夜風の魔術
「まあ、あなたが心配することはないですよ」
「しかし、あなたのことが心配なんで......」
そのままメリアさんは俺の隣に座る。
「いや、別に大したことないですから」
ああ、めんどくさい。ヒーラーというのはお節介なタイプなのかねえ。
「妹さんのことですよね」
「だから、あなたには関係のない......」
「兄として、情けないとでも思っているのではないですか?」
彼女は激しい気迫で俺に問い続ける。このヒーラー、何か超能力でも持っているのか?
「兄妹の問題なので、ご心配不要です」
「血はつながってないですよね?」
見た目に似合わず容赦ない攻撃をしてくる。
「だから何なんです?」
「あなたの心境を聞かせて下さい。今のあなたは見るに堪えません」
「......ピロには、言わないで下さいよ」
「約束します。まずはあなたがどのような経緯でピロさんと関わったのか、そこから教えて下さい」
これは、腹をくくるしかないか。
「あれは、今から一か月前のこと。雨の降っていた日でした......」
「私とフブルがいつものようにモンスターのクエストを終えた帰り道のこと。暗闇の山脈の入り口に、一人の少女が倒れこんでいました。放っておくのは可哀そうなので、声をかけたのですが返事はなし。フブルと相談し、仕方なく私の家に運び込むことにしたんです」
俺は言葉を選びながらしゃべり始めた。
「お優しいのですね」
「フブルの進言に従ったまでですよ。もしかしたら、この時にすでに彼はピロの素質を見抜いていたかもしれませんね。で、その後無事回復した彼女ですが、自身の名前以外何も覚えてなかったんです。記憶を取り戻すまで色々世話するのは自然な流れでしょう。そしたら懐かれた。それだけです」
「妹にはいつなったんですか?」
「そのすぐ後です。フブルが兄妹盟約を結ぶことで互いの能力値を上げることができるって言ったので。実際、ピロは俊敏性が非常に高いうえに相手のステータスを瞬時に見抜く能力を持っています。あと、私のバスタードソードを作ったのもあいつです」
「なるほど、本当にあなたはお優しいのですね」
「......なぜそうなるのです?」
別に、求められたことが俺にも有益だから応じたまでだ。実際、彼女をパーティーに入れてから俺自身の能力値も上がっている。
「あの子は、あなたを求めていたのですよ。私がこのパーティーに入ったのと同じように」
「よく、わからないのですが」
「来るべき時にわかりますよ。あ、そうそう。私のことは呼び捨てのタメ口でいいですよ、グラス君」
「は、はあ。そう言うのなら......」
メリアさん、いやメリアに終始会話を支配されたままなのだが、不思議と気持ちは軽くなった。
不信感はぬぐえないが、何となく彼女のといると落ち着く。
何かの魔法にかけられたのかもしれないな。あとでピロに診てもらおう。
「それ、じゃあメリア。お疲れさん」
気分は晴れたが疑問は増えた。
メリアは一体何者なんだ?
やっとピロとの出会いのことを書けました。二人がただの兄妹愛ではないことを理解してくれれば幸いです。
里見レイ




