【超短編】オークな俺を仲間にと誘ってきた異世界転移美女冒険者たちのパーティ名が『クリヤマ・ノーゲイ牧場』だった件。
何とかノクターンに行かないようにしました!
お昼休みのお供にどうぞ。
俺はオーク。
豚っぽい顔をした種族だが豚ではない。
れっきとした亜人だ。
頭脳労働は苦手だが体が丈夫なことが売りな俺たちは労働力や冒険者パーティの前衛職として重用されていた。
特に俺のような身の丈3mもあるハイオークは引く手数多だと聞いている。
だが冒険者登録をしていきなりBランクのパーティに誘われた時は驚いた。
「私たちと一緒に組みませんか?」
「先日、前衛のステーキ…素敵なミノタウロスさんが亡くなられたんです!」
「あなたのようなトン…とんでもなく将来有望そうな肉…肉体派の戦士が欲しいんです!」
「「「ぜひ私たちのパーティに入ってください!」」」
俺たちオークにとって人間やエルフの女性は高嶺の花だ。
そんな女性ばかりのパーティに誘ってもらえるなんて最高じゃないか!
「いいのか?俺は今日冒険者になったばかりだぞ?」
「大丈夫よ!私たちがしっかり育ててあげるから!」
「14歳よね?それなら…2年ってところかな?」
「2年って何がです?」
「それはつまり2年で出荷…一人前になれるってことだから」
俺をそんなに買ってくれているのか。
「わかった。これからよろしくお願いします」
「「「ようこそ『クリヤマ・ノーゲイ牧場』へ!」」」
「3人とも異世界から転移してきたんですか?!」
異世界からの転移者は珍しくはないが希少ではある。
異世界独自の知識や価値観を持つ彼女らと一緒に冒険をすれば、俺にとっても得られるものは多いだろう。
「ええ。私たちは栗山農芸高校という学校の同級生でした」
「そろそろ卒業という所で異世界転移してしまって」
「でも、この世界でなんとか頑張ってBランクにまでなったんです」
今は3人とも21歳で、俺よりずっと年上だがすごい美人たちだ。
このうち一人だけでも俺といい仲になれたら…なんて不埒なことを考えてしまう。
しかし3か月もしないうちに、俺は『愛称』で呼ばれるほどの関係になっていた。
「ねえ、『カクニ』。今日の活躍もすごかったわね」
「ユカリの攻撃魔法のおかげだよ」
ユカリは俺と二人きりの時だけ、『カクニ』という愛称で呼んでくれる。
異世界の言葉らしいのだが、その意味を聞くと頬を染めて教えてくれない。
恋人とかの意味なのだろうか?
「『トンカツ』!マッサージしてあげるよ!」
「いつも悪いな、ミドリ」
「何言ってるのよ!短剣使いの私が活躍できるのはトンカツのおかげなんだから!」
毎晩のように少女たちは俺の体を揉んでくれたりお風呂で背中をこすってくれたりする。
俺は生理的欲求を鎮めるのに尽力しないといけないが、天国だと思う。
「『ベーコン』!これおいしいからどんどん食べてね」
「ありがとう、アオイ。君の作ってくれる芋料理は最高だな」
肉よりも芋を食べる方がいい体つきになると聞いてからは芋を主食にしているが、おかげで俺の体はさらに一回り大きくなったようだ。
「そろそろ2年ね」
「揉んでみた感じ、十分な『肉質』だと思うわ」
「じゃあ、いつものダンジョンに潜りましょうか」
俺たちは珍しく冒険者たちの少ない高難易度ダンジョンに来ていた。
俺自身がCランクになったこともあり、Bランクダンジョンに潜れる自信もあった。
「ここの最下層にとっておきの場所があるのよ」
「ダンジョンボスが居るんだろ?勝てるかな?」
「大丈夫よ。私たちなら絶対に負けないから」
「そういえば今日で俺が仲間に入れてもらって丁度2年だな」
「覚えていたの?!」
「せっかくサプライズしようと思ったのに!」
サプライズなら俺も準備していたんだけどな。
「でもそれが何かは最下層についてからのお楽しみね!」
「楽しみだわ…楽しみにしててね!」
「じゅるり…早く最下層に行きましょう!」
いつも以上に笑顔な3人と一緒にモンスターたちを蹴散らして最下層に突き進んでいく。
俺たちは軽戦士、魔術師、弓使い、そしてタンクである俺の4人組で回復役は居ないがポーションで足りる程度の怪我しかしない。
それほどまでに俺たちは強く、見事な連携を取ってきていたのだ。
「ダンジョンボスが出るわよ!」
「俺がひきつける!任せろ!」
現れたダンジョンボスはグレーターデーモンだった。
上位の悪魔だけあって姿かたちは人間に近く、仲間の3人に負けないほどの美女だった。
しかし敵であるからには倒さなければならない。
タンクである俺は必死に彼女の攻撃を防ぎ続けた。
「ぐうっ…体が動かない…」
どうやら彼女の爪の麻痺毒が全身に回ってしまったようだ。
だが心配ない。
いつも通り解毒のポーションを後ろからかけてもらえば済むことだ。
「やっと動かなくなったわね」
「『リリス』お疲れ様」
「いいのよ。最高の『食材』が手に入るなら手助けは惜しまないわ」
「私たちも『邪魔の入らない場所』が提供してもらえるからありがたいわ」
「どう、この子。とっても素敵でしょう?」
ユカリが俺の出っ張った腹を撫でる。
戦闘中に何をしているんだ!?
いや、それ以前になぜダンジョンボスとこんなに親しそうに会話しているんだ?!
「何が起きているかわからないって顔をしているわね」
「あれを見たらわかるかしら?」
そこには牛の頭の骸骨が載った墓があった。
「まさか俺の前のメンバーのミノタウロスはここで死んだのか?!」
「あら?痺れているのにまだしゃべれるのね」
「死んだ、じゃなくて『殺された』のよ」
「その『リリス』という悪魔にか?!」
「違うわ。私たちによ」
「何だって?!」
栗山農芸高校という学校で牧畜業を学んでいた彼女たちは異世界で牛や豚を食べたがその味に満足できなかった。
「その時、ミノタウロスの冒険者に出会った時にわかったの」
「彼は『最高の肉質』だって」
そ、それってつまり…。
「そう、あなたはこれから私たちに解体されて」
「お肉にされて」
「おいしく食べられるのよ」
「ふっふっふ。場所を提供した私にも料理を振る舞ってもらえるのよ」
そうか!ダンジョンボスを倒すか全滅しない限り他の冒険者はここに入れず、中の様子も見ることはできない!
ここで何が起こっても絶対にわからないんだ!
「サプライズってそういうことか!」
「そうよ。まさにサプライズでしょう?2年間も仲良くしていた仲間に食べられるなんて」
「全身余すことなく食べてあげるわね」
「といっても、この大きさだとベーコンとかにして保管しないといけないけど」
奥の方を見るとかまどや燻製器が見える。
あれで俺は豚のように調理されてしまうのか…。
「じゃあ、さようなら」
ザクッ!
「ぐあああっ!」
「麻痺が頭にまで回って無いからうるさいわね」
「こいつのいびきよりマシじゃないの?」
「そうそう、毎晩うるさかったわよね」
「でも今日の日のために耐えてきたのよね」
彼女たちがこんな最低な奴らだったなんて!
しかしどんなに動こうとしても体は動かない。
血がどんどん抜けていき、意識が朦朧としてくる。
『生命力が限界値を下回りました』
『偽装が解除されます』
俺の体が光り輝いて、肌が金色になる。
「な、なによこれ?!」
「まさかこれが金華豚?!」
「そんなわけないじゃない!」
「こ、これはまずいぞ!こいつはハイオークなどではない!」
リリスにはわかったようだがもう遅い。
「ぬうんっ!」
俺は腕を振るうと、4人を吹き飛ばして壁に叩きつけた。
「「「「きゃあああっ!」」」」
「何で動けるの?!」
「何てパワーなの?!壁にぶつかったショックで体が動かない!」
「そもそもあの金色の肌はなんなの?!」
「あれは、オークキングの証よ!」
「「「ええっ?!」」」
そう、俺はハイオークではなく、その上のオークジェネラルの上に立つオークキングの王子だ。
俺は自分に相応しい『嫁』を見つけるために冒険者になったのだが…
「俺のサプライズは『オークキングは王族ゆえに何人でも嫁をもらっていいから3人とも嫁にしたい』と言うことだったのだが…嫁候補にまさか食べられそうになるとはな」
「許して!ほんの出来心なの!」
「出来心で2年間もだまし続けるか?」
俺は風呂場やマッサージの時になんとか押さえつけていた『キングソード』を開放した。
「「「「ひいいいいっ!」」」」
「ここなら邪魔は入らないよな」
「や、やめて!そんなものに貫かれたら私たち死んじゃう!」
「俺は殺されるところだったんだが?」
「何でも言うこと聞くから許して!」
「お願い!」
「私も場所を提供していただけだから!」
「「「「許してください!!」」」」
「許してもいいぞ」
「「「「へ?」」」」
「ねえ、あなた。私たちのパーティに入らない?」
「その体つき。将来有望だと思うのよ」
「『2年間』で理想の体…肉体に鍛えてあげるから」
「私なんかでいいのか?」
そう言うのは身長2mのアマゾネスの少女。
「あなたならきっとあの剣を受け入れ…受け止められるくらい強くなれるわ!」
「体格的には申し分ないから、あとは筋肉質すぎる所をもう少しもみほぐしてあげるわね」
「王様はオークのくせに美人好みだから」
「これからよろしくお願いするわ」
「「「ようこそ『オークキング牧場』へ!」」」
その頃、例のダンジョンの最下層では。
「またやり過ぎて死んでしまったか」
「いくらダンジョンコアを壊さなければ私がリポップするからってひどすぎるわよ!」
「あいつらが戻ってくるまでの2年間で『小さい体の女性の扱い方』を学ばないといけないからな」
「『身代わり』を連れてきたら許してあげるんでしょう?それなら私にこんなことしなくてもいいじゃない!」
「俺が許すと言ったのは『命を取らない』ということだけだ。あいつらが勝手に『嫁』を増やしてきたところで、あの3人が俺の嫁になるのは確定事項だ。それにお前が彼女たちに『隷属紋』を付けてくれたから逃げられないだろ?」
「自分を食べようとした相手を嫁にするとか正気なの?!」
「そのくらいの気概が無ければ皇太子の嫁は務まらないさ」
「あなたってただの王子じゃなくて皇太子なの?!」
「心配するな。お前も王妃にしてやる。だから俺の練習にしっかり付き合ってくれ」
「いやあああああああああああああああっ!」
「あっ、メスのミノタウロスよ!」
「角があるけど顔は人間なのね」
「あの大きな胸。いいミルクが出そうね」
「ハーピィも仲間にしない?無精卵を産むらしいし」
「それもいいわね!」
こうしてまったく反省の色が見えない3人は2年後に『嫁入り』させられるのであった。
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