録がある」

「空を舞う炎の獣?」

「信じがたい話だが、記録にははっきりとそう書かれている。村人たちは『神罰』だと恐れ、豊作を祈る儀式を始めたそうだ」

領主様の話を聞きながら、私は昨夜目撃されたという「青白い光」と、森で見つけた焦げ跡がどうにも気になっていた。



その夜、私は領主様に頼んで畑の見張りをすることにした。森での痕跡や、青白い光の噂を直接確かめるためだ。

星空の下、畑は静まり返っている。風が草を揺らす音だけが耳に届く。すると、深夜になって突如、空が青白く光り始めた。

「これが……!」

光はまるで生き物のようにうねりながら畑に降りてきた。そして、畑の上空に浮かぶ巨大な影が現れる。鳥でも獣でもない、不気味な形状をした存在だ。

私は魔法を発動し、その存在に向かって叫んだ。

「そこにいるのは誰!?ここで何をしているの!?」



光と影が止まり、低い唸り声のような音が響いた。そして、影の中からぼんやりとした人影が現れる。それは人間ではなく、金属のような身体を持つ「何か」だった。

「私たちは、ただ糧を求めていただけだ」

その存在は、はるか遠い土地からやってきたと言う。自分たちの故郷では食物が育たず、代わりに地球の作物を盗んでいたのだと。

「盗むことが許されると思っているの?」

「そうしなければ、我々の種族は滅びる。だが、抵抗する者がいるならば去ろう」

彼らは去り際に、消えた麦畑の一部を返すと言った。



翌朝、畑には確かに一部の麦が戻されていた。村人たちは不思議そうにそれを見つめながらも、「奇跡が起きた」と喜んでいた。

私は領主様に事の次第を話したが、彼は苦笑いして言った。

「誰も信じはしないだろう。だが、村が救われたのは君のおかげだ」



その後、私は村人たちに「聖女様」と持ち上げられるようになった。けれど、私はただ彼らを守るために動いただけ。

「また何か起こったら、よろしくな!」

村人の声に応えながら、私は次に何が起こるのかを少しだけ楽しみにしていた。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ