ケイオニウスの謎
建物の中に入る、中の灯りは少なく多くのテーブル席には先程の鎧を着込んだエルフの男と同じく大柄な男達がワインやら食事やら食してる筈が目線はシュート達三人に釘付けするも直ぐ男達は騒ぎ治す。
左横にはカウンターがある、カウンターにはバーテンダー風のエルフの男が立ってグラスを拭いている、シュート達三人どうやら酒場の裏口に入ってきたのだ。
「此処は・・・・・・、酒場?」
シュートが建物の中を見回す。
「そのようですね。」
フランが言う。
「何してる?此方だ。」
男は三人に奥のテーブル席についてくる様に歩く、シュート達三人も男の後を歩きだす。到着すると男は奥テーブル席の前に座り込んでいた。
「座れ。」
フランが先に座り後からシュートとリィフェがフランの左右の隣の席に座り込む。
「失礼します。」
「・・・・・・・・・。」
鎧のエルフの男はシュートら三人に睨む、この男は一体何者なんだとフランは男に質問する。
「助けて頂いて有り難う御座います、と、言いたい所ですが、貴方は一体?」
「紹介がまだでしたな、私はグリーンハープ王国オベロン城兵士隊隊長のバルガスと申します、突然の無礼、申し訳有りません、フラン王女殿下。」
「・・・・・・私の事をご存知で。」
「先程貴殿方をこの国へ案内した者は我が城の兵士の一人です、彼から貴女方の事を聞きました。セリアを助けた事も存じてます、」
「そうだったんですか、あの方が私達を・・・・・・。」
「はい、・・・・・・グリーンハープの、この街の現状を見ましたか?」
「空には飛行型の機械人形、街にはかなりの数の兵士が徘徊していました。」
リィフェが答える。
「騎士殿の仰る通り、この国はケイオニウスという貴族騎士が率いる第七伯軍に支配されました。ですが我々、耳長族は屈してはいません。」
「どういう事ですか?」
フランが質問する。
「現在、我々がいるこの店は打倒ケイオニウスを目標とする基地にしてその中の居る者らは皆、城の兵士も術士にて御座います。」
「「「えっ!?」」」
シュート達は他の席の耳長族の男達を見回す、良く見たら男達は鎧を着込み背中には武器を背負っている。男達は目線をシュート達三人に向け睨んだ表情のまま、シュートは青ざめた状態で御辞儀し挨拶する。
「どうも、こんにちは・・・。」
「「「「「こんにちは。」」」」」
男達は微笑みシュート達三人に向かって御辞儀を返して挨拶をする。
「ハハハ、安心して下さい、見た目はあれですが良い奴等ですよ。」
バルガスはシュートに目線を向け小さく笑いながら言う。
「隊長そりゃ酷いぜ!」「俺達は城を守る立派な兵士なのにな!」「あんまりだぜ隊長!」
恐持て男達改め城の兵士達は大笑いする。
「オホン!」
するとリィフェのわざとらしい席で周りの五月蝿さを静かにさせる。
「バルガス殿と申しましたね、そろそろ本題に入りたい。奴の、ケイオニウスの事を我々三人に教えてほしい。」
「・・・・・・解りましたお教えしましょう、帝国特級貴族騎士十人将第七位、ケイオニウス=バハム=ディランダルフスの事を・・・。」
バルガスはケイオニウスの事をシュート達三人に語りだす。
「前にセリアから聞いてると思いますが、このグリーンハープ本国内での奴の第七伯軍の戦力は貴族騎士を含む兵力千人、百体の機械人形そしてケイオニウス本人のみ、奴は一月前の襲撃で街は破壊され多くの国民達は逃げ惑い立ち向かった兵士達も破れ去った。多くの兵士、私の部下達がケイオニウスに立ち向い一斉に襲いかかった。だが・・・・・・、俺はこの後予想外な事を見てしまったんです。」
「見たって何を見たんだ?」
リィフェが答える。
「突如ケイオニウスの両腕が『伸び』、立ち向かった私の部下達の身体をバラバラに切り裂かれ殺されたんだ。奴の腕には門腕輪は身に付けておらず、どうやって奴の腕が伸びたかは解らない。ただ単に解ったことは切断された部下達の遺体の切断部分がまるで『切られた』というのではなく『切り裂いた』感じでした。」
「『切り裂いた』?『切られた』じゃなく?」
シュートが頭を斜めにして答える。
「はい、まるで肉を切り裂いた様な感じでした。」
「肉を切り裂いたか・・・・・・。」
「(たった一人で多くの兵士を切断遺体にしたしかも刃物を使わずに。仮にこの様に出来るのは凡そ熊かグリズリー辺りの怪力が必要だ。ケイオニウスはどうやって兵士達を殺したんだ?)」
シュートはケイオニウスはどうやって多くの兵士達を殺害したのか推理をする。
「風の結界の制御装置の修復まで残り9日、その日までに我々の手でケイオニウスを討つ、仮に過ぎれば姫様と碧のクリスタルストーンの身も・・・・・・。」
そう言ってバルガスは左腕を震えだす。
「バルガスさん・・・。」
フランは一度目を瞑り思い出す、支配されたグリーンハープ王国、碧のクリスタル、ルティーシア姫、そしてケイオニウス、自分達に起こった今日の出来事をフランは覚悟を背負った眼差しでバルガスに伝える。
「バルガスさん、私達をグリーンハープ城に案内出来ませんか?」
「それなら出来ますが、・・・まさか!?」
「はい、私達三人が城に忍び込みケイオニウスを討ちます。」
フランがその事を言うとバルガスは突如席を立ち上がり、その音に気付き男達の目線はシュート達の席に写りだす、バルガスはフランに向かって言った。
「貴女方が!?しかも三人で・・・・・・、なりません!たった三人で乗り込むなどは自殺行為です!!明日までお待ち下さい!」
「・・・・・・何故、明日なのですか?」
フランは何故明日でないとならないのかとバルガスに理由を聞きだす。
「此処に居る我々は明日、城に強行します、強行前である今日にて戦闘準備と街の皆の避難そして此処の皆と共に戦前宴を行ってます。」
「戦前宴?何だそれは?」
シュートは知らない言葉で頭を左に傾きフランに質問する。
「戦前宴とは言うのは、千年前から続いてる古の儀式で戦場に行く前日に兵士達が宴を飲むことにより自分達の勝機を上げる言わば精神を強くする儀式ですかね。」
「成る程な、どうりで店の中が騒いでるのか。」
フランは目線をバルガスに変え話を本題に戻す。
「・・・・・・解りました。貴方の言う通りに明日に致します。」
バルガスはフランの了承を受け再び席につきホッとした後に頭を下げ御辞儀する。
「有り難う御座います、フラン王女。」
「いえ、・・・・・・それではそろそろ失礼致します、シュートさん、リィフェ、行きましょう。」
「はい。」
「解った。」
フランは席を立ち上がると同時にシュート、リィフェも立ち上がり三人はバルガスと別れ酒場の裏口から退出する。
「・・・・・・。」
バルガスの後ろの席の兵士がバルガスに声をかける。
「なあ隊長、よろしいのですか?外の人間と協力するなんて?」
「仕方がない、我々には時間がない、皆!何としてもケイオニウスを迎え討ち我がグリーンハープを取り戻すぞ!」
「「「「「はい!!」」」」」
兵士達はバルガスに向かって大きく返事をする。バルガスは自分の剣を抜き刃に写りこむ自分の顔は見て心から祈った。
「(待っていろ、ケイオニウス、明日貴様を討ち倒し部下達の仇を果たせて貰う!)」




