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自己愛性ブラック~その原因とメカニズム~  作者: 朝木深水
第九章 新人、飲み会、飲み会
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その三 誇大型

 まだ朝の早い時間に、選りに選ってダイレクトに、小迫さんと松井さんが揃って派遣されてきた。

 小迫さんは着くなり、自分の台車を確保し、テンパっているようなクソ苛ついた態度で松井さんに指示を飛ばした。松井さんが押してきたのは、ワイリンクの台車だった。


 Rワイは、当初は普通に梱包していた。他の部品と同じように、コンテナに入れられて、部品用の台車で我々の許に回されてきた。しかし、途中から何故か、中二階の画選で、梱包用の段ボール箱に直接入れて、普通の台車に載せられて、こちらに回されるようになった。我々は途中から梱包すればいいことになった。その代わり、箱を作ってからまた画選に戻す必要があった。


 小迫さんの不可解な行動はともかくとして、折角なので、松井さんに教えることにした。中の防錆袋を閉じるまでは、上でやってもらっていた。後は段取りをして、管理表と副票を入れて、箱を閉じて、パレットに積むだけだった。


 問題はその後だった。段ボール箱を作る際に、普通はすぐ使えるように綺麗に積み上げておく。しかしRワイの場合は、台車に積んで上に返さないといけない。そのため、上の箱を下の箱に突っ込んで、積み上げることになっていた。その通りに教えて、私が台車をエレベーターに載せて上に返した。


 二時前に、三人ともUCに戻ることになった。先に二人を帰すと、私は入庫して、フォークがパレットを引くのを見届けて、誰もいない工場で優雅に一息ついてからUCへと戻った。


 既に二人は段取りを始めていた。成見に指示を受け、私はセットのラベルを貼り始めた。


 その日は三時で終了することになっていた。ご機嫌でラベルを貼りながら、脳内で『ビフォア・アキューズ・ミー』を再生していると、成見が、箱を作っている松井さんに何か言った。コンクリート柱の陰から首を伸ばしてよく見ると、上の箱を下の箱に突っ込んで積んでいるようだった。


 成見が私の許に来ていった。

「ちゃんと教えて下さい」


 教えるも何も、私はラベルを貼っていたし、柱の陰で見えなかったし、箱の積み方はもう知っているはずではないのか。まさか、Rワイのやり方を普通にやるとは想定外である。どうも松井さんの脳内では、そういった区別がつかないのかもしれなかった。小迫さんは、普段からギャアギャア言うくせに、隣で作業をしていて何も言わない。それに、どうせ梱包する時に気付くだろうから、そこまで言う必要があるのか。その時点で何も気付かないようだったら、注意すりゃいいんじゃないのか。


 それ以来、という訳でもないのだろうが、朝礼が終わって、私が松井さんの後を追ってダイレクトに移動しようとすると、成見が言ってくるようになった。


「松井さん、ガンガン煽っていいですよ」

 とうとうこの子も、そういうことを言い出すようになってしまったのか、と思った。他人に気遣いの出来る、優しい子だと思っていたのに。今にして思えば、自己愛性パーソナリティ障害の過敏型から誇大型へと移行しつつあったのであろう。

アンプラグドは最高ですね

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