西の砦、執務室に居る二人の男
西の砦、六階、執務室。
執務室の部屋内には二人の人物が席に座っていた。
赤ワインを口に啜り飲んでいる一人の男はキザな髪型をし赤服を着用、そして帝国の兵士達に命令をしグレイの街の女性達全員を連行そして奴隷にさせた張本人、彼こそ帝国軍二等貴族騎士ザラム=アラムミス。
もう一人、派手な格好をした行商人風の肥満体型の男は、ザラムがそのグレイの街の女性達を奴隷にさせ直接買収しに来た奴隷商人。
「お口に頂けたで御座いましょうかザラム卿、藍の国から機密に取り寄せた最高級の赤ワインで御座います、それ一瓶で船一隻程の値に致します。」
「・・・・・・・・・。」
ザラムは無言にワインを飲み干したワイングラスをテーブルに置く、その後彼はニヤリと笑う。
「悪くない味だ。酸味も良い、誠に癖になるぞ。」
「有り難う御座います。」
奴隷商人はザラムに御辞儀する。すると奴隷商人はザラムに今回のグレイの街の件に質問する。
「それにしてもザラム卿宜しいのですか?グレイの街の女達全てを奴隷にするのは少々やり過ぎでは?」
「構わん、私は元からあの街の連中が気に入らないのでな、奴等の大切な物を奪った。只それだけだ。それに私の辞書に『やり過ぎ』という言葉は無い。」
「そ、そうですか、申し訳ありません。」
「構わん。」
「有り難う御座います、ではザラム卿、そろそろ代金を御願い致します。」
奴隷商人が手を擦りながら言う。ザラムは服のポケットからかなりの金を詰めた袋を軽く投げテーブルに置くと同時に金貨が少し溢れだす。
「おおっ!」
「これは私との関係が長く続けられる様に貴様に用意した金だ。遠慮せず受け取れ。」
「あ、有り難う御座いますザラム卿!これからも良い関係に致しましょうぞ!!」
「うむ。」
奴隷商人が沢山の入った袋を取ろうとしたその時だった。何処からか大きな音が執務室内に響きだす。
「何だ!?」
「ま、窓の方からです!私目が様子を見ましょうぞ!」
奴隷商人は直ぐ様に執務室の窓の方を向け走り出し直ぐ様に窓を開け外の様子を伺う、すると奴隷商人は外の様子を見て驚きだした。
「な、何だ!?門が・・・!!」
奴隷商人は最後に何か言おうとした途端突然途絶える。様子が可笑しい事に気付いたザラムは奴隷商人の所に向かい歩く。
「おい!どうした!?」
ザラムが奴隷商人の肩を掴もうとした瞬間、奴隷商人は後ろに倒れ込む。何故なら奴隷商人の額には矢が脳天に突き刺さり即死していた。
「なっ!?こ、これは一体!!?」
「大変失礼致します、ザラム卿!侵入者です!!」
突然と大扉から現れた三等貴族騎士が執務室に急いでやって来た。
「何だと!?侵入者は何者だ!!」
「そ、それが、その侵入者は白の国、アインライト王国ミリウス王家第一王女、フランフェルト=ミリウス=アインライトで御座います!!」
「!?」
ザラムは驚き直ぐ窓の外を見上げ砦の広場を見る。広場には門を破壊し広場へと姿を現したフランを始めグレイの街の男達が武器を持ち帝国兵と戦っていた。
「何故フラン王女が私の砦に現れた!?」
「わ、解りません!侵入者は王女だけではありません、グレイの街の住民達も武器を持って我々と交戦しています!」
「あの街の連中だと!?・・・・・・己ぇ、溝鼠共!!直ぐに兵力の大半を外に向かわせろ!!なお姫は殺すな!それ以外は皆殺しにしろ!!」
「はっ!」
三等貴族騎士は直ぐ様に執務室を出ていき兵を外に収集しに向かう。ザラムは己の苛立ちを落ち着かせ何とか冷静さを取り戻す。
「フラン王女め、私の砦に来るとは私にとって丁度好都合よ、貴女を捕らえれば私が一級貴族騎士になるのも夢もない、それに私には『切り札』がある精々外の兵達と遊ぶが良い・・・・・・。」
そう言ってザラムは自分の右腕に身に付けてる黒い腕輪を優しく撫でながら冷たく微笑む、その腕輪には紫色の宝珠が埋め込まれていた。




