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自己愛性ブラック~その原因とメカニズム~  作者: 朝木深水
第二十二章 自由への疾走
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その十七 最終日

 結局、この工場には四年半いたことになる。


 入社当初は派遣で、工場の社員である、長田さんと志田君の指示で仕事をしていた。


 彼らは、個人的にはやや面倒くさい人々ではあったが、義務感と責任感から仕事熱心なだけで、決してブラックではなかった。彼らは人生を、この仕事に捧げてきたのだ。そして長田さんは、セクションの創設者だった。自分の作り上げたものが崩壊していくのは見たくないであろう。彼らのような人々が、工場やこの国の経済を支えているのだ。自分のことしか考えていない自己愛性ブラックとは本質的に違う。


 ワークネードにしても同様で、請負という立場では、元請けに忖度せざるを得ない。加藤さんを始めとする社員どもも、一部を除いては、本当は長時間労働などそこまでしたい訳ではないのであろう。


 当時から残業は多いと思っていたが、必要がなければ容赦なく切られた。おかげで土曜日は、月二回くらいは休めた。そのくらいは仕方ないだろうと思っていた。

 請負になり、事態が良くなるかと期待したが逆だった。円安となったが、製造業の海外移転は止まらず、自動車工場が某国に新設され、部品の輸出量が増えた。おまけに、元請けに対する忖度で余計な残業も増えた。そして、成見が覚醒した。


 厚生労働省の調査によると、月四十時間の残業が続くと、病気になるリスクが高まるという。私の場合には、まさに四年以上、その状態が続いていた。

 有給を消化することも考えたが、根本的な解決が図られなければ無意味である。結局、耐えるしかなかった。

 今の私は、休みの日にも何をする気にもならず、洗濯物を片付けるのがやっとで、音楽を聴いても最早何も感じず、映画のDVDを観れば疲労で寝てしまうし、午後からカメラを持って歩き回るのも、楽しいのか何なのかよくわからなくなってきた。仕事もプライベートも全てが惰性と化していた。

 もう何も出来る気がしなかった。

 休養が必要だった。

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