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自己愛性ブラック~その原因とメカニズム~  作者: 朝木深水
第二十章 中学教師
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その三 豹変

 中学校の部活においては、新入生は碌にボールにも触らせてもらえないということが多々ある。しかしバレー部では、最初からレシーブを教わった。

 しかし特に楽しいということはなかった。

 肉体的には楽な方だったかもしれない。

 まずランニングがなかった。

 サッカー部などは、校庭を毎日四十週走っていた。

 野球部では、学校の裏山にランニングで登り、頂上でファイトとか何とか叫んで、校庭の上級生に聞こえなければ、いつまでも終わらないという過酷、というか面倒くさいことをやっていた。

 元々バレーボールに、ランニングはそれほど必要ないのかもしれない。

 しかし今にして思えば、この頃に体を鍛えておいた方が良かったような気はする。楽な方に流されて、結局ろくでもない結果になるのは、今でも変わっていない。


 そして、他の基礎的なトレーニングも最小限だったように思う。

 基礎的なトレーニングをすっ飛ばして、いきなり実技を教えるということが、どういうメンタルに基づいていたのか、当時は考えたこともなかった。しかしすぐに、精神主義を否定した合理精神によるものではないということは理解出来た。それどころか、無意味な精神攻撃に晒されて、常に緊張状態を強いられた。遮蔽物のない草原で、敵の機関銃座に対峙しているようなものだった。自分なら上手く指導出来る、とでも思っていたのかもしれない。


「何でよ、何でそうなるのよ」

 レシーブに失敗すると、上ずった声でヒステリックに叫んだ。

 声もやたらとでかかった。体育館中どころか、外での練習では校庭中に声が響いた。

「こうだろ、こう」

 レシーブの型を自分でやってみせた。動きのキレが尋常じゃなかった。

 しかし『何で』とか言われても、ズブの素人に理由などわかる訳はない。

 『こうだろ』とか言われても、何をどうすりゃいいのかさっぱりわからない。

 おまけに、あまりの剣幕にこちらは硬直してしまう。

「返事」

 顧問が叫んだ。

「はい」

 私も叫んだ。

「何で返事しないのよ」

 しかし、『何で』と言われても、明確には答えられなかった。


 確かに返事というのは、部活のみならず人間関係の基本ではある。この点は、私の方に大いに問題があった。最初は他の連中も、まあ似たようなものだった。しかし、こちとら小学生から中学生になったばかりで、そのようなマナーは身に付いていなかった。そういうことは最初に言っておくべきではないかと思う。しかし最初に、挨拶をしましょう、返事をしましょうといったことを言われた記憶はない。


 軍隊などでは、恐らくこうしたことを意図的にやっていることであろう。『今からお前は微笑みデブだ』『サー、イエッサー』。

 そして一部のブラック企業も、こうしたメソッドを意図的に取り入れている。

 しかし、この顧問の場合はマジ切れだった。

 しかも、普通なら一喝するば済むところを、『何で』と執拗に理由を聞いてきた。これは、その後もずっと続いた。

 何故か。それは自己愛性PDで分離不全野郎だからだ。

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