始まりの声
始めたばかりです。ゆっくり更新します。
よろしくお願いします!
それまでの常識が一瞬にして崩れる。とはよく言ったもので、
俺、松宮誠士は今、混乱の真っ只中にいる。
目の前に生霊がいるからだ。
よくテレビで見る心霊現象(偽物)なんて生易しいものじゃない。
そいつは俺の買ってきたばかりの弁当を貪っている真っ最中なのだから。
静かなワンルームにむしゃむしゃと咀嚼音が響いている。
冷え切った、余計なものは何もない部屋は、今日の朝までは確かに独り暮らしだったことを
証明している。
(そもそもどうしてこんな状況になったのか・・・)
俺は天井の模様を遠目に見ながら、今朝からの1日を必死に脳裏に巡らせていた。
だらだらと時間を食い潰すような何の変哲もない日常。
慌ただしさと、孤独感。
そして心の乱れから来ているであろう、微小で些細な異変。
少し長く眠り、また同じ事を繰り返しているうちに、いつの間にか忘れる様な。
しかし、運命はその平凡さを許さなかったのか?
ぼんやりと帰宅した俺を、誰もいないはずの部屋で見知らぬ女が待ち構えていた。
『おかえりー♪今日はそんなに遅くなかったね!』
短い廊下の先のワンルームに立っていた女がにこやかに出迎えの挨拶をする。
(え・・・部屋間違えた?でも、鍵開いたよね?)
お帰りと言われたのは何年振りだったのだろうか?
それはどこかで聞き覚えのある声だった。
ヒロインまだ不在です。もうしばらくお待ちください。