縁談の意味
「私はまじめな話をしています。これはグラスさんにも有益だと確信しているのですが?」
「あのなあ。普通に『トーナメントを開く』とか『パーティーのメンツを入れ替える』とかお金をかけないで全体を強化できる案はあるだろ! なんでここで結婚話が出てくるんだよ?」
俺がメリアと結婚だと? 何で素性も分からない謎NPCと結婚しなければならないんだ。
第一、俺は既にピロを妹に迎えて「兄妹盟約」を結んでいるのであって「夫婦盟約」は必要ないぞ。
「互いの連携強化に一番手っ取り早いんですよ。それに、グラスさんもそろそろ実を固めてもよろしいかと思いまして。プレイヤーのあなたが最適なことは一目瞭然です」
「プレイヤーは俺一人だが、お前だって強化する価値はあると思うぞ」
フブルは確かにプレイヤーではないが、戦力はプレイヤー並みだ。彼も「夫婦盟約」を結ぶのに適切な人材だと言えよう。
「そこまで嫌がることないじゃないですか。彼女の素性が分からないとかいう理由なのでしょうけど、正直それはあなた以外誰にだって言えることなのですよ」
「......どういうことだ?」
「私はあなたのナビゲーションNPCですが実は破壊神の使い魔かもしれませんし、それはピロさんにも言えること。創成神がどう私たちに関与しているかは私たちにも分かりません。つまり、プレイヤー以外はだれも信用できないということです」
「......やけに生々しいな」
ここはエタナルドという仮想世界。フブルは俺がこの世界の本来の住人ではないことを理解した上で発言しているのだ。それでいて、現実世界のことを懐古させない。
「まあ、実際この世界の存亡に関わる話ですからね。四の五の言っていられないんです」
「うーん。ピロはどうなんだ?」
彼女が承諾すれば別にいいだろう。一番メリアを警戒しているのはピロなのだから。
「......別にいい。多分、お兄はこれで幸せになる」
ほう、以前とは打って変わった反応だな。質問したいところだが、ここは取り敢えず続きを聞こう。
「あの人はピロよりお兄を支えられる。甘えさせることができる。お兄の負担は軽減される」
むむ、ピロにしてはやけに抽象的だな。理解ができない。
「ピロさんは、かなりメリアさんを評価してらっしゃるようですよ。妹君の意見、どう受け止めます?」
「そうだなあ......」
正直、ピロと一度二人きりになって警戒を解いた詳細を聞きたいところだ。
ただ、今はそうはいかないだろう。会議中だからな。
「利益があるのは分かった。策略上の結婚というのなら俺は別に構いはせん。ただ、メリア自身はどう思ってんだ? こういうことは女性のほうが神経質になると思うが」
この場の三人が同意するのなら俺の言うことはないだろうな。
第一、仮想世界での話だ。
俺の人生に関わる縁談ということではないし、利益はあるが目立った損失はないのだから。
「す、少し考えさせてください」
おっと、ここでメリアは慎重論を唱えるか。やはりNPCには重要な話なのだな。
「それでは、結論は明日までに持ち越しにするとしましょう」
「賛成だ。で、他に策はないのか?」
「ええ、他の種族に連絡を取ろうと思います」
「任せる。俺は集落の食糧生産の見直しをするよ」
俺とフブルは次の作戦に向けて互いの意見を合わせていく。
この結婚話も、あくまで作戦の一つなのだ。
「お兄、ちょっとこっち来て」
「今会議中なのだが......」
「い・い・か・ら」
と、いつになく強引にピロが俺を外へと連れ出す。
まあ、女にとっては作戦以上のことだというのは分かってはいたのだがね。
やっぱり、派手さがないですねえ。ジャンルのせいでしょうか、他の私の作品よりPVがだいぶ少ないです。
およよよよ。
里見レイ




