絶対無敵の男 転生を乗り越えし勇者
チートはチートであってチートである。
「ああ、勇者様、おいで下さい」
暗い神殿の中、赤く長い髪をした少女は、天使の像に祈りを捧げている。
その祈りに答えるように、虹色の魔法陣が出現して輝いた。
光は神殿の天井を突き抜け、天に届こうとしている。
そして現代。
紅城 紅は学校の帰りだった。
今日もほどなくボディビルの行おうと、行きつけのジムに向かって行く。
「今日も無敵であった。誰ぞ相手になる者はおらぬのか」
しかしその道中、小さな猫が道路を横切ろうとしていた。
それだけなら何でもない光景だが、怪我をしているのかヨタヨタと歩いている。
あろうことか、子猫の前には巨大なトラックが走って来ていた。
「むぅ、いかん! 助けなければ! ぬおおおおおお!」
紅はトラックの前に跳び出して、子猫の体を抱きとめた。
そして、ドガアアアアアっと弾き飛ばされてしまったのだ。
服が弾け跳び、強烈な打撃を受けるも、子猫の体は無事のようだ。
しかし安心してほしい。
紅の体には傷一つ付けられていない。
鋼のような肉体が、トラックの衝撃を緩和したのだ。
「やはり無敵! では行くがいい子猫よ」
ニャアと去って行く子猫を見送ると。
「あ、あの、すみません! 大丈夫ですか!?」
トラックを運転していただろう男が駆けて来ていた。
心配して警察と救急車を呼ぼうとしているが。
「我は無敵ぞ。この程度何の問題もないわ! 気にする必要はない。去られよ!」
「ひぃ、すみませんでしたああああ!」
紅が一括すると、トラックの運転手は去って行く。
しかしそんな時、虹色の光が輝いた。
何かの前兆だと思った紅は、筋肉を膨張させて力を込める。
「何かは知らぬが、この俺を狙おうなどと片腹痛い! どおおおおおおおぉぉぉ!」
拳を握って地面を叩きつけると手が地面へと吸い込まれて行く。
だが、そんな程度でやられるような男ではない。
「ぬうううううううううん!」
光の彼方へ伸びた手は、遥か異世界の少女を掴んだ。
「どおおおおおりゃああああああ!」
「きゃあああああ!」
逆に引っ張り上げて、光は天へと昇って行った。
「ハァッハッハッハ、やはり無敵か!」
男は何事もなかったように道を歩いて行く。