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自己愛性ブラック~その原因とメカニズム~  作者: 朝木深水
第三章 幻惑
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その十 ピンボール

 更に、ヤード分離で余計な仕事が増えたようだった。


 ダイレクト部品をそっちの工場で梱包するのはいいとして、問題はピンだった。


 ピンは単体ではなく、必ずアウトリンクと組み合わせて、或いはセットの一部として入庫しなくてはならなかった。


 防錆機は梱包ヤードにしかなかった。いや、実は新ヤードにも一台置いてあったのだが、古いうえに、ホイストがなかったので使い物にならなかった。埃を被って使えない代物が何故そこに置いてあったのかは謎である。小迫さんが時々、邪魔だとギャアギャア騒ぎ立てていたが、結局そこを去る日までそこに置かれたままであった。


 つまり、ピン工場から、ダイレクト工場へピンを運搬し、そこで丈選したピンを実験Z棟に運搬し、そこで防錆したピンを、またダイレクト工場に搬入して、そちらでアウトリンクなどと組み合わせて入庫するという、ややこしい状況に陥ってしまった。


 ダイレクト用のピン置き場と、丈選ヤードは、梱包ヤードの奥にあった。元々だったのか、梱包ヤードの分離に合わせて、そっちも分離したのか、その辺は定かではない。


 私が午前中にピンの防錆を行い、午後からダイレクト工場に移動して、そのコンビとなるアウトリンクを梱包する、ということもよくあった。


 志田君か香田さんが午後遅くになって、パレットに載ったピンを運んでくると、その場で入庫ラベルを貼って、そこに私がクソ重たいピンをパレットからパレットへと移し替えて、更にそこに志田君か香田さんが入庫ラベルを貼って、ダイレクト工場の事務所で入庫して、というような慌ただしいことをよくやっていた。果たしてトラック導入前に比べて、社員どもの負荷が増えたのか減ったのか、よくわからない。まあ多少はマシになっていたのであろう。


 いずれにしても私にとっては、小迫さんに邪魔されることも多々あったが、一人で作業出来る時間が多少は増えた。ブロック塀の如き実験Z棟に比べると、多少は涼しくて快適だった。実験Z棟の床はコンクリートにペンキ塗りだったが、こちらはリノリウム張りで、床に這いつくばっての作業もやりやすかった。そしてトイレにも近かった。トイレは古くて汚い離れが建屋のすぐ裏にあった。作業中に退屈すると、そこで一息ついた。そして何より、携帯を好きな時に見られるのは大きかった。段取りをしながら、携帯を横で開いていても、ホワイトボードで遮られて周囲からは見えなかった。株価をチェックして、ニュースを読んで、多少は退屈も紛れた。実験Z棟よりも、気分的にはこちらの方が断然気楽だった。

当時はまだガラケーでしたね

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