可愛い仔。
トボトボと、お山のてっぺんから歩き始めて早三日。
突然目の前に、湖が現れた。
やったー!
あぁ。オアシスに辿り着いた気分だよ。
森の怪しい息苦しさから、解放される。
何しようかな~。
湖の畔で、日向ぼっこ?
ネッシー探索?
NON NON 。
ピクニックをするなら。
今でしょ!
お弁当を食べましょう~♪
湖の畔で食べましょう~♪
メロンソーダにチリドーック!
いっちゃう?
鼻歌を歌いながら、ご機嫌で「コンビニーズ」を登場させる。
既に、この不思議力に馴染んでいる事が恐ろしいよ。
でも、なければ死活問題。
便利魔法には違いない。
ハンバーグ弁当と、チリドック代わりのアメリカンドックと、コーヒーをテイクアウトする。
水の音って癒されるなぁ~。
水面が流れていくのを、のんびりと眺めながら、お弁当をパクつく。
モグモグ。
モグモグモグ。ぴょこ。
モグモグモグモグ。ぴょこ。
モグ・・・。
ぴょこ。ぴょこ。ぴょこぴょこ。
おぉーっと!
前方に注目ぅ~。
なんだぁ、あの保護意欲を掻き立てる。
全身で愛らしさを表現している生物は!
仔犬だぁーっ!
柴犬?
ちびだよ。ちび。
ふんわりテレパシーで、サーチをかける。
敵対ナシ、生後一才、仔犬。
敵意がないと脳内にデーターは流れてこないの?
世界は謎でみちてるねぇ。
まっ、いいや。
それより目の前の仔犬だ。
多分この仔、匂いに釣られてきたんだわ。
ハンバーグソースの濃厚な香りは、嗅覚を刺激するものね。
「お食べ」
私は、お弁当の蓋にアメリカンドックを小さく千切って、ちびの前に置く。
ク~ン。
確か味の濃いものはダメなんだよね。
くんくんと匂いを嗅いだ後、ガツガツ食べ始める。
尻尾を振りながら、あっという間に全部たいらげる。
ハッハッと舌を出して、つぶらな瞳で私を見上げる。
ク~ン。
お腹すいてるんだね。
チビちゃん、ガリだもんね。
「ちょっと待って!お座り。ステイ。今食べるもの用意するからね」
待ち望んだ小動物に胸踊らせつつ、まだ消えていない店内へつっ走る。
最近学習したの。
意識が無くなると、コンビニは消える。
消えろと念じると、コンビニは消える。
コンビニーズは、私の意志とリンクしている。
凄い発見でしょ?
ウフ。
牛乳とシフォンケーキをチョイスする。
おでん容器に移しかえて、人肌位にチンをする。
「お待たせ~」
あぁ良かったよ。
ちょこんと座ったまま待ってるよ。
可愛いなぁ~。
賢いなぁ~。
痛みに耐えてよく頑張った!感動した!
イヤ……イタかぁないと思うけどね。
チビの前に、牛乳を置く。
ペロペロと、夢中で舐めはじめる。
「はい。これもどうぞ」
器の中にシフォンケーキを浮かべるともう……おチビの尻尾は千切れんばかりだ。
うまいかい?
良かったね~。
尻尾フリフリマンだねぇ。
ピカピカに嘗め終わった器の前で、チビがクテーっと寝転ぶ。
「ふふっ。お腹いっぱいで眠くなったのかな?おちびちゃん、撫でていい?」
ウトウトし始めたチビが逃げないのを良いことに、モフモフを楽しむ。
「毛並みが悪くなってるね~。体もガリガリだよ。色も本当は何色かなぁ?茶色ちゃんじゃなさそうですね~。ママは何処にいるんですかねぇ」
クゥ~ン
小さく鳴いて、そのまま眠り始めた。
私はチビを抱き上げて、再び店内に入る。
タオルを敷いて、その上にそっと寝かせる。
起きたら、シャンプーさせてくれるかな?
あぁ、何だか私も眠くなってきたよ。
疲れたよ……パトラッシュ……。