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自己愛性ブラック~その原因とメカニズム~  作者: 朝木深水
第九章 新人、飲み会、飲み会
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その六 焼肉屋

 新人が加入したということで、また飲み会をやろうとか言い出した。


 今度は国道沿いの焼肉店だった。


 ドライバーは飲めないだろうということで、前田さんが成見と松井さんを車で送ったらしい。優しいというか、健気というか、普通はそこまでやるものなのか、地元で飲むことがあまりなかったので、私にはよくわからなかった。一応私にも聞いてきたが、彼の方もあまり期待していなかったらしく、私は一人で運転して店に向かった。


 店に着くと、前田さんがエントランスで出迎えてくれた。他の二人も既に席で待っていた。例によって小迫さんは欠席だった。


 ランチ以外で、焼肉店に来たのは初めてだった。店内は、土曜日の夜ということもあって、主に家族連れでごった返していた。なるほど、今時の世間の家族はこうして外食をしているのか、と感心した。私の家では、外食をしたことなどほとんどなかった。当時はまだ、ファミレスなるものも、ほとんど存在していなかった。ましてや家族で焼肉店など想像もつかない。


 更に、タッチパネルにも驚愕した。引きこもっているうちに、時代が変わっていたことを痛感した。注文は前田さんに任せた。


 成見と松井さんはビールを注文した。私はドリンクバーでジンジャーエールを注いできた。

 乾杯して、肉を焼いた。


 成見がスマホの画像を見せてきた。腹筋が割れていた。相変わらず前田さんと筋トレの話をしている。私の隣は松井さんだった。

「僕、最初に入ったのが銀行だったんですよ」

「え、銀行。銀行員だったんですか」

「いや、銀行員じゃなくて、サーバーの管理とか、データのバックアップとかやってたんですよ」

「マジすか」

 サーバーの管理。IT系だったのか。


「合併して、今はなくなっちゃいましたけど。昔は大手町まで、毎日通ってたんですよ」

 大手町というと都市銀だろうか。合併して今はない銀行だと、Tとか、Dとか、Uとか、その辺か。しかしあの辺りには、地方銀行や政府系の金融機関もいろいろあるような気がする。いずれにしてもエリートであることに変わりはない。


「SEとかなんですか」

「いや、SEじゃないです」

「プログラムとかは、組めるんですか」

「いや、プログラマーじゃないんですけど」


 SEでもない。プログラムも組めない。頭の中がクエスチョンマークでいっぱいになった。それで都市銀でサーバーだのバックアップだのの業務が出来るのか。そもそも大学の新卒で入行したのか。プログラマーでもなくて、新卒でIT系の採用があるのか。聞きたいことはいろいろあったが、根掘り葉掘り聞く訳にもいかなかった。


 そもそも、そんな経歴の人間が何故、あんな工場で、あんな非正規仕事をやっているのであろうか。しかもその仕事も出来るとは言い難い。人並み外れたあの抜けようで、銀行の仕事が勤まるのか。勤まらないから退職したとしても、そもそもどういったルートで入行出来るのか。もう何が何だかわからなくなってきた。考えないことにして、肉を食うことにした。しかし、じゃんじゃん注文するため、カルビだかロースだかハラミだか、自分が何を焼いて何を食っているのかさえ、わからなくなってきた。焦げてようと、レアだろうと、お構いなしだった。セロトニンの分泌過剰で一月はハイになれそうだった。

経歴についてはまた後程

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