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自己愛性ブラック~その原因とメカニズム~  作者: 朝木深水
第二十二章 自由への疾走
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その二 自己対象転移

 自己対象転移が上手くいっていないのは、松井さんに対しても同様だったようである。

 運搬をしていると言い出した。

「さっき、松井さんに仕事を振ったんですよ」

 この時は、残業の最後の三十分だった。

「時間がないのに、四チャージやるんですか、とか言ってくるんですよ。三十分で出来る訳ねえのに。一体何なんだよ」

 何をそんなに切れているのか、よくわからなかった。そもそも、何チャージやるのか指示しておけば済むことだった。

「どうせ、小迫さんが手を出しそうですけどね。手伝うなって言ったんですけど」

 別にいいじゃん、手伝ったって。

「そうか。わかった。段取りだけで終わると思ったんだ。あいつの計略に引っかかった」

 そこまでは考えていないであろうが、自己解決したようなので、まあヨカッタヨカッタ。


 数日後。

 昼休み前に、成見が実験Z棟に現れると、入庫ラベルを貼り出した。

 チャイムが鳴った。

 ダラダラと社食に行こうとしていると、成見がまだラベルを貼っていやがる。

 ダイレクト部品は、一応私の担当ということになっている。ここで彼を置いてとっとと休憩に行くと、彼はどういう反応を示すだろうか。

 案外、何も気にしないかもしれない。しかし、彼のリアクションが予測出来ない。後で何か言われると面倒だ。自分がやっているのに何故私が休憩に行くのか。そんなもん、知ったことか。

 かといって、手伝ってやるという選択肢もない。そこまで恭順の意を示すのは危険だ。ブラック仲間だと思われてしまう。

 しかし、こいつに他者に対する気遣いというのはないのか。そういうことをされると、こっちが休みづらいとは思わないのだろうか。まあ、思わないのであろう。


 ここは黙ってやり過ごすしかない。ロッカーの前でスマホを見た。ドル円も株も下がっている。まだ終わらない。ニュースアプリを立ち上げた。まだ貼ってやがる。

 結局、五分近くかかって、全てのパレットにラベルを貼りやがった。

 裏紙をゴミ箱に捨てると、そのまま黙ってヤードを後にした。

 私が何故そこにいるのか、彼は気にも留めていないようだった。

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