その三 同級生
松井さんに成見の指導が入っても、浦田は満足しなかった。
「もっと言って下さいよ」
ダイレクトに来る度に、私に言ってきた。
浦田は最初の印象通り、やっぱり可愛げがなかった。どうも、執着心が強くズケズケと物を言う性格のようだった。
豆大福のような見た目で、あそこまで強気になれるのが段々と羨ましくなってきた。余程育ちがいいのだろうか。
午後に、実験Z棟で作業をしていると、彼が聞いてきた。
「今日、残業あるんですか」
「ああ、ちょっとまた後で」
「まだわからないんですか」
うるせえなあ。俺だって帰りたいんだよ。成見に聞けよ。
恐らく悪気はないのだろうが、いちいち絡むのが面倒になってきた。
尤も浦田も、心中穏やかではなかったのかもしれない。
この頃、プレスのGLを担当していたのは、黒須君という三十代くらいの男だった。
どうもその彼と浦田が、小学校の同級生らしかった。
「同じクラスでしたけど、碌に話したこともないですよ」
浦田が言った。
黒須君は、流石に社員だけあって、年の割に余程しっかりしていた。
恐らく、向こうがカースト上位リア充軍団の一員で、こちらは底辺隅っこ連中の一員だったのであろう。
「まあ、どうでもいいんですけどね」
浦田はそう言っていたが、本当はどう思っていたのか定かではない。
選りに選って同じ職場で、違う立場で再会するとは思ってもいなかったのであろう。ぞっとする話だった。私も他人事ではなかった。
地元だとこういうこともあるのでしょう