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自己愛性ブラック~その原因とメカニズム~  作者: 朝木深水
第八章 困惑
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その十 ディープラブ

 朝、ダイレクトでの無意味な視察を終えてUC工場に入ると、既に体操の音楽が鳴り響き、社員どもと非正規どもが通路にずらりと並んで体操を始めていた。二階の更衣室の前にも、社員どもが並んでいた。事務所の一つが二階にあったのだ。急いで更衣室を出て、ヤードに向かった。少々ゆっくりしすぎたようだった。


 その日は、分配機と防錆機が運び込まれた。ホイストも設置された。その時にいなかったので、フォークが入れない状態で、どのように搬入したのか謎だった。


 梱包するスペースは、結局狭くなった。パレットと機械の間で、窮屈な思いをしながら作業をする羽目になった。


 防錆も、当初ダイレクトのヤードでやるという話が出ていたが、結局UCのヤードでやることになった。やはり、ホイストが設置出来なかったらしい。こちらで防錆したピンを、ダイレクトのヤードにパレットで運び込むことに変わりはなかった。


 UC部品は、成形だかバレルからそのまま台車が押されてくるようになった。


 更に、梱包ヤードの隣の、かつて休憩所だったスペースに丈選が移ったため、UC向けのピンも直接そちらから運び込めるようになった。トラックでの運搬は必要なくなった。


 そのためか、昼のミーティングも程なくして廃止されたようだった。直接部品を見ながら振り分けられるため、必要がなくなったのであろう。


 タイムカードもUCに移された。トイレと旧式のウォーターサーバーも近くにあった。私の場合、UCでの作業は少なかったとはいえ、作業中に逃亡出来るようになったのは、ありがたかった。


 ヤードの一角にはワークネードの事務所があり、他の部署のGLどもも出入りしていた。事務所といってもデスクが三台やっと入る程度の広さだった。


 昼休みが終わり、社食からヤードに戻ると、電気を消した事務所内で、社員三名に混じって、成見が回転椅子で寝ていた。狭い所内においては、彼らの姿はまるで、波打ち際でごろごろと転がっているセイウチの群れのように見えた。移転一週目にして、既に社員どもと同化していた。感心すると同時に、胃の一部が重くなったような、不気味な感覚を味わった。


 社員どもと仲良くすることは、決して悪いことではない。しかし幾らサブリーダーとはいえ、彼らとの間には越えがたい溝があるはずである。立場、待遇、給料、人生そのもの、その他もろもろ。少なくとも私はそういったことをひしひしと感じていた。成見はそういったことを全く感じていないのだろうか。


 長田さんに対するディープラブ、前田さんとの同一化、更にワークネードの社員どもとの一体化、これらの行動を総合して考えてみると、やはり自己愛性パーソナリティ障害なのではないかとの疑いが、より一層強くなった。自分より上の立場の人間、強い人間に対して、より強いシンパシーを抱くのではないだろうか。

私が気にし過ぎなんでしょうかね

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