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自己愛性ブラック~その原因とメカニズム~  作者: 朝木深水
第十六章 境界線
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その四 祖母

 その日の夕方に、外製出荷の入庫方法を教わった。外製出荷は、ダイレクトにはない作業だったので、入庫はやったことがなかった。どうも、入庫方法が他と違うらしく、登録端末で管理表を読み込むらしかった。


 その数日後に、成見は早退した。どうも、その祖母が亡くなったらしかった。

 笹井さんが言った。

「今、一人いない状況だから、ちょっと待ってもらってたんだよね」

 おいおいおいおい、ちょっと待て。それで、死に目に会えなかったんじゃないのか。サブリーダーとはいえ、非正規にそこまで要求するのか。それとも、本人も納得の上なのか。

 しかも、喪主を務めなくてはいけないとか言っていたらしい。

 昨年、一時帰郷した時は、祖母が一命を取り留めたが入院していたと聞いていた。

 その時とは別件なのか、今回は両親のどちらかなのか、よくわからなくなった。笹井さんにあまり突っ込んで聞いても仕方なかっただろう。


 次の日の朝礼では、笹井さんが作業指示をした。こちらに振ってくると思って演説の一つでもしてやろうかと思って用意していたが、その必要はなかった。笹井さんも、セクションの状況がわかってきたようだった。私はいつもの如くダイレクトに引き籠り、UCは、浦田が指示を出した。後で、松井さんが指示を聞かないと愚痴を聞いた。どっちもどっちだった。


 土曜日には、いつもの如く笹井さんが休みだった。用があるとか言っていたような気もするが覚えていない。前田さんがヘルプに入ってくれた。どうも、KD梱包セクションとの腐れ縁は切れそうになかった。

 前田さんは、当初三時までと言っていたが、ブツがなかった。浦田が、昼でいいのではと言い出した。私も同感だった。別にサボりたい訳ではなく、ガチで部品がなかったのだ。わざわざ実験Z棟からUC工場に戻り、前田さんに掛け合った。前田さんは、長田さんたちに何か言われるのを気にして三時にしたいらしかったが、本当に昼前に作業が終わってしまった。他の連中は昼までで、私と前田さんは二時まで運搬をすることになった。

「何か、小さい頃に、両親が出てっちゃったらしくて、お祖母さんに育てられたんだって」

 なるほど。やっぱりお祖母様の葬儀なのか。それで喪主なのだろうか。

「親戚が、『遺産から葬儀代出してよ』とか言ってきて、すげえムカつくとか言ってたよ」

 なるほど。遺産もあるのか。岩手の田舎で地主とかだったりするとかなりの額になるのかもしれない。私とは大違いだ。祖母の死は気の毒だとは思ったが、同情心はやや失せた。いや、九割以上失せた。

 遺産はともかくとして、不幸な生い立ちにパーソナリティ障害の原因がありそうだった。しかし、両親に対してはどうか知らないが、祖母に対しては深い愛着を抱いているようだった。表面的には謙虚そうに見えるのも、そのためかもしれない。何だか複雑な人格が形成されているようだった。

 結局、成見は翌週末まで、休むことになった。

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