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第13話 作戦会議の後に


 ホーニッヒは署の屋上でぼうっと夕陽をながめていた。


「結局、私はなにもできないんだ…。」


 ため息をついたとき、足もとに小さな影が見えた。


「ひとりで何もできない時は、すなおに誰かを頼ればいいニャ。」


 黒猫が足音もなくそばに立っていた。


「それが相手に迷惑になっても?」


「君は勘違いをしているニャ。信頼している相手から頼られるのは本当に嬉しいことなのニャ。」


「そうだよ。ポニー。」


 いつのまにか、メートヘンも立っていた。手にしたメモを少女はビリビリと破り捨てた。


「なーにが『あなたはもうかかわらないで』よ。アタシがいないとなーんもできないクセにさ。」


「メートヘン…。」


 さらに影が2つ、地面に現れた。


「そうっすよ、頼ってくださいっす。」


「自分は今でもあんたの部下だぜ?」


「デシリット、フラスク…。」


 黒猫が顔を洗い出した。


「落ち込んでいる理由は想像がつくニャ。だったらボクたちだけでやればいいニャ?」


 ホーニッヒは顔をあげ、メガネをはずして涙をふいた。


「みんな。ありがとう。私、間違っていたね。」


 メートヘンが近づいて、ホーニッヒの顔にメガネをかけ直した。


「ポニー、アンタがボスなんだから。しっかりしてね。」


「うん。でもどうする? あの警戒厳重な屋敷、もう侵入は不可能だよ。」


「いや、方法はあるニャ!」


 黒猫の宣言に、全員が注目した。


「黒猫のダンナ、教えてくれ。どんな作戦だ?」


「白猫怪盗ヴァイスを利用するニャ!」


 メートヘンが激しく反応した。


「奴を!? どうするの!?」


 黒猫シュヴァルツェは自信タップリに答えた。


「奴が次に狙うのはシリンダの結婚式ニャ!」




 ザッハトルテ市最大の新聞社、シュトーレンタイムズの朝刊からの引用


『世紀の結婚式』


「このほど、大企業集団オゾングループの中核であるオゾン重化学工業御曹司の結婚式が来月、フランクフルト氏邸で盛大に開催されることが正式に発表された。お相手は、名家の息女で現職の警察官だ。


 式にはオゾングループ総帥のフランクフルト氏も参列を予定しており、同日は市長選挙の投開票日であるため、選挙戦を有利に進めている同氏が結婚式開催にあわせて勝利宣言をするものとみこまれている。


 本来、式はオゾン汽船所有の豪華客船クイーン・ブリタイタン号で行われる予定だったが、先日の怪盗ヴァイスの襲撃により就航不能となり、急遽変更された模様。なお、同船舶はオゾン汽船よりオゾン重化学工業へ売却されたという。


 ザッハトルテ市警は、再度の怪盗ヴァイスの襲撃にそなえ、式場で空前の警備態勢を敷くと発表し、その指揮は同市警ザルツ警部がとるとのこと。

 この発表を受け、オゾン重化学工業の株価は…ー




 ホーニッヒは宅配ピザを受け取ると、部屋に戻った。


「来たよ。」


 歓声があがり、皆は作業の手をとめた。テーブルの上には山のように資料が置かれ、壁には地図や見取り図、写真、メモが無数に貼られていた。


 ここはホーニッヒの自宅アパートだった。署で集まるわけにはいかず、ここが作戦会議の場になっていた。


「やっぱりザルツはアホニャ。奴の警備は穴だらけニャ。」


 図面を見ながら黒猫がピザを食べた。


「黒猫さん、奴の…ヴァイスの狙いが結婚式ってよくわかったね。」


 メートヘンがホーニッヒからピザを受けとりながら言うと、黒猫は胸をはった。


「奴は純金像を盗んでいたのに、わざわざ捕まる危険を犯してまで船にあらわれて騒ぎをおこしたニャ。奴の狙いは船を使えなくすることだったのニャ。」


「結婚式でなにを盗むんすか?」


「フランクフルト氏は自室に巨大な金庫を持っていて、来客に自慢するのが趣味らしいニャ。おそらくその金庫が狙いニャ!」


 デシリットが新聞から目をあげた。


「結婚式なら参列者が大挙してやってくるな。警備にもスキができる。奴の狙いはそれか。」


 メートヘンが手を上げた。


「でもさ、アンタたち、警備から外されたんだよね。どうやって屋敷にはいるの?」


「にゃはっ。これがあるから大丈夫ニャ!」


 黒猫は内ポケットから何枚かの封筒をとりだした。


「シリンダに頼んで、宛名が空白の式の招待状をもらったニャ! 貴族や名士に化けて参列ニャ!」


「あなたねえ、今度は料理をドカ食いしたらあかんよ。」


「わかってるニャ!」


 ホーニッヒは立ち上がり皆をみまわした。


「みんな、本当にありがとう。当日、シュバルツェとメートヘンはヴァイスを捕まえて! 私とフラスクとデシリットは地下に潜入してトラン君のパパを救出するわ。違法な兵器工場をザルツ警部に見せればフランクフルトを逮捕できる!」

 


 

 更に綿密な打ち合わせの後、遅い時刻に黒猫とフラスクとデシリットは帰っていった。モジモジしているメートヘンに、ホーニッヒが提案した。


「もう遅いし、泊まっていく?」


「そのことばを待ってたの!」


 メートヘンはいそいそとカバンからパジャマをとりだした。


「最初から泊まるつもりだったんだ。」


「安心して? もういっしょに寝るなんていわないから。」


 少女は微笑んで、ソファにゴロンと横になった。


「いいなあ。アタシもこんなアパートに住みたいなあ。」


 ホーニッヒは真剣な表情になった。


「聞いて、メートヘン。やっぱり今回は抜けてくれる?」


 少女は抱えていたクッションをホーニッヒになげた。


「絶対にイヤ。その話はおしまい。」


「あのね、相手は平気でマシンガンをぶっぱなしたり、誘拐や監禁もする連中だよ? 危険すぎるわ。」


「死んじゃうかもしれないってこと?」


「そう。だから…」


 少女はホーニッヒの言葉を遮った。


「じゃあさ、今、ここで、アタシをアンタのものにして。」


「はい?」


 放心状態のホーニッヒに、メートヘンは顔を赤くしてまたクッションをなげた。


「2度も言わせないで。」


「あのね、どういう話のながれでそうなるの?」


「だって、そういう関係になったらさ、置いていくなんて冷たいことを言えないよね?」


「いや、逆じゃない? と、とにかくもう、こどもが大人をからかわないで。」


「だ・か・ら、こどもじゃないもん! たいして歳、かわらないし。」


「そ、そうかな…。」


 ホーニッヒが頭痛を覚えて、少女を泊める提案をしたことを後悔しはじめたとき、チャイムが鳴った。

 ボタンを押すと、インターホンからシリンダの声が聞こえてきた。


「警部補、俺だ。こんな遅くにすまないけど、やっぱりどうしても話しておきたくってさ。入ってもいいか?」


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