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へっぽこ薬剤師の異世界奮闘記  作者: TATA
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特殊部隊です

 しかし今日は観光ができなかった。王城見学はまだいいとしても決闘させられるは、姫様は暴走するは、武器屋じゃシエルさんにぼこぼこにされかけるはでいいことがない。

 美波のおっぱいだけが唯一俺を癒してくれた。あの感触を忘れずに明日からも頑張って働こう。


「美波さん、店長よからぬことを考えている顔ですね」

「......瑠香ちゃん、できればそっとしておいて、なんとなく想像できるから」

「あらあらー、ミナミさんのおっぱいの感触を思い出してますねー。私もー、頑張ろっかなー」


 まだ少し早いが日も暮れかけてきたので帰宅することになってしまった。

 夕食の食材を調達し帰路に就く。野菜や果物など生鮮食品も日持ちしないものは値引き販売されているようだ。食材を無駄にしないよう我々も少しだが協力する。


「明日はー、お外に行くのでー、お肉にしましょうねー」


 シエルさんのなじみの店なのだろうか、店の人から大量の食材を受け取っている。代金を払っていないようですが......


「シエルさんお金は払わないんですか」

「ああ、これですかー? みなさんお薬代の代わりにー、食材で払ってくれるんですよー。でもねー、朝一だとー、頑張って仕入れたものがタダになっちゃうでしょー。だからねー、いつも売れ残りでー、清算しているんですよー」


 なるほど、これなら高額でも薬が売れるし売れ残りの食材で清算するから相手も経済的な負担が少なくなる。シエルさんの優しさだろうか。



 しばらくワイワイ歩いているといつの間にか自宅についている。シエラも気づいたようで出迎えてくれた。


「母ちゃん、おかえりなさいなのニャ。ユースケさん観光は楽しかったかニャ」


 そこそこ楽しかったがいろいろありすぎて苦笑いしか出てこない。




「シエラちゃーん、ご飯の準備をするからー、お手伝いしてねー」

「今日は何にゃ? お肉だニャ。うれしいのニャ、たくさん食べるニャ」


 食材を確認するなりシエルさんは裏庭に回りバーベキューの準備を始める。

 シエルさんが手招きしているので俺らも準備に取り掛かる。


「ユースケさーん、昨日のお醤油まだあるかしらー、お肉を焼くときに使うとー、美味しいと思うのー」


 昨日はそれほど使っていないからまだ残っていると思うがそれを知らないわけではないだろう。右手の指が変な動きをしているが......なるほど。そういうことですね。ひとっ走り行ってきますよ。


 瑠香ちゃんとシエラは食材の準備に取り掛かっているので美波に手伝ってもらうか。


「美波、向こうに戻るから付き合ってくれ」

「先生。お醤油なら残っていますよ」

「シエルさんの指の動きをよく見ろ、あれは缶ビールを開けるしぐさだ」


 状況が伝わったようなのでクーラーボックスを取りに行く。地下室に行くと美波がすでに待ち構えていた。

 こうも簡単に異世界との行き来ができるとありがたみが薄れるがそれは言わないでおこう。便利なことは大切だ。




 自宅に戻ると日が昇り始める時間で外が少しずつ明るくなっていた。少し前に風呂に入りに戻ってきたが長い時間帰っていない気がする。


 冷蔵庫を開けるとビールが大量に冷やされていた。誰だ勝手に補充したのは。

 昨日氷を使いきってしまったが準備はしてあったので出来上がっている。今回はジュースや炭酸水なども持っていくとしよう。


「先生、お酒は他に何か持っていきますか?」

「高いやつは昨日全部持って行ったぞ。それに明日のことを考えるとあまり飲まない方がいいだろう」


 準備を任せて俺は風呂場の準備をしておく。どうせこの後全員押しかけてきて風呂に入れろと言うのが目に見えている。


 ところで洗濯物はいつ干したんだ?


 異世界生活2日目もいろいろな事があった。こっちの世界では感じることのない充実した日を過ごした気がする。きっと明日もいろいろな事が起きるだろうが生きていることを実感するのはいいことだ。


 窓から夜明けの空を眺めていると美波が腕を絡めてきた。


「先生......2人っきりですよ」


 えっと、それはOKということですか? 馬鹿みたいに我慢できないとか言わなくてもいいんですか?

 こんなチャンスは滅多に訪れない、しかし......


「美波、残念だが3人だ」

「え゛っ?」


「ばれちゃったー。もう少しでー、いいところだったのに残念でしたー」


 シエルさん、こういう時はこっそり2人きりにしてください。美波が慌てて腕を放してしまったじゃないですか。

 美波、顔が赤いぞ。朝焼けのせいにしてやるから早く戻ろう。瑠香ちゃんに疑惑をもたれてしまう。





 昨日に引き続きお酒を持って戻ると準備が終わっていた。食材を適当な大きさに切るだけだからそれほど時間はかからなかったのだろう。


「母ちゃん、どこへ行ってたのニャ? 姿が見えないから心配したのニャ」

「あらあらー、ごめんなさいねー」


 全員そろったので早速肉を焼き始める。今回は森でとらえた動物の肉とのことだ。少し歯ごたえのある肉だが脂も多く臭みが少ない。まずは軽く塩コショウで焼いてみる。焼きあがるそばからシエラと瑠香ちゃんの胃袋へと消えていく。


「ところで明日はどこへ行くのかしら?」

「明日はねー、森を抜けてー、湖まで行きますよー」


 ビール片手にひたすら肉を焼く。そろそろ醤油につけたのを焼いてみるか。

 肉を焼く炭に醤油と脂がしたたり落ちて何とも言えない匂いが漂ってくる。おれもそろそろ食べたいのだが周りを見ると焼いてくれそうな人がいない。

 瑠香ちゃんとシエラは早くしろーと叫んでいるし、美波とシエルさんは既にほろ酔い状態だ。


「先生、食べてないんじゃない? はい、あーんして」

「あらあらー、じゃあ私もー。あーんしてくっださっいなー」


 ん、美味い。なかなかの焼き加減だ。よしもっと焼くか。


「はい、もう一切れどうぞ」

「美味しいですかー? はい、あーん」


 恥ずかしいという感情をしばし封印することにしよう。肉と幸せをかみしめながらひたすら肉を焼いていく。


「シエルちゃん、なんかあの3人怪しくないですか? 私、乗り遅れた感がするんですけど」

「気にすることないニャ。肉が美味ければ問題ないニャ。ルカももっと飲むニャ」


 しかしこの食材の量は多すぎないだろうかと思っているとご近所さんが様子を見にやってきた。


「シエルさん、なんかいい匂いにつられてきちゃったけど焼き肉かい? 食材提供するから私達も混ぜておくれよ」


 外だったので気にしていなかったが焦げた醤油の魔力に引き寄せられてご近所さんがやってきた。それぞれ野菜や果物、お酒を持参している。この食材の量はご近所付き合いの意味もあったらしい。


 隣のご主人が肉焼き担当を変わってくれたのでようやく自分のペースで食べられる。


 瑠香ちゃんとシエラはご近所さんと騒ぎ始めたが美波は俺の横についている。シエルさんと明日の打ち合わせをするためだ。


「明日はねー、森の中で薬草を採取してからー、湖に行きますよー。それとたまにねー、おっきな動物さんに襲われるからー、気を付けてねー」


 シュナイダーさんも相当強いと思うのですが「気を付けてねー」で済むレベルとは思えないのは気のせいだろうか。


「あとねー、多分だけどー、フローラちゃんも来るからよろしくねー」


 今何か重要なことを言わなかったか? きっと飲みすぎたんだろう。少し控えておかないといけないな。美波は既に酔って寝てしまっている。いつもはつぶれる量でないから疲れがたまっているのだろう。

 瑠香ちゃんは本日は大丈夫なようだが足元がおぼつかない。

 2人とも明日大丈夫か?


 酔い覚ましに冷やしておいた炭酸水を飲み始める。

 ふと夜空を見上げると非常にきれいな星空が目に飛び込んでくる。電気などの人工の光がないためだろう。もちろん知っている星座など1つもない。



 いつの間にか始まったご近所さんとのバーべキュー大会もそろそろ終了だろう。あれほどあった食材もほとんどなくなっているし酒を飲んでいた連中は陽気になっているか酔いつぶれているかである。各自それぞれ片づけをはじめ、残った食材も分け合って持ち帰っている。ただしお酒に関してはシエルさんが死守した。


 ご近所さんたちもそれぞれ帰路につくが、街灯などはなく月明りと、通りに面した家から漏れる灯りが夜道を歩く手助けをしている。

 灯りがなければその家は留守、もしくは全員寝ていると見て間違いないだろう。防犯上非常に良くない。


 瑠香ちゃんとシエラは肩を組んでふらつきながら家に入っていく。ネクタイを頭に巻けばよく似合うだろう。美波は一眠りしてすっきりしたようなので風呂の準備をお願いし、俺はシエルさんと火の始末をしてから戻ることにした。



「ところでシエルさん、誰かいますよね。さっきから見られている気がいてならないんですけど」

「不思議よねー、なんでわかるのかしらー。シャルちゃーん、出てらっしゃーい」


 やっぱりいたらしい。屋根の方に向かって呼んでいるが特殊部隊が場所を悟られるのはまずいのでは?

 シャルというと偽メイドだな。屋根の上から飛び降りてくる影が見えたかと思うとゆっくりと近づいてくる。結構高さがあるぞ、特殊部隊おそるべし。


「シエル様、夜分にすみま......q04うヴぁぁs」


 尻尾で思いっきりはたかれて吹っ飛んでいったぞ。触り心地がよさそうだと思っていたがあれは凶器だ。今後気を付けよう。


「ダメ、登場が面白くないからやり直し」


 後輩への指導のためだろうかいつもの口調ではない。若干怖い。シャルも文句を言うことなく壁をよじ登り始めた。


「ユースケ殿、すまないが見ないでくれるか?」

「シエルさん、シャルは何で壁をよじ登っているのでしょうか?」

「修業が足りないからよー」


 隠密行動が原則なのだと思うがそろそろと壁をよじ登っていくのを見ていると笑いがこみ上げてくる。


「それじゃあー、2回目行きますよー。シャルちゃーん、出てらっしゃーい」


「ぐおっ!」


 あ、着地に失敗だな、骨折してないか? いや、わざと失敗して面白さを取ったのか?


「着地失敗、やり直し」


 仕方ないので少し助けてやるか。


「おい、偽メイド。コツを教えてやる。いいかシエルさんはわざわざ屋根の上に向かって呼んでいるんだから予想外の場所から出てこないとダメだろうが。ちなみに俺も誰かいるのには気が付いていたし、次で3回目だから失敗すると命はないぞ」


 暗闇の中でメモを取っているようだが読めるのか?


 再び壁をよじ登っているがかっこ悪いぞ。


「それじゃー準備できたかなー? 3回目行きますよー。シャルちゃーん、出てらっしゃーい」


 今度はこっそりとシエルさんの後ろに回り込んできた。ただし俺の前を横切って。


「シエル様、夜分にすみません。明日のことでお話がございます」


「あらあらー、びっくりー。それで何の用かなー」


 シエルさんのOKは出たようだが俺は許さん。近くにあった木の棒で殴り付ける。


「痛いではないか、何をする」

「ダメ、やり直し。俺が誰かいますよね? と聞いたのに俺の前を通ってシエルさんの後ろに回り込むとは何を考えているんだ」


 シエルさんも俺の攻撃に気が付かなかったのはNGだったようでやり直しの許可が下りた。

 美波も戻りが遅いため様子を見に来た。ギャラリーが増えたので採点も厳しくなる。

 3人の許可が下りるまでその後何度もやり直すことになったのだがこいつはいったい何をしに来たんだ? お笑いの修行か?


る:異世界生活2日目が終わってしまいました。

み:瑠香ちゃんは念願の武器を手に入れたから満足なんじゃない?

る:満足ではあるんですけど、不満もあるんです。

ゆ:どうした?

る:私も美波さんも最初の予定通り事が進まないのに、店長だけ順調な気がします。

み:まあ、私の場合魔法がないって言われているから半分あきらめているけど。

る:私なんか剣士になりたかったのに、店長がいつの間にか持っていってるんですよ。

ゆ:冒険者じゃないのか?

る:この際どっちでもいいです。しかもちゃっかり異世界に輸入品持ち込んで商売しているじゃないですか。あっさり金貨100枚もらうとかもあり得ないです。

ゆ:事実は小説より奇なり。

み:あの、先生この話は......

ゆ:美波、そこから先は言ってはいかん。

る:あとは2人ともなんかいい雰囲気になってませんでしたか?

み:......

ゆ:......

る:私もそういう場面が欲しいですぅ

み:相手は先生でいいの?

る:......

ゆ:その反応は少し寂しいぞ。


それではまた



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