内側の心理
さて、何のトラブルもなく集落にたどり着いた俺たち。
「んじゃ、また明日。できればもう少し高難易度のクエやれる時間帯調べといてくれ」
「かしこまりました。ただ、行くのは作戦の後ですからね」
「へいへい」
安全志向のフブルにより、結局不完全燃焼の鬱憤は晴れないまま解散となる。確かに、作戦前に怪我するよりはマシだけどなんかねえ。
まあ、気を取り直して......
「グラタンだ!」
家に帰り、早速夕食を作り出す俺。おいしいものは心を癒すのだ。
「今日は、これでソース作って」
「どれどれ、ってドロイアスフルーツ!? こんなレアもの何処で拾った!?」
後ろからピロが差し出したのは、どんなものでも美味しくなる魔法の果実である。市場じゃ最高級品の一つだ。
「少し前にモンスターからドロップしたやつ。大事な時のためにとっといた」
「大事な時?」
「お兄が辛いとき用」
「そ、そんなに辛そうか?」
おいおい、俺はどこまで妹に心配をかける気だ? 情けない。
「お兄は悲しみと戦ってる。けど、それを表に出さない。だからこそ心配」
「......」
何も言えない。肯定してピロに負担かけることも、否定してピロに嘘つくこともできないでいる。
「ピロが作ったあの剣のように、お兄は闇を背負い続けている。ピロはお兄の闇を共有できない。だから、妹としてお兄を支える」
「......ソース、ありがとう。すぐにグラタン作るよ」
強制的に話を終わらせる。暗い気分でグラタンなんて作りたくないからだ。
ピロは黙って席に着く。俺の気持ちを汲んでのことだろう。
あーあ、俺は全然兄としてやれていないな。
『ごちそうさま』
夕飯は、ドロイアスフルーツのおかげでいつになく美味しかった。ただ、やはり気分は晴れない。
「ちょっと、夜風に当たってくる」
そう言って、ピロの返事を待たずに外に出る俺。今は、とにかく一人になりたかった。
家から歩くこと数分。暗闇の山脈で絶え間なくそよ風の吹いている谷間にたどり着く。
ここは俺のお気に入りの場所だ。
無駄な考えを風音が消してくれるし肌がひんやりとして気持ちいい。
「ふう。情けないな......」
溜息と弱音しか出てこない。
俺はピロを守るために兄になったというのに、逆に守られているような気がするのだ。
結局、俺の精神のほうが弱かったということか。ああ、情けない情けない。
「あら? こんなところで何してるんですか?」
色々とタイミングがいいようだな。
「ああ、ちょっと考え事を......」
「あの作戦の話ですか?」
「えーと......」
はあ、メリアさんは容赦ないのだから。
俺は何時でも悩まされる運命なのかね。
次当たり、少しずつ明らかにしていきます。
全部のグラスの悲しみがわかるのは、あと数話先だと思います。
里見レイ




