宿から出たら・・・。
夜、まさか敵は俺達が夜に襲撃して来るのは予想もしないだろう、俺のエネルギーの残量は先程軽く食事をしたから満タンに近い状態だ。戦闘も砦での移動往復も問題はない。
俺達が宿屋を出ると五人の男達が武器を持ち俺達を待っていた。
俺とフランの後ろに居たイワンさんは彼等を見て驚いた。
「み、皆、どうして!?」
「聞いたぞイワン、俺達に内緒で貴族騎士の居る西の砦に殴り込むんだって?」
「狡いぞお前だけ抜け駆けはよ!」
「俺らだって女房が捕まってんだ。このまま奴隷にされ売られてたまるかってんだ!!」
スキンヘッドの親父がハンマーをポンポンと二度軽く掌に叩きながら言う。
「このまま帝国軍の連中にこの俺達の街で好き勝手はやらせねえ!」
「帝国の兵士のケツに俺のこの槍で刺してやるわ!!」
「じゃあ俺はこの拳で連中をタコ殴りしてくれる!!」
「俺達も手伝うぞ、イワンさん!」
「皆・・・有り難う、本当に恩に着る!」
イワンさんは男達に頭を下げる。しかしイワンさんは直ぐ様に頭を上げ何故この事を知ってるのかと男達に聞き出す
「だけど皆、何で俺達が砦に行く事を知ってるんだ?」
「それは私が呼んだんです。」
すると宿屋から一人の長身の若い男が十本くらいの矢が入ったケースを背負って弓を手に持って出てくる。
「貴方は確か、宿屋の店主さん・・・。」
「下から聞こえててね、つい、お客様らの会話を盗み聞きをしてしまいました。申し訳無く勝手に皆を呼んでしまった。本当に申し訳ない。」
「そうか、お前確か!」
「ええ、うちには妻と12になったばかりの娘が連れ去られたんです、お客さんに御願いがあります、どうか私も奴等の所に連れてって下さい!」
そう言うと宿屋の若店主が俺とフランに向けて頭を下げる。
「宿屋さん・・・。」
「姫様、俺からも御願いします。」
若店主の次にイワンさんが頭を下げる、この人は絶対に街を救う為なら命も捨てる気でいるつもりだ。賑わった男達は手に持った武器を天に上げながらエイエイオーと叫ぶ、凄いなこの人達。
「やれやれ、とんだ騒ぎが聞こえると思いきやお前さんらか。」
「ん?うおっ!?」
俺は横を振り向くと杖をついた老人が俺の隣にいて俺は直ぐ様に驚いた。てかこの爺さん見覚えあるぞ、確かリィフェと一緒に買い出ししてた時いつの間にか俺の隣にいて突然話しかけてきたあの爺さんだ。
「ゼペッド爺さん、アンタも来てたのか!」
スキンヘッドの男が老人の名を呼ぶ。
「悪ガキだったお前達がまさか帝国軍と戦うとは驚いたもんじゃ・・・・・・。」
「違うぞ爺さん、俺達は帝国軍と戦うんじゃない、連れ去られた街の女達を助ける為に戦うんだ!」
「悪いが爺さんじゃ力にはなれない、家で大人しく待っててくれ!」
「そうだそうだ!」「ジジイは大人しくしてろ!」
男達の罵声がゼペッド爺さんに向ける、しかし爺さんは帰らない、その変わりにゼペッド爺さんが怒鳴り始める。
「じゃかましいわ悪ガキ共!誰が帰るか!!」
「「「「「!?」」」」」
「自分の家族が連れ去られて黙って家に待てるか!儂も行くぞ!!」
「「「「「ええっ!?」」」」」
まさかの爺さんついてく宣言でイワンさんら6人は驚きだす。
「それに元魔導師である儂の魔法があればお前さんらの役には少し立つ筈じゃ。」
「・・・・・・解った。正し爺さん、くれぐれも無理はするなよ。」
「解っておる、自分の体ぐらい自分で守るわい。」
「それでは皆さん、そろそろ西の砦に向かいましょう。」
「いえ、まだ向かうのは待って下さい、実はまだ準備で一人遅れて来る奴がいるので。おっ、噂をすれば来ました。」
イワンさんは別の街道の方を向ける、俺達も直ぐにイワンさんの方を向ける、遅れた男は何と馬を引かせ荷台馬車に乗り込みながら馬を走らせて俺達の所に素早くやって来た。
「遅いぞ!」
スキンヘッドの男が遅れた男に向かって怒る。
「悪りい!ちょっと準備にかかっち待ってな、兎に角皆直ぐに乗ってくれ!」
「解った!さあ皆、馬車に乗り込んでくれ!お嬢さんと兄ちゃんも遠慮せず乗ってくんなせぇ!!」
「はい!」
「解りました。」
俺達は馬車の後ろから中に入り乗り込もうとする、イワンさんを先頭にゼペッド爺さん、宿屋の店主、五人の街の男達、フランそして俺の順に乗り込む、すると宿屋から出て来たリィフェが遅れて馬車の中に乗り込む。
「リィフェ。」
「・・・・・・御待たせしました姫様。」
「それじゃあ皆!西の砦に出発だ!!」
馬引きの男が馬を引き直ぐ馬車は動き出す、だがその時だった。何故か俺の身体が宙に浮き馬車の中から追い出され地面から強く打ち倒れる。
「シュートさん!」
フラン達の乗る馬車はそのまま止まらず西の砦にへと走り見失う、俺は直ぐに立ち上がる。
「(いきなりどうなってんだ?俺は直ぐに馬車の中の席に座ろうと思ったら『何かの力』に引っ張られて地面に落ちるなんてよ・・・・・・。あれ?)」
俺の目の前には一人の女の人影が立っている事に気づいた。俺はその人影を知っている。彼女も俺の事を知っている。シルエットは消え鎧を着込んだ女が俺の前に立ちはだかる。
「・・・・・・。」
「リィフェ、お前が何で此処に・・・・・・!?」
俺は馬車に乗り込んだ時の事を思い出す、それにリィフェは何故俺の前に居るのかを俺は気づいた。何故なら俺を馬車から降ろした犯人は彼女だと言うことを。




