2日目です
やはり風呂はいい。できれば寝る前に入りたかったが朝風呂も悪くない。就寝時に大量に汗をかくと血栓症などを危惧しないといけないが、事前に大量に水分接種をしているので問題はないだろう。慣れない環境だからか昨日は疲れた。目を閉じ今日は何をするか考え始める。......ぶくぶくぶく。いかん、寝てしまい溺れるところだった。鼻に水が入った、痛い。
もう少し浸かっていたいがそろそろ出るか。
軽く風呂掃除をして排水溝の蓋を開けると大量の毛が溜まっていた。1人の時は気にならないが5人も入れば凄いことになっている。髪が長いと大変だよな。
そういえば洗濯ができなかったな。今晩やれば良いか。
風呂から上がると何故か全員に注目される。しかもニヤニヤして不気味だ。今度は何だ。
「てんちょー? まさかお風呂のお湯で顔洗ったりしてないですよねー?」
……いつも通りしましたが何か問題でも?
「先生、美女エキスたっぷりのお湯は気持ちよかったですか?」
……?!
思わず赤面してしまったではないか。
「あらあらー、動揺してますよー」
ちょっと待て。何もやましい事は考えていなかったぞ。変態扱いはやめてくれ。
「やっぱり店長は変態さんだったんですね。私ショックです」
「先生、我慢しないで私と一緒に入ればこんな事には……」
2人とも涙を浮かべながら、しかも目をそらすな。いや待て美波と入ったらそれはそれで何言われるかわからんぞ。
だんだんと自分が惨めに思えてきた……
「あらあらー、もしかして寂しかったのかなー? それなら甘えさせてあげますよー」
そのセリフはなんかズレてるぞ。まさかシエラまで何か言い出すんじゃないのか?
「……」
頼む。無言はやめてくれ。1番堪える。
「……すまないニャ。セリフを忘れたニャ」
……おい!
「発案者は誰だ」
「ルカだニャ」
あっさり裏切ったな。
「ちょっとシエルちゃん、言ったらダメですよー」
「あらあらー、お仕置きかなー?」
俺からのお仕置きだ。
「全員浴室の使用を禁じる」
この後全員泣きついてきたので今回に限り許す事にした。湯上り美女4人に囲まれてたら嫌とは言えないだろ。
「そもそも店長が悪いんですよー。美波さんと同じ匂いのシャンプー置いておくから」
何故俺が悪いんだ。
「あれは私のじゃないわよ。まどかさんのよ」
……あーあ、その名前出しちゃったよ。緊急事態だな。どうか来ませんように。
「美波、直ぐに電気を消せ。全員音を立てるな、気配を消せ」
暗闇の中月明かりが薄っすらと部屋を照らす。外を走る車の音が時折聞こえるが今のところ彼女が現れる様子はない。
「全員直ぐに向こうの世界に移動するぞ。音は立てるな。洗濯は終わっているな、向こうで干すぞ」
小声で指示を出し、音を立てないよう慎重に荷物を運び出す。夜逃げの気分だな。
廊下の突き当たり、異世界への扉を潜り抜け取り敢えず胸をなでおろす。
「店長、一体なんですか? コソコソしなくてもいいじゃないですかー」
「瑠香ちゃんはお姉さんの話を聞いてないの? 」
いや、美波しか知らない。
「あらあらー、また新しい女の人がー、出てくるのかなー?」
やめて。お願いだからやめて。姉ちゃんが出てきてしまう。
「お姉さんなら隠れなくてもいいじゃないですか?」
なるべく姉ちゃんの話しはしたくない。早く話題を変えてくれ。美波、頼むから余計なことは話さないでくれ。
「困っているみたいだからー、早く上にいきましょ」
シエルさん今だけあなたは女神に見えます。そうと決まれば早く移動しましょう。
「店長、美波さんだけ知っているのはずるいです。私にも後で教えてくださいね」
美波は事情があって知っているだけで、できれば秘密にしておきたい。
地下室を出て、持ってきた荷物をリビングまで運ぶ。今回の分は店舗販売をしないようだ。おそらく秘密のお友達に売るのだろう。水だけは重たいので階段の下に置いてある。
「先生、話は変わりますが今回の商品をシエルさんが3万リルで買い取ってくれることになりました。いかがですか?」
えーと非常持ち出しが5,000リルだったっけ。服が全部で1,800リルで、カエルサンド4人分が100リル。いまだに価値がわからん。瑠香ちゃん換算で1,000リルが1万円くらいだから......30万円か?
物価がよくわからないがかなり高額の買取だろう。
「えーとシエルさんかなり高額な気がしますがよろしいのですか?」
「あらあらー、気にしないでいいですよー。お金持ちのお友達にー、転売させてもらいますからー」
やはり王様に売りつけるんですね。それなら心が痛まない。
「それとシエラちゃーん、お母さん用事ができたのでー、店番お願いねー」
「わかったニャ。ユースケさん達の案内はどうするニャ?」
そうだ、そこは重要だぞ。今ならもれなく迷子になる自信がある。
「えーと、じゃあ特別にー、私がご案内しますねー」
嫌な予感しかしない。絶対トラブルが起こるに決まってる。
「行きたい所はありますかー? でもまずは資金調達に行きますよー」
「シエルさん、先に言っておきます。美波と瑠香ちゃんに危険が及ぶと判断した場合、相手が誰であろうと問答無用で攻撃します。命に関わる事があっても一切責任は取りません」
今日のトラブルはおそらく貴族や王族だろう。流石にシエルさんには迷惑をかけたくはないが、テンプレで手を出してこようとするバカ貴族がいるはずだ。
「あらあらー、大丈夫ですよー。ユースケさんより先にー、私がトドメを刺すと思いますからねー。でも羨ましいわー」
なんにせよシエルさんも味方みたいだし余程のことがない限り大丈夫だろう。
それじゃあ出発しましょうか。
「母ちゃん迎えが来たニャ。急いだ方が良いニャ」
一階で店番中のシエラがわざわざ呼びに来た。迎えっていつ呼んだんだ?
「それじゃあみなさーん、お出かけしますよー。シエラちゃーん、後よろしくねー」
ところで城に行くのにこんな格好で良いのか? 瑠香ちゃんなんかTシャツだぞ。美波と俺は最初に来た時と同じ服だし。
「店長、竜車ですよ。早く来てくださいよー」
行き先を知らないためか気楽なもんだな。
「先生、凄く立派な竜車よ。まるで貴族にでもなった気分になるわ」
そりゃ王城からの迎えだからだろ。まだ気が付かないのか?
荷物の積み込みが終わり、竜車が動き出す。舗装されていない通りを走っているためか、サスペンションやタイヤなど衝撃を吸収するものがないためか非常に揺れる。走り出して5分と経っていないが、既に乗り物酔いで気持ち悪い。
30分程走ったのだろうか。ようやく停車する。帰りは歩いて帰ろうな。
竜車を降りると目の前には巨大な城がそびえ立っている。目的地を聞いていない美波と瑠香ちゃんはかなり驚いている。城門のところでは兵士とシエルさんが談笑しているのが見える。
「先生、お城ですよね。シエルさんのお友達って、もしかして……」
王様だよ。内緒って言われてたからな、ビックリしただろ。
「どうしましょう。私Tシャツですよ。失礼じゃないですか?」
失礼ならシエルさんから言われると思うから大丈夫だろ。それに正装なんか持ってきていない。もしかしたら裏から手をまわして正装を準備させているかもしれないが。
「みなさーん、お待たせー。これからお城に入りますよー。広いからー、はぐれないでねー」
俺らは入り口で審査されることもなく普通に城門の中へ入る事ができた。
シエルさんの知人という事で簡単に入れたのだと思うが。警備が甘すぎないか?
竜車を下り城の中を歩いていく。ほぼまっすぐな廊下を歩いていくと時折すれ違う兵士が頭を下げてくる。
なんかの本で読んだぞ。まっすぐな廊下は美しさを演出するためか、侵入時の迎撃のためだとか。
「なあ、普通メイドさんとか執事さんとかが案内してくれるんじゃないか?」
「「…………」」
なんだ2人とも黙って、緊張してるのか?
「心配無いですよー、もうすぐ着きますからねー」
シエルさんはお気楽なもんだ。
しばらく歩くと一際大きな扉の前に着いた。これがよく聞く謁見の間とかいうやつだろうか。いよいよ王様とご対面か。少し緊張してきだぞ。
「みなさーんこっちですよー」
あれ? 入らないの?
「今日はー、お友達としてー、会いに来ているのでー、謁見の間には行きませんよー」
しかし先程から美波も瑠香ちゃんも一言も喋らない。いつものお馬鹿な会話が聞こえないと少し寂しいぞ。
ん? 瑠香ちゃんの顔色が悪い。どうした?
「店長、......緊張で吐きそ……」
「あらあら、たいへーん。廊下を汚すといけないのでー、この中にお願いねー」
その高そうな壺はどこからもってきた。廊下に飾ってあったやつか?
事態に気付き兵士が駆け寄ってくる。
「シエル様どうされました」
駆けつけた兵士も壺の中身に若干引き気味だ。
「これは流石にまずいのでは……」
「あらあらー、お客様が体調崩したのにー、直ぐに気が付かない兵士くんの方がー、ダメなんじゃ無いかなー?」
大丈夫か? 兵士その1。お前も顔色悪いぞ。
「も、も、申し訳御座いません。壺はこちらで清掃しておきます。医務室はいかがされますか?」
壺を抱え込みながら手をパタパタふって大丈夫だと合図している。しかし瑠香ちゃん昨日から......いや止めておこう。
「そういえば昨晩から何も食べていないが朝食はどうしたんだ?」
「先生が買い出しに行ってる間にコンビニで調達したの。シエルさんはジャムパン食べながら涙を流していたわ。「甘くてふわふわで美味いニャー」 だそうよ。先生の分もあったのだけれど......」
俺の分はシエラが食ったな、お仕置きだ。
兵士その1は壺を抱えて去っていったが大体この後にくるんだよな。
「おい、そこのお前、何をしている。その壺は私が国王に献上した品だぞ。どうする気......なんだこの汚れは、許さんぞ!」
ほら来たテンプレ展開。バカ貴族に絡まれるのはご免こうむりたいが無理だよな。美波よこっそりガッツポーズ取るのはやめろ。碌な展開にならないんだ。
「貴様ら、よくもこの私の顔に泥を塗ってくれたな。こんなことをした馬鹿者はどいつだ!」
瑠香ちゃんそんなに怯えてたら私がやりましたと宣言しているようなものだぞ。美波も寄り添っているが大丈夫じゃないな。一応前に立って壁になっておくか。
こいつはシエルさんに気が付かないのかと思ったが、いつの間にか気配を消しつつバカ貴族の後ろから手を振っている。
「そこの小娘か。薄汚い格好をしおって。まあいい今回は特別に許してやる。かわいがってやるから私の屋敷まで連れて行ってやる、感謝しろ」
あーむかつく。こういうやつは許せん。
「隣の女も今回は特別に私のものになることを許可する。ありがたく思え」
おや? シエルさんからOKサインが出ているぞ。これは「ボコボコにしてもー、いいわよー」という合図だな。よし任せろ。
「貴様、邪魔だ、どけ」
あっ突き飛ばされちゃった。これはもう正当防衛ということで攻撃してもいいよね。
「薄汚い小娘かと思ったらなかなか えsdpいfヴぃあjwcdk:qwぴ」
「喜べ、文明の利器による感電第2号だ。感謝しろ」
あれ? みなさん目が点になってますよ。ちょっとまずかったかなー?
「先生、さすがに貴族相手にそれはまずい気が......」
美波がいつになく弱気だ。さっきのガッツポーズはどこへ行った。逆にシエルさんは目を輝かせながら非常に楽しそうな顔をしている。やってみたいんですね。いいですよー好きなだけやっちゃってください。
「あらあらー、何ですかそれー。面白そうですねー、私にもやらせてー」
「どうぞどうぞ、ここの部分を相手に押し当てて、このボタンをポチっとします」
「えいっ」
「亜yfvぺvふぁ;宇;あうぃzfv;jうぇうておzsdぉsづn」
「あらあらー、面白いですねー。もう一回、えいっ」
「愛エオ阿@®:mvvk:zsかうぃい®854御いf;sdzkfk:あ;」
「やだわー、癖になりそうだわー、えい」
「じゃf;おいうぇうfISOあ:どwqO:foszdvz:じえうありおあう:dぴS:b:OPA」
兵士その1が近づいてきて槍で突っつき生死を確かめている。美波と瑠香ちゃんも安堵の顔でこちらを見ているし大丈夫だろう。
「兵士さーん、これゴミ箱に捨てておいてねー。みなさーん、大丈夫ですかー? この人セッコイ男爵の長男なんですけど私大嫌いなのー。久々にーすっきりしちゃった」
シエルさん晴れやかな顔ですごいこと言ってますが......問題ないな。よし気を取り直してお友達のところに行きましょう。あとスタンガンをこっそりしまい込まないでくださいね。
「なんじゃ、騒がしいのう。おうシエルではないか、到着が遅いから心配しておったのだぞ」
「やっほー、ドッコラちゃんお待たせー。お話したお客さんですよー」
......兵士その1がひざまずいているぞ。もしかして王様か?
もう少しまともな登場しろよ。
る:変態さんです。
み:瑠香ちゃん、先生もわざとじゃないから許してあげて。
ゆ:冗談で言っても許さないぞ。
み:次からは私が一緒に入って監視するから大丈夫よ。
る:美波さん、それは絶対にダメです。
ゆ:ところで瑠香ちゃんおなかの調子は大丈夫か?
る:そうですよ、ひどくないですか? 2日連続ですよ。私の美少女キャラのイメージが台無しです。
ゆ:2度あることは3度あるって言うし、頑張れ。
る:ところでなんで美波さんはお姉さんのこと知っているんですか?
み:んー、ちょっと複雑な事情があるのよ。気が向いたらそのうち話すわ。
ゆ:姉ちゃんの話題禁止!! ひょっこり現れるから気が抜けなくなる。
る:また新たな女性登場で立場が危うくなるかと思いました。
み:でも血はつながっていないそうよ。
ゆ:......お願いだからやめて。
それではまた




